親権争いで母親が負ける場合とは?判断基準や父親の獲得事例

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

親権争いで母親が負ける場合は、監護実績が乏しい、子供を虐待している、育児を放棄している(ネグレクト)、夫へのDVが酷い、適切な監護能力に欠けるといった5つのケースです。

昔と比べて、男性でも親権を取得できるケースも見られるようになりましたが、統計上は10%くらいになっています。

では、親権が決まる判断基準はどのようなものなのでしょうか。

このページでは、親権の判断基準や親権獲得を有利にするためのポイントなどについて弁護士がくわしく解説いたします。

親権争いで母親が負ける5つの場合

ここでは、親権を争ったときに母親が負ける可能性がある5つのケースについてご紹介します。

親権争いで母親が負ける5つの場合

監護実績が乏しい

裁判所は、親権者を決める際に、これまでの監護実績を重視する傾向です。

特に子供の年齢が低い時期はこの傾向が顕著です。

例えば、子供の食事を作る、入浴させる、寝かしつける、学校や習い事に送迎する、健康管理をする、などで、父親よりも劣っている場合、親権争いで負けることがあります。

 

子供を虐待している

子供に対して、肉体的、精神的に虐待しているようなケースでは、親権争いで負けることがあります。

 

育児を放棄している(ネグレクト)

子供の世話を全くせず、子供が栄養不良になる、極端な不潔等によって病気になる等の状況があると、親権者として適格性を欠くとして親権争いで負けることがあります。

 

夫へのDVが酷い

子供ではなく、夫へのDVでも、親権争いで負けることがあります。

特に、子供の前で夫を殴る、物を投げつける、誹謗中傷をする、などの行為があると、子供自身への虐待と評価されます。

 

適切な監護能力に欠ける

例えば、万引きなどの犯罪癖がある、浪費が激しく家計の管理ができない、リストカットなどの自傷行為を繰り返す、うつ病の程度が重い、その他監護者として適格性を著しく欠くような言動があると、親権争いで負けることがあります。

 

 

親権の判断基準

昔と比べて、男性でも親権を取得できる場合も見られるようになりました。

しかし、親権争いにおいて、母親が負けるケースは限られています。

一般に子どもが小さい場合の親権者の指定においては、次の6つの点を総合的に考慮し判断されると言われています。

判断内容
  • これまでの監護状況
  • 監護に対する意欲と能力
  • 経済的・精神的家庭環境
  • 居住・教育環境
  • 子どもの意向、年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況
  • 監護補助者の協力の程度

以下、くわしく見ていきましょう。

 

これまでの監護状況

裁判所は、子供が出生してから現在まで、父母のどちらが主たる監護者であったかを重視する傾向です。

監護とは、例えば、子供の食事を作る、入浴させる、寝かしつける、学校や習い事に送迎する、健康管理をする、などの子供の世話のことです。

日本では、母親の方が育児休業を取得しやすい、勤務時間が短いなどの傾向があるため、この監護状況において有利であるケースが多いです。

 

監護に対する意欲と能力

子供の親権者として積極的に監護していく意欲が問われます。

また、監護するための能力も問題となることがあります。

例えば、重い病気などで適切な育児ができない場合は監護能力に問題があると評価されるでしょう。

 

経済的・精神的家庭環境

子供が健やかに成長するためにある程度の経済力が必要です。

また、安心して生活できる環境も問われます。

もっとも、現在日本では、生活保護制度をはじめとした社会福祉制度が充実しています。

また、生活費については父親に対して養育費を請求できるため、経済的な問題で親権を取得できないケースはほぼないと考えます。

 

居住・教育環境

子供が健やかに成長するための住む場所や教育体制についても判断基準の一つと考えられます。

もっとも、よほど劣悪な環境でなければ、この点を理由に親権で負けることはあまりないでしょう。

 

