ハーグ条約とは?【離婚弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

ハーグ条約とは、一方の親が、16歳未満の子どもを、無断でもともと子どもが居住していた国から国外へ連れ去った場合、子どもを元の居住国に返還させるための条約です。

ここではハーグ条約の意味、対象や手続きについて、離婚問題に注力する弁護士がわかりやすく解説していきます。

ハーグ条約に関心がある方はぜひ参考になさってください。

ハーグ条約とは?

ハーグ条約とは、国際結婚が破綻した後、一方の親が、16歳未満の子どもを、無断でもともと子どもが居住していた国から国外へ連れ去った場合、子どもを元の居住国に返還させるための条約です。

参考:外務省|国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約

 

ハーグ条約の正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といいます。

英語では「CONVENTION ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION」と表記されます。

オランダのハーグで採択されたことから、ハーグ条約という名称で呼ばれています。

 

ハーグ条約の目的

ハーグ条約は次の2つを目的としています(1条)。

  • 不法に連れ去られている子の迅速な返還を確保する
  • 監護の権利及び接触の権利が他の締約国において効果的に尊重されることを確保する

 

ハーグ条約が制定された背景事情

国際結婚が増加したことで、1970年代頃から、一方の親による子の連れ去りも増加するようになりました。

また、国際間において、子供の監護権をめぐる裁判管轄の問題も指摘され始めました。

このような背景事情があり、1976年にハーグ国際私法会議(HCCH)は、この問題について検討することを決定し、1980年10月にハーグ条約が採択されました。

 

 

ハーグ条約の加盟国とは?

ハーグ条約の加盟国は、次の103カ国です。

 

ハーグ条約にはいっていない国とは?

ハーグ条約を締結していない国は、上記以外の国となります。

例えば、中国や台湾は加盟国ではありません。

 

 

ハーグ条約の内容

ハーグ条約が適用される事案

ハーグ条約が適用される具体例は次の3つのケースです。

ケース 1

連れ去られた側の親が返還を求めると、加盟国は、その子どもの現在の所在を調べるとともに元の居住国に返す義務を負うことになります。

ケース 2

我が国においては、返還要請があった場合には、外務省が子どもの所在を調べた後、相手方国で行われた連れ去りの原因についての調査結果をふまえ、東京地方裁判所もしくは大阪地方裁判所が、最終的に子どもの返還の要否を決定することとなります。

ケース 3

外国に居住する日本人親子が子供を連れて日本に一時帰国する際、連れ去りの危険が減少するため、帰国が不許可になる可能性が低くなります。

 

ハーグ条約の概要

ハーグ条約においては、
1 国境を越えた子の連れ去り・留置が行われた場合、生活基盤の急変などのリスクを伴うこと、監護権についての判断は子の元の居住国で行われるべきことなどを理由に、以下の5つの要件をすべて満たす場合には、原則として元の居住国に子どもを返還することが義務付けられています。

  1. 子が16歳に達していないこと
  2. 子が条約締約国に常居所(生活の本拠として生活していた場所)を有していたこと
  3. 常居所地国の法令によれば、連れ去り又は留置が、残された親の子に対する監護権を侵害するものであること
  4. 不法な連れ去り・留置の時点で、常居所地国と連れ去られた先(日本)の国の双方で、ハーグ条約が発効していること
  5. 子が日本に居住していること

2 また、子の利益を図るべく、国境を越えて、別々の国に離れて居住する親と子の面会交流を支援することを、加盟国に対し、義務付けています。

 

ハーグ条約の返還請求の手続

子を連れ去られた側の親は、ハーグ条約に基づいて、東京家庭裁判所もしくは大阪家庭裁判所に、子どもの返還請求を行うことができます。

これに対し、子を連れ去ったとされる側の親は、一定の、返還を拒否できる事由を主張・立証して対抗することになります。

返還請求事件の審理期間はきわめて短く、申立てからわずか6週間で結論が出されることが想定されています。

特に、子を連れ去ったとされる方の親は、短期間で、返還を拒否できる事由を主張立証する必要にせまられますので、ハーグ条約に詳しい弁護士に早期に相談する必要があるでしょう。

 

 

ハーグ条約の日本の問題点は?

