面会交流を拒否されたら慰謝料の損害賠償を請求できる?
相手の面会交流の拒否があまりにも悪質な場合、慰謝料の損害賠償を請求できる可能性があります。
面会交流は子供の健やかな成長のために重要な機会であり、これを拒否する場合は正当な理由が必要となります。
ここでは、面会交流の拒否が違法となる場合について、裁判例を踏まえて解説いたします。
面会交流でお困りの方はぜひ参考になさってください。
目次
面会交流を拒否する場合とは?
本来、離婚の問題と親子の関係は別のはずです。
夫婦間でうまくいかずに別れることになっても、子供にとっては2人とも大切な親であることには変わりがありません。
そのため、離婚後も、面会交流を充実させることが望ましいといえます。
しかし、現実には、様々な理由から、親権を取った方(多くの場合は母親側)が面会交流を拒むことがあります。
この理由としては、以下のようなものがあげられます。
- 相手への嫌悪感があるため会わせたくない
- 相手がDV加害者であったため恐怖心を持っている
- 再婚したため、相手の存在を子供に忘れてもらいたい
- 子供の習い事が増えて忙しくなった
- 引っ越して遠方に居住しているため会わせることが難しい
このような理由から、面会交流を拒否すると、親権を持つことができなかった側(非親権者)としては到底、納得できません。
そのため、親権者である相手に対し、慰謝料等、何らかの金銭を請求したいと考える場合があります。
このような事案における、相手への金銭請求については、以下の方法が考えられます。
慰謝料の請求は可能?
まず、面会交流を拒否する親権者に対して、慰謝料を請求するという方法です。
すなわち、面会交流の拒否が不法行為に該当し、精神的苦痛を被ったという法的構成です。
この慰謝料請求についての裁判例として、以下のものが参考となります。
判例 慰謝料請求についての裁判例
この事案は、原告が、元妻である被告Y1と、その再婚相手である被告Y2に対し、被告らが原告と長男の面会交流を妨害したとして、不法行為又は債務不履行に基づき、連帯して300万円等を求めたものです。
この事案において、裁判所はY1とY2の共同不法行為の成立を認め、Y1に対して70万円、Y2に対して30万円の支払いを命じました。
【平成28年12月27日 熊本地裁】
弁護士の補足説明
上記裁判例は、面会交流の拒否が一定の場合は慰謝料請求の対象となることを示した画期的なものです。
しかし、すべての事案において、慰謝料の請求が可能と判断するのは早計です。
むしろ、不法行為の成立が認められるのは、悪質な事案に限られると思われます。
ケース・バイ・ケースでの判断が必要となるので、専門家に相談することをお勧めいたします。
なお、慰謝料についての詳しくは以下のページをご覧ください。
面会交流の拒否に制裁金(ペナルティ)を科すことができる?
次に、面会交流を拒否する相手に対し、強制執行によって、制裁金(間接強制)を求めるという方法があります。
この点についての、重要な裁判例を紹介します。
判例 間接強制の申立てをした裁判例
この事案は、未成年者の父であるXが、未成年者の母であり、未成年者を単独で監護するYに対し、Xと未成年者との面会交流に係る審判に基づき、間接強制の申立てをした事案です。
最高裁は、離れて暮らす子どもとの面会を拒否する親に対して、一定の場合には制裁金を課すことができるという初めての判断を示しました。
【平成25年3月28日 最高裁】
裁判では、離婚や別居で子どもを引き取った親が、子どもと離れて暮らしているもう一方の親に子どもを面会させなかった場合、制裁金の支払いを命じることができるか否かが争点となっていました。
この点について、最高裁判所は、「面会の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等」などを具体的に取り決めていて、約束が守られない場合には、制裁金の対象となるという判断を示したのです。
弁護士の補足説明
この最高裁の判例を踏まえると、面会交流についての取り決めが具体的になされている場合、相手に対し、制裁金を求めることが可能といえるでしょう。
そのため、相手が面会交流について、消極的な場合は、できるだけ具体的に面会交流について取り決めをしておくことで、相手が拒否した場合に対抗できると考えられます。
ただ、あまり具体的に取り決めをすると、柔軟な面会交流の妨げとなります。
そのため、面会交流の条項は、ケース・バイ・ケースで判断すべきでしょう。
なお、面会交流の強制執行については、こちらのページで詳しく解説しています。
面会交流拒否の場合に再婚相手も損害賠償を請求できる?
相手が面会交流を拒否した場合、その再婚相手に対しても、損害賠償義務が認められる可能性があります。
再婚相手に対しての損害賠償が認められた判例をご紹介します。
この裁判において、熊本地裁は、別居している長女との月1回の面会交流を調停で合意したにもかかわらず、面会交流を拒んだ元妻及び再婚相手に対し、元妻と連帯して30万円を支払うように命じ、元妻には70万円の支払いを命じました。この事案では、離婚後の面会交流調停において、再婚相手を連絡調整役としたうえで、元夫と長男とが月に1回面会交流する旨の調停が成立していました。ところが、元妻と再婚相手は、元夫への面会交流の日時等の連絡を怠ったため、元夫は約3年5ヶ月にわたって長男と面会交流できませんでした。元妻側は、元夫と長男を面会交流させなかったことについて、自身の体調不良のほか、長男との父子関係の確立を理由にあげていました。この点について、熊本地裁は、「被告の主張は面会日程を調整する協議を拒否することを正当化するものではない。長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなかった原告の精神的な苦痛は相当に大きい。」旨を指摘し、元妻及び再婚相手の双方に対し、損害賠償責任を認めました。
面会交流を拒否した場合の対処法
面会交流は、非親権者のみならず、子供にとっても、大切な機会となります。
子供の健やかな発達のためには、充実した面会交流の実現が必要だからです。
そのため、相手が面会交流を拒否している場合、まずは弁護士にご相談されると良いでしょう。
ただし、弁護士と言っても、様々です。
可能であれば、離婚専門の弁護士が望ましいと思われます。
まとめ
以上、相手が面会交流を拒否した場合に慰謝料等の損害賠償を請求できるかについて、くわしく解説いたしました。
面会交流の拒否は、正当な理由がないと認められません。
しかし、面会交流の拒否に対して直ちに損害賠償を請求できるわけではなく、悪質なケースに限定されます。
面会交流は子供のための重要な機会であり、監護親の独断で実施の有無を決めるのは問題があります。
面会交流でお困りの方は、離婚問題に精通した弁護士に相談なさってはいかがでしょうか。
当事務所は、離婚事件に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、子供との面会交流についても強力にサポートしています。
離婚問題や面会交流について、お悩みの方は当事務所までお気軽にご相談ください。
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