離婚後の年金分割はどうなる?請求期限や問題点も解説
離婚後に年金分割をすると、基本的に50パーセントの分割割合となります。
年金分割は離婚後2年以内が期限となるので注意が必要です。
ここでは、離婚問題に精通した弁護士が、離婚後に年金分割をするとどうなるのか、請求期限や注意点についてわかりやすく解説していきます。
離婚後の年金分割に関心がある方はぜひ参考になさってください。
離婚後に年金分割するとどうなる?
年金分割とは、離婚する際に、結婚期間中の厚生年金の保険料支払実績を多い方(多くの場合夫)から少ない方(多くの場合妻)に分割することです。
年金分割を受けた側は、自分が受け取る年金額が増えると考えてよいでしょう。
逆に、年金分割をした側は、年金額が減ることとなります。
分割割合の上限は、2分の1まで(50%以下)とされていますが、ほとんどの場合は2分の1で合意されることになります。
なお、年金分割には「3号分割」というものがあります。
これは、第3号被保険者の請求に基づき、第3号被保険者であった期間の標準報酬について、自動的に2分の1の割合で分割されるものです。
年金分割の請求期限は?
年金分割は、原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過するまでは、年金分割の請求をすることができます。
離婚後の年金分割の問題点
当事務所には、年金分割について、たくさんのご相談が寄せられています。
ここでは、現場の離婚弁護士が年金分割について相談を受けている実例に基づき、離婚後の年金分割の問題点をご紹介いたします。
相手方が年金分割に消極的となる!?
通常は、離婚する前に、年金分割や、財産分与、慰謝料など様々な条件を取り決めて離婚します。
しかし、離婚後に年金分割等を請求する場合、相手方がなかなか応じてくれないという問題があります。
なぜならば、離婚が成立しているので、相手方が交渉に応じるインセンティブがなかったり、前向きでなかったり、することがあるからです。
そのため、協議での解決が難しい傾向にあります。
年金分割の審判手続が難しい
相手方が協議に応じてくれない場合、年金分割の調停を申立て、さらに話し合いが成立しない場合、年金分割の審判手続に移行します。
離婚専門の弁護士であれば、このような手続に慣れているの難しくありませんが、一般の方ですと申立ての手続が面倒だったり、難しくてわからない、という問題があります。
家裁の手続は時間がかかる!?
仮に、自分自身で年金分割の申立てができたとしても、最終的に解決するまで長期間を要する傾向です。
調停から審判に移行した場合、解決まで1年を超えることもあります。
長い期間、家裁にご自身が出席したりするのは、大変だと思います。
離婚した後の年金分割のポイント
上記の問題点を踏まえて、離婚した後の年金分割のポイントについて解説いたします。
まずは協議で実施する
年金分割は、年金分割の調停手続を申し立てることでも実施可能です。
しかし、上記のとおり、調停手続きは、裁判所という国の機関を利用するため解決までに時間を要する傾向です。
また、月に1回程度は裁判所に行く必要があるため、労力もかかりますし、平日の昼間ですので会社を休んだ場合は会社に迷惑もかかります。
そのため、まずは当事者間の協議で解決することをお勧めします。
当事者間の協議で解決できるのであれば、時間も大幅に節約できます。また、労力も調停ほどはかからないでしょう。
ただし、公証役場で手続を取る場合、年金分割の合意書を作成し、私文書の認証という手続が必要となります。
年金分割の合意書については、当事務所のホームページでもダウンロード可能ですので、ぜひご参考にされてください。
年金分割の合意書のダウンロードは以下のページからどうぞ。
もっとも、サンプルですので、あくまで参考程度にとどめて、詳しくは離婚に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
また、上記の方法(年金分割の合意書を作成後、公証役場で私文書の認証手続を行う)をとる場合、基本的には、当事者双方で公証役場に赴かなければなりません。
離婚後は、ただでさえ相手方の協力が得られにくくになっていることに加えて、相手方と顔を合わせたり、やり取りをすることは相当精神的負担がかかることかと思います。
そのため、年金分割について、どのような方法を選択するかも含めて、弁護士に相談・依頼することは、スムーズに進める上でポイントになります。
タイムリミットに間に合わせる
年金分割の請求手続は、原則として、離婚をした日の翌日から起算して2年を経過した場合には、することができません。
そのため、この期限を過ぎると、家庭裁判所に対して、年金分割の審判等の申し立てをすることができなくなります。
とはいえ、そもそも裁判所の手続には時間がかかる場合もあるため、裁判所を利用した手続きよりも、協議の方が迅速に解決できる可能性があるためお勧めしますが、タイムリミットに間に合わせるように注意しなければなりません。
もし、相手方が協議に応じそうにないなどで、時間を要する場合、年金分割調停の申立てを行ったほうが良いでしょう。
なお、申立ては、離婚した日の翌日から起算して2年を経過する前にしなければなりません。
清算条項がないかの確認
すでに離婚が成立している場合、離婚を成立させる際、調停の場合は調停調書があるはずです。
また、協議の場合は公正証書か、離婚協議書などを作成している可能性があります。
このような場合、清算条項があると、年金分割がスムーズにいかなくなる可能性があります。
清算条項とは、簡単にいうと、「合意したあと何も請求できなくなる」条項のことです。
具体例をあげると、以下のような文章です。
「甲及び乙は、以上をもってすべて解決したものとし、今後、財産分与、慰謝料等名目の如何を問わず、相互に何らの財産上の請求をしないことを約する。」
このような条項があると、相手方から、「年金分割も請求することはできない」などの反論が想定されます。
これは、相手方としては、「これで離婚問題を解決できた」という気持ちで合意したのに、後から請求されて裏切られたような感情を抱くからです。
清算条項がある場合の年金分割については、年金分割の公的な性格をもつ受給権であるという理由から、請求できるという見解が有力であると考えます。
もっとも、ケース・バイ・ケースになると思われますので、詳しくは離婚に詳しい弁護士にご相談されてください。
年金分割について、詳しくは以下を御覧ください。
まとめ
以上、離婚後の年金分割について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
離婚後に年金分割をすると、50パーセントの分割割合となることがほとんどです。
そのため、年金分割は分割する側も、分割を受ける側も、影響が大きいと言えます。
そのため、年金分割については、離婚問題に精通した弁護士に相談なさることを強くお勧めいたします。
当事務所には面会交流に注力する弁護士で構成される離婚事件部があり、年金分割を強力にサポートしています。
お気軽にご相談ください。
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