日本はハーグ条約に加盟しているので、外国人配偶者によって、日本国外に子どもを連れ去られてしまった場合、子どもの所在を自力で探す必要がありません。

海外に連れ去られた子供を探し出すのは大変な労力が伴います。

そのため、ハーグ条約に加盟していないと、連れ去られた側の親が泣き寝入りを余儀なくされることが多くあるでしょう。

他方で、外国人配偶者のDVや薬物乱用に耐え兼ね、日本に子どもを連れて逃げ帰ってきたケースでも問題が出てくる可能性があります。

外国人配偶者が子どもの返還を求めた場合、相手国において十分な調査がなされず、DVや薬物乱用の事実が認められないという調査結果がでれば、裁判所は子どもの返還を認めてしまう可能性があります。

ただし、ハーグ条約には

  1. ① 連れ去りから1年以上経過
  2. ② 子どもを返せば身体的、精神的に重大な危険が及ぶと判断されるケース

では、返還を拒否できるという条項もあります。

 

 

ハーグ条約についての相談窓口

国をまたぐ子の連れ去り等についてはハーグ条約の正確な理解やノウハウが必要となります。

ここでは、ハーグ条約について相談できる窓口をご紹介いたします。

 

外務省の弁護士紹介制度

ハーグ条約に対応できる弁護士を外務省が紹介する制度です。

外務省領事局ハーグ条約室

所在地:東京都千代田区霞ヶ関2-2-1

電話番号:03-5501-8466

E-mail:hagueconventionjapan@mofa.go.jp

 

弁護士会による弁護士紹介

弁護士は各都道府県の弁護士会に必ず所属しています。

弁護士会によっては、ハーグ条約に対応可能な弁護士を紹介できる場合もあるので、お住いの地域の弁護士会に相談してみてもよいでしょう。

 

各弁護士会の法律相談センター

ウェブサイトはこちら

 

国際離婚問題に強い弁護士

国際離婚問題を専門とし、ハーグ条約に精通した弁護士に直接相談するという方法もあります。

ただし、そのような弁護士は限られるため、お問い合わせの際に、国際離婚に対応しているかをご確認されるとよいでしょう。

 

 

ハーグ条約についてのQ&A

ここでは、ハーグ条約についてのよくあるご質問をご紹介します。

 

共同親権の導入でハーグ条約はどうなる?

従来、日本では、離婚後は一方の親のみが親権者となる「単独親権」でした(ハーグ条約承認国の多くは、離婚後も両親が共同して子どもの親権者となる「共同親権」です。)。

そのため、日本においては親権者でない親と子どもの関わり方は限定的で、充実した面会交流とはなりにくい傾向でした。

日本でも、共同親権が導入されたため、今後は諸外国のように面会交流が密になる可能性が考えられます。

 

ハーグ条約は日本人同士でも適用されるのですか?

ハーグ条約は国籍は関係ありません。したがって、日本人同士でも適用されます。

 

ハーグ条約で子の返還はどうなるのか?

ハーグ条約では、原則として子供を元の居住国に返還することとなります。

例外的に、返還を求める親が子供に対して暴力を振るうおそれ等がある場合、裁判所の判断で、返還の拒否が認められる可能性があります。

 

 

 

まとめ

以上、ハーグ条約について、概要、加盟国、問題点等を解説してきましたがいかがだったでしょうか。

ハーグ条約は、国際離婚問題という特殊な事案であり、離婚問題だけではなく、国際法についての専門的な知識やノウハウが必要となります。

しかし、ハーグ条約を取り扱った弁護士は決して多くないのが実情です。

当事務所は、離婚事件に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、ハーグ条約が問題となる事案もサポートしています。

ハーグ条約や国際離婚について、お悩みの方は当事務所までお気軽にご相談ください。

 

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