国際離婚の場合、親権はどうなる?【弁護士が解説】
国際離婚の場合、①どこの国で裁判を行うのか、②どこの国の法律が適用されるのか、によって親権の決め方が異なります。
相手の住所が日本にあれば、原則として、日本の家庭裁判所で手続を進めることができます。
さらに、子どもが日本国籍の場合、父または母が日本国籍であれば、日本の法律で親権者を決めることができます。
どこの国で裁判を行うのか
国際離婚では、そもそも日本で裁判ができるとは限りません。
相手が外国人の場合、相手の手続保障も考慮する必要があるからです。
このように、どこの国で裁判を行うかという問題を国際裁判管轄といいます。
国際裁判管轄は、相手の住所が日本にある場合と、相手が外国にいる場合で異なります。
相手の住所が日本にある場合
相手の住所が日本にあれば、原則として、日本の家庭裁判所で手続を進めることができます。
したがって、例えば、相手の住所地が福岡市の場合は、福岡家庭裁判所で、相手の住所地が東京都の場合は、東京の家庭裁判所で手続をすすめることが可能です。
相手が外国にいる場合
この場合は、原則として、相手の国に国際裁判管轄権が認められます。
もっとも、以下の場合には、例外的に、日本の家庭裁判所に管轄が認められます。
- 相手から遺棄された場合
- 相手が行方不明の場合
- その他これに準ずる場合※
※その他これに準ずる場合
原告救済の必要性が高いような場合をいいます。
判例 名古屋高裁平成7年5月30日判決
夫について、行方不明とまではいえないまでも、少なくとも常住居所が明らかでなく、夫側から離婚無効確認訴訟が提起されていた事案で、日本の管轄を認めました。
以上をまとめると下表のとおりとなります。
相手の住所が日本にある場合 | 相手が外国にいる場合 |
---|---|
日本の裁判所でOK | 原則として、相手の国の裁判所 例外的に ・相手から遺棄された場合 ・相手が行方不明の場合 ・その他これに準ずる場合 |
どこの国の法律を適用するのか
次に、日本に管轄があったとしても、親権者を判断する際に、日本の法律(民法等)が適用されるとは限りません。
この問題については、子の本国法が父母の一方の本国法と同一の場合か、その他の場合で異なります。
子の本国法が父母の一方の本国法と同一の場合
この場合、子の本国法が適用されます。
例えば、父が韓国国籍、母が日本国籍、子が日本国籍の場合、日本の法律が適用されます。
したがって、日本人同士が離婚する場合の親権者の指定と同じように判断されることとなります。
- 監護の実績
- 監護に対する意欲と能力、健康状態
- 経済的、精神的家庭環境
- 居住、教育環境
- 親族、友人等の援助の可能性
- 子どもの年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況
- 子ども本人の意向など
上記のように、様々事情が考慮されますが、子どもが小さい場合は、特に監護の実績、すなわち、これまでどちらが主たる監護者であったか、という点にウェイトが置かれています。
したがって、専業主婦や、パートタイマーなど育児に時間をかけることができる女性のほうが有利な状況です。
また、子どもが小学校高学年以上の場合、ある程度の判断能力が備わっています。このような場合は、子どもの意向の方にウェイトが置かれて判断されています。
親権者の指定の判断基準について、くわしくは以下ページをごらんください。
【その他の場合】
子の本国法が父母の一方の本国法と同一の場合でない場合は、子の常居所地法が適用されます。
例えば、父が日本国籍、母がフランス国籍、子がアメリカ国籍、子の常居所地が日本の場合、日本の法律が適用されます。
常居所地について、くわしくは以下ページをごらんください。
ハーグ条約について
ハーグ条約とは、国際結婚が破綻した後、一方の親が、16歳未満の子どもを、無断でもともと子どもが居住していた国から国外へ連れ去った場合、子どもを元の居住国に返還させるための条約です。
日本はハーグ条約に加盟しているので、外国人配偶者によって、日本国外に子どもを連れ去られてしまった場合、子どもの所在を自力で探す必要がありません。
子を連れ去られた側の親は、ハーグ条約に基づいて、東京家庭裁判所もしくは大阪家庭裁判所に、子どもの返還請求を行うことができます。
ハーグ条約について詳しくは以下ページもご覧ください。
まとめ
以上、相手が外国人の場合の親権の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
国際離婚は、通常の離婚問題に加えて、国際裁判管轄や法律の適用という、複雑な論点が加わります。
そのため、専門的な知識に加えて、国際的なサポート能力が必要となります。
当事務所では、離婚問題に注力した弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、国際離婚に関する様々な情報やノウハウを共有しています。
また、アメリカ、オーストラリア、中国、韓国等の法律事務所と提携しており、国際的に連携し、対応可能です。
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