後遺障害は一度認定されたら二度目はダメなの?事例で解説
一度、後遺障害が認定された部位と同一の部位・同一の症状については、認定後に受傷したとしても自賠責保険から後遺障害に認定されることはありません。
裁判の場合には、認定される可能性はありますが、ハードルは高いと思われた方がいいでしょう。
この記事では、過去に後遺障害の認定を受けた後、交通事故に遭って受傷したところ、裁判所が再び後遺障害を認定した事案について紹介します。
同一部位の二度目の後遺障害は認められない?
自賠責保険の認定では、原則として同一部位の二度目の後遺障害は認められません。
ただし、裁判の場合には、こうしたルールに拘束されることはありませんので、認定される可能性はあります。
よく問題になるのは、14級9号が同じ部位について認められるかという問題です。
14級9号の場合、逸失利益(後遺障害により将来減収してしまうことに対する補償)の期間が5年程度に制限される関係で、5年を経過している場合には、同一部位でも後遺障害を認定して良いのではないか、と考えられるためです。
裁判所も、前事故から5年を経過しており、受傷時に前の事故の症状が消失しているようなケースでは、過去に自賠責保険の認定を受けていることだけを理由に後遺障害を否定することは少ないように思います。
ただし、2度目の事故で後遺障害が残っていることを証明しなければならず、その証明は簡単ではありません。
事案の概要
男性が青色信号に従って交差点に進入したところ、その進路左側から赤色信号を無視した相手車が交差点に進入し、男性の運転する車側面に衝突しました。
この衝突で男性の車は横転し、一回転し大破。男性は頸椎捻挫、頸部神経根症、腰椎捻挫、右坐骨神経痛、右第8、9肋骨骨折を受傷しました。
自賠責認定は非該当でしたが、裁判で右上肢、腰部痛及び右下肢に後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害を負ったと認定されました。なお、男性は約8年前に別件事故1で腰椎捻挫について、約4年前に別件事故2で頚椎捻挫について、自賠責でそれぞれ14級9号の後遺障害等級に認定されていました。
判旨
裁判所は、
1.別件事故1、2の後遺障害の残存について
「別件事故1ないし別件事故2による後遺障害の程度や本件事故までの間に相当期間が経過していること」
「(男性は)富士山に登頂した他、野球の試合に4番1塁手として出場するなどしており、本件事故当時、積極的にスポーツをしていたこと、(男性は)本件事故当時、腰痛や右上肢しびれの症状等のための通院等しておらず、別件事故1ないし別件事故2による後遺障害が残存していたことをうかがわせる証拠も見当たらないこと」
「別件事故1ないし別件事故2による後遺障害は、本件事故当時、残存していたと認めることはできない」と判断しました。
2.本件事故後の後遺障害について
「本件事故は、相手車の男性車への衝突によって、男性の車が横転し、一回転し大破、全損となった態様であること」
「本件事故によって、頸椎捻挫、頸部神経根症、腰椎捻挫、右坐骨神経痛及び右第8、9肋骨骨折の傷害を負ったと診断され、右上肢痛・しびれ及び腰部痛等の後遺障害が残存したと診断されていること」
「自賠責保険の後遺障害等級認定手続において、本件事故による頸部受傷後の右上肢痛・しびれ及び腰部痛の症状については、後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害が残存していることは否定されていないこと」
以上のような理由により、過去に後遺障害を認定されていても再度後遺障害を認定しました。
補足説明
後遺障害とは、自賠法施行令2条1項2号では「傷害が治ったとき身体に存する傷害」とされています。そして、一度後遺障害が残り認定を受けたのだから治るはずがないと「永久残存性」があることを前提としています。
この事案においても、自賠責では過去に認定を受けた部位について後遺障害を認定しませんでした。
しかし、裁判例では頚椎捻挫など後遺障害について労働喪失期間が3年ないし7年という短い期間に限定されることが多くあります。とすると、一度認定された後遺障害の労働喪失期間を越える場合、新たに後遺障害認定される可能性があります。
交通事故の損害賠償でお困りの際は、弊所の弁護士にご相談ください。交通事故に精通した弁護士が対応させていただきます。
まとめ
自賠責保険の認定では、原則として同一部位の二度目の後遺障害は認められないため、後遺障害を認定してほしい場合には、裁判をする必要があります。
裁判で後遺障害認定を勝ち取ることは容易ではなく、弁護士のサポートなくしては非常に難しいといえます。
したがって、2度目の事故で後遺障害でお悩みの方は弁護士に相談されることをお勧めします。
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