子どもの意向、年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況

父母のどちらと暮らしたいかという点についての子供自身の希望は重要なポイントとなります。

年齢については、一般的に小さいほど母親が有利となる傾向です。

性別が女性であれば、母親の方が望ましいとされる傾向です。

兄弟姉妹については、一般的に分離すべきではないと考えられています。

例えば、末子が乳幼児のため母親が親権を取得する場合、その兄弟姉妹も母親が親権を取得する傾向です。

子供が難病を抱えている、などの特殊な事情があれば親権者争いでも考慮される可能性があります。

 

監護補助者の協力の程度

監護補助者とは、親権者をサポートしてくれる方で、一般には親権者の父母(子供の祖父母)や兄弟等の親戚が多いです。

これらの親戚の協力があれば親権者争いにおいて有利となります。

 

 

経済状況や離婚の理由によって親権は左右される?

経済状況と親権者の判断

経済状況については、よほど酷く、子供の健康に悪影響を与えるような状況でなければ、親権の判断にはほとんど影響しないと考えます。

子供の生活費については、親権を取得できなかった側(父親)にも責任があります。

したがって、父親は母親側の経済力を問題にするのではなく、十分な養育費を支払うべきです。

 

離婚の理由と親権者の判断

離婚の理由についても、基本的には親権者の判断に影響しないと考えます。

例えば、不倫が離婚の理由だとしても、それは夫婦の問題であって親子の問題とは切り離すべきと考えられるからです。

 

 

父親が親権を獲得するケースとは?獲得の確率は?

父親が親権を獲得するケース

近年では、父親が親権を獲得するケースもよく見られるようになっています。

例えば、父親の方が監護実績が優れている場合です。

また、母親が虐待やDVを行っており親権者にふさわしくないケースでも、父親が単独で親権を取ることがあります。

父親が親権を獲得するケースについて、くわしくは下記のページをご覧ください。

 

父親が親権を取れる確率

父親が親権を取れる確率は、統計上は10%くらいとなっています。

引用元:e-Stat|人口動態調査

 

 

親権獲得を有利にするためのポイント

ここでは、親権を獲得するための重要なポイントを解説します。

親権獲得を有利にするためのポイント

 

親権者としてふさわしい証拠を集める

あなたが親権者としてふさわしいとしても、相手はそれを否定することが考えられます。

筆者の経験上、親権を争う場合、相手は平気で嘘をつきます。

例えば、主たる監護者であったことを主張するために、「これまで子供の食事を作って与えてきた」と述べたとしましょう。

これに対して、相手は「子どもの食事は自分が作っていた」と反論してくることが多いです。

相手があなたの監護実績を否定した場合、立証する責任はあなたにあります。

したがって、親権者としての適格性を示す証拠を集めることが重要なポイントとなります。

 

 

相手が親権者として不適格である証拠を集める

相手が親権者としてふさわしくない場合、そのことを示す証拠を集めることが重要なポイントとなります。

相手が親権を争う場合は、自分に不利なことを認めない可能性が高いためです。

 

常に子供視点で考えて行動する

親権者の判断では、裁判所は「父母のどちらが親権者としてふさわしいか」を見ています。

そのためには、普段から子供視点で考えて行動することが重要です。

例えば、子供を単独で監護している親であれば面会交流に積極的に応じているか、面会交流を求める側であれば、子供の予定や意見を尊重しているか、などがポイントとなります。

 

親権問題に詳しい弁護士に相談する

具体的な状況において、どのような主張を行い、証拠を集めるかについては、専門的な判断が必要となります。

そのため、親権を獲得されたい方は離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

 

まとめ

以上、親権で母親が負ける場合について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?

子供の親権は、子供の将来に多大な影響を及ぼすため極めて重要です。

一般的には、子供が小学校低学年ころまでは、母親が親権を取得しやすい傾向です。

しかし、親権者として不適格な事情があれば、母親でも親権を取れない可能性があります。

また、小学校高学年程度になると、子供自身の希望が重要視されます。

もっとも、具体的な状況に応じて、判断する必要性があります。

したがって、親権を取得したい方は、離婚を専門とする経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。

この記事が、親権でお困りの方にとって、お役に立てば幸いです。

 

 

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