無職の場合、養育費はどうなりますか?【弁護士が解説】
無職であっても、養育費の支払い義務が認められる可能性があります。
無職であっても養育費の支払い義務が認められるのは、働こうと思えば働ける能力(稼働能力)があるケースや、転職によって無職の期間が一時的であるケースです。
無職の場合に養育費の支払い義務が認めれるか否かは、権利者側、義務者側の双方にとって大きな影響を及ぼします。
この記事では、無職の場合の養育費についてのポイントや支払ってもらえないときの対処法などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
養育費とは
養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。
養育費の内容としては、子の衣食住の為の費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。
養育費は、通常、双方の実際の収入、子供の数と年齢によって計算されます。
養育費の計算は、複雑な計算式を使用しますが、これをわかりやすく表したものがあります。
これを養育費算定表といいます。
そして、家庭裁判所では、この算定表を用いて算出された養育費の金額を、養育費決定の際に重要視する傾向にあります。
養育費算定表は以下のページで解説しています。
相手が働かない場合
では、相手方(養育費を受け取る側)が、働こうと思えば働けるのに(これを、「潜在的稼働能力」ということもあります。)、働こうとしない場合はどうでしょうか?
この場合、原則どおり養育費の算定表を用いて養育費を算出すると、相手方の収入は「0円」として考えることになります。
しかし、これでは不当だと感じる方も多いのではないでしょうか?
そのため、養育費の相談に来られた方から、「相手方は働こうと思えば働けるのに、現実に働いていないからといって、相手方の収入を0円として考えて算定表に当てはめるのは、おかしいのではないか。」というご質問を受けることがあります。
このご質問は、男性の方からいただくことが多いです。
このような場合には、相手方に潜在的稼働能力があるかどうかを検討します。
検討の結果、仮に潜在的稼働能力があったとして、どの程度の収入があるものとして扱うかはケースバイケースですが、例えば相手方が子どもを監護しており、これまで専業主婦であった場合には、パート収入(約100万円)があるものとして検討することが多いように感じます。
なお、潜在的稼働能力がない、もしくは、低いケースとしては、以下のような場合があります。
- 養育費の受け取り側が「うつ病」になっているため、就労が著しく困難な場合
- 未成熟子(例:乳幼児)がたくさんいるため、監護負担が大きくなっている
相手方(養育費の受け取り側)に潜在的稼働能力があるのか、あるとしてどの程度なのかについては、専門家の判断が必要になる場合も少なくありません。
養育費を支払ってもらうポイント
POINT① 話し合いによる解決
相手が無職でも、潜在的稼働能力があれば、法律上、相手は養育費の支払い義務があると考えられます。
しかし、調停などの裁判所の手続きは、解決までに長期間を要してしまう可能性が高いです。
また、相手が無職の場合、仮に、裁判所から養育費の支払い命令(判決や審判)を出してもらっても、給与差し押さえができないため、強制執行が難しい場合も想定されます。
そのため、可能であれば、相手と話し合ってみることをお勧めします。
相手が養育費を支払わない理由が、「リストラ」や「体調不良による休職」などであれば、問題は一時的なものと考えられます。
その場合、収入が回復すれば、養育費を支払ってもらえるようになるかもしれません。
もっとも、相手が嘘を言っている可能性もあります。
そのため、可能であれば、証明資料(解雇通知書や診断書など)を開示してもらうと良いでしょう。
POINT② 第三者に間に入ってもらう
相手と接触したくない方や、感情的になって相手と話し合いにならない方の場合、当事者同士の協議は困難です。
このような場合、知人、家族、専門家などに間に入ってもらうという方法もあります。
ただし、知人や家族の場合、専門的知識がないので、あくまで仲介してもらうという役割になります。
また、家族の場合は、本人と同じように感情的になって話し合いが難しい状況も想定されます。
まとめ
以上、無職の場合の養育費の関係について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
養育費は、無職だからといって、直ちに支払い義務が否定されるものではありません。
しかし、具体的な額をいくらになるかは難しい問題であり、適切に判断するためには専門的な知識や経験が必要となります。
また、当事者同士の話し合いが難しい場合、専門家に間に入ってもらうことで解決できる可能性もあります。
そのため、養育費については、進め方も含めて、専門家に相談されることをお勧めします。
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