親権を有利に取るには?面会交流の積極性は影響する?
- 『面会交流に応じないと親権を取得できませんか?』
- 『父親でも面会交流に積極的であることをアピールすれば親権者となれますか?』
- 『面会交流の積極性は親権にどのように影響しますか?』
当事務所の離婚事件チームには、このような面会交流と親権に関するご相談が多く寄せられています。
ここでは、離婚事件に精通した弁護士が面会交流の積極性の親権の判断への影響について、実際の裁判例を題材として解説いたします。
親権の判断に面会交流が関係する?
親権を取得すれば、離婚後、子どもと一緒に生活していくことができます。
そのため、親権は親にとって何事にも代えがたい重要な権利です。
では、親権者として指定されるために、面会交流に対して、積極的か、消極的かが影響するのでしょうか。
一般に、親権者の指定において、考慮すべき具体的事情としては、以下のような事情があげられています。
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父母の側の事情
- 監護に対する意欲と能力、健康状態経済的・精神的家庭環境
- 居住・教育環境
- 子に対する愛情の程度
- 実家の資産
- 親族・友人等の援助の可能性など
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子どもの側の事情
- 年齢
- 性別
- 兄弟姉妹関係
- 心身の発育状況
- 子ども本人の意向
また、離婚によって、子どもにはできるだけ影響を及ぼすべきではありません。
そのため、離婚後も、離婚前と同じように、父母が子どもと接することができれば、それは子どもにとってとても望ましいといえます。
したがって、面会交流に積極的であることは、親権者の判断にプラスに働くと考えられます。
なお、親権者の判断基準について、詳しくは以下のページをご覧ください。
フレンドリーペアレントとは
フレンドリーペアレントルールとは、子の親としての関係で、他方の親と友好的な関係を築くことができる方の親が親権者にふさわしいというものです。
寛容性の原則などとも称され、アメリカのカリフォルニア州などで採用されている基準です。
具体的には、他方の親と子の面会交流に許容的か、他方の親の悪口などを子に言っていないか、他方の親に寛容的か、等を考慮要素にして親権を判断することをいいます。
日本でも、上記の要素は、親権者を判断するうえで、一つの考慮要素です。
では、実際にこのフレンドリーペアレントを適用した裁判例はあるのでしょうか。
親権と面会交流に関する重要判例
フレンドリーペアレントと親権者の判断に関する重要判例をご紹介します。
判例 平成28年3月29日 千葉家庭裁判所松戸支部の裁判例
事案の概要
40代の父母は、長女が生まれた後に、折り合いが悪くなりました。
母は平成22年5月に当時2歳半だった長女を連れて実家に帰りました。
これを違法な連れ去りだと主張して父が提起した監護者指定の審判(未成年者を養育する権利を争い、裁判所に指定してもらう裁判手続き)では、長女の監護権(育てる権利)は、母にあると認められました。
その後、父と長女が面会交流できたのは、6回だけに留まっていました。
特に平成22年9月以後は全く途絶えており、母が、父に対し離婚及び子の親権を母とすることを求めて訴訟を提起したというのが本件です。
争点は、親権者をどちらに指定するかでした。
裁判所の判断
裁判所は、父親が親権を得た場合、年間100日間の面会交流を認めると主張していた点を重視し、両親の愛情を受けて健全に成長するためには父親に養育されるのが適切だとして、父親を親権者と定めました。
これまで、フレンドリーペアレントを重要視して、親権者を判断した裁判例はほとんど例がありませんでした。
そのため、この判例は、異例として注目を浴びました。
控訴審、最高裁の判断
しかし、これに対し、母側は、監護の継続性を重視すべきであると主張して控訴審で争うことになりました。
控訴審である東京高裁は、平成29年1月26日、父親を親権者とする判決を破棄し、同居親である母を親権者とする判断を示しました。
すなわち、東京高裁は、原審を破棄し、面会交流の意向を過度に重視し親権者を定めることはふさわしくない旨を指摘しました。
別居前から主に母が長女を監護し、安定した生活を送っていることを考慮すると、長女の利益を最優先すれば親権者は母が相当と判断しました。
これに対し、父親側は最高裁に上告しましたが、最高裁は上告を受理せず、結局、親権者は母親となりました。
裁判例から学ぶ親権者判断のポイント
本件の原審である千葉家裁松戸支部は、父が提案した母に対して100日間の面会交流を認める点を重視していることから、フレンドリーペアレントルールを採用したと思われますが、実務上は異例の判断でした。
しかしながら、東京高裁は、フレンドリーペアレントルールについて、「親権者を定める際に考慮すべき事情の一つだが、成育環境の継続性や子の意思といった)他の事情より重要性が高いとは言えない。」旨を指摘しました。
父が提案していた年100日程度の面会交流については、父母の家が物理的に片道2時間以上離れていることにも触れ、「身体への負担や学校行事参加、友だちとの交流に支障が生じる恐れがある」旨を指摘しつつ、「面会交流を月1回程度とする母側の主張が、長女の利益を害するとは認められない」としています。
この高裁の判断は、フレンドリーペアレントルールを重要視した原審と異なり、従来の裁判所の考え方を踏襲したものといえます。
この判例からすると、現在、日本では、欧米諸国に比べて、フレンドリーペアレントはそれほど重要視はされていないと考えられます。
どちらかというと、主たる監護者が誰であったか、監護の継続性が期待できるか、などを重視しているといえるでしょう。
まとめると、面会交流に積極的であることを過度に重視しない傾向であるといえます。
ただ、気をつけなければならないのは、面会交流に消極的であることは推奨できません。
例えば、子どもと同居している親が、面会交流を制限する正当な理由がないのに、相手にまったく会わせないようなケースです。
子どもの年齢・意向など、その他の事情にもよりますが、このような対応は、親権者としてふさわしくないと判断される可能性があります。
親権と面会交流に関するまとめ
親権や面会交流は、親にとって、とても大切な権利です。
また、親だけでなく、子どもの健やかな成長のためにも重要な条件となります。
そのため、親権や面会交流については、その是非、対応方法などを慎重に判断する必要があります。
そして、適切に判断するためには離婚問題に関する専門知識や豊富な経験が必要となります。
そのため、可能であれば、離婚問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所には、離婚問題に注力した弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、親権や面会交流で悩まれる方々を強力にサポートしています。
親権や面会交流でお悩みの方は、当事務所の離婚弁護士までお気軽にご相談ください。
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