別居後の不貞行為でも慰謝料請求できますか?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

別居後の不貞行為は、夫婦関係が破綻したと認定された後の不貞行為と認定されれば、慰謝料請求はできません。

この問題について、当事務所の弁護士が解説いたします。

破綻の主張

不貞行為の慰謝料請求でしばしば問題となるのが、行為時に夫婦関係が破綻していたという主張です。

破綻については、平成8年3月26日の最高裁判例が、「婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情がない限り、不法行為責任を負わないものと解するのが相当である」としました。

その根拠としては、不貞行為が他方の配偶者に対する不法行為となるのは、それが「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益を侵害する」からであり、すでに婚姻が破綻していた場合には、原則として、このような権利または法的保護に値する利益があるとはいえないからです。

 

 

破綻の認定方法

では、なにをもって、裁判所は、破綻を認定するのでしょうか?

ひとつの基準が、別居です。

ここで注意すべきは、離婚訴訟における離婚原因としての「破綻」と、不貞行為の損害賠償請求における破綻の抗弁における「破綻」とでは、裁判所は別の考え方をする傾向が強いという点です。

具体的には、前者の方が、後者よりも、長期間の別居を必要とする傾向にあります。

とはいえ、後者(本件)の場合も、別居後の不貞行為というだけで、破綻後の不貞行為と直ちに認定されるわけではありませんからご注意ください。

 

東京地裁 平成24年11月12日判決

別居後の不貞行為の事案です。

下記のように、別居後も定期的に自宅に戻っていたという事情等により、破綻を認めませんでした。

「被告は、Bと不貞行為をした当時...(略)...Bと原告の婚姻関係が破綻していたと主張する。しかし、Bは、平成19年10月以降原告と別居を始めたものの、ほぼ定期的に自宅に戻っていたし、原告との間で具体的に離婚について協議をしていたこともなく、実際に被告はBから原告と離婚するなどと伝えられていないし、Bも原告から胎児認知届を問いただされたときですら離婚するつもりはないと当初答えていたのだから、Bと原告の婚姻関係が破綻していなかったことは明らかである。したがって、被告の上記主張は認められない。」

 

 

別居後の不貞行為の問題点

別居後の不貞行為が問題となる事案では共通して見られる傾向があります。

以下、紹介しますので、ご参考にされてください。

 

①不貞行為の立証は簡単ではない

ご質問の事案では、不貞行為があることを前提としていますが、実務上、不貞行為の立証は簡単ではありません。

相手方が不貞行為を認めているようなケースでは立証は不要ですが、相手方が不貞行為を否定した場合は不貞行為を主張する側が立証をしなければなりません。

実務上、立証方法としてよく活用されるのは、調査会社(探偵)の報告書とLINE等のSNSの画像データです。

このうち、調査会社の報告書では、ラブホテルに出入りしている状況の写真などがあれば立証は容易ですが、その他は必ず立証できるとまではいえません。

また、LINE等については、相手方が不貞行為の相手と性交渉を裏付けるメッセージのやり取りをしている画像があれば立証は容易ですが、多くの事案ではそこまで直接的な証拠はありません。

不貞行為の立証の見込みについては、不貞行為に精通した弁護士でなければ判断が難しいでしょう。

不貞の立証については以下をごらんください。

 

②法的評価が難しい

不貞行為などの事実関係について、立証できたとしても、それを法的に評価する必要があります。

例えば、そもそも不貞行為に該当するかが問題となります。

また、不貞行為に該当したとしても、本事案のように、別居を先行している場合、破綻の抗弁が成立しないか、という点が問題となります。

破綻の抗弁については以下をごらんください。

さらに、仮に慰謝料が発生するとして、いくらが適切かという損害額の評価も問題となります。

このような法的判断については、やはり不貞行為に精通した弁護士でなければ難しいと考えられます。

 

③裁判では利益が減少する可能性もある

ご質問の事案は、相手方に対して慰謝料請求をしたいというケースです。

しかし、慰謝料請求のために、訴訟を提起するのは必ずしも得策とは言えません。

なぜならば、裁判の場合、想定していたよりも慰謝料が低くなった、という場合も考えられるからです。

一般的に、不貞行為を原因として離婚する場合の慰謝料は、200万円〜300万円程度と言われています。

しかし、ケースによってはそれ以下の可能性もあります。

また、裁判よりも、示談交渉の方が相手方からもらえる額が多くなることがあります。

相手方としては、不貞行為という後ろめたい行為を行っているので、裁判よりは示談で早期に解決したいという心理が働き、相場よりも高額な慰謝料での示談の可能性があるからです。

当事務所の不貞慰謝料の解決事例については以下をごらんください。

そのため、裁判の方がかえって、もらえる額が少なくなるという場合もあります。

また、裁判は、一般的には長期化します。そのため、裁判によるストレスに耐えられなくなるなどの弊害も考えられます。

 

別居後の不貞行為を立証させるコツ

相手方が別居後に不貞行為を行った場合、「当該不貞行為の立証」と「夫婦関係が破綻していなかったこと」を裁判所に認定してもらうことが最重要課題となってきます。

そのためのコツを紹介いたしますので、参考にされてください。

別居後の不貞行為を立証させるコツ

不貞行為の証拠を押さえる

相手方が不貞行為を行っているのに、それを立証できないと、訴訟で敗訴する可能性があり、その場合、悔しい想いを感受しなければなりません。

そうならないようにするために、不貞行為の証拠を押さえることは非常に重要です。

不貞行為の証拠として重要なものは、次のものがあります。

録音データ

相手方が不貞行為を認める音声の録音データがあれば、不貞行為の証拠となり得ます。

この場合のコツは、具体的な不貞行為の内容を録音するということです。

例えば、

「◯月◯日、Aさんと◯◯というラブホテルにいって浮気したよね?」

「うん。」

という音声のやり取りがあれば、不貞行為が認定される可能性が高くなります。

SNSのやり取り

現在、SNSは、証拠として提出されることが非常に多くなっています。特に、LINEは特定の相手とのやり取りに使われることが多いSNSですので、不貞行為の証拠として多く利用されています。

不貞行為の相手方との不貞行為をうかがわせるやり取りをスマホごと写真撮影すると、その画像データは不貞の証拠となります。

この場合、注意しなければならないのは、不正アクセスとならないようにすることです。

相手方の了承なく、相手方のパスワードなどを不正に入手してログインすると、犯罪行為として処罰される可能性があります。

 

別居前後の立証

破綻していなかったことを証明するために、別居前後の状況を証拠として提出したり、主張することが考えられます。

例えば、夫婦で旅行や遊びに出かけたときの写真、子どもの学校行事に参加した事実の主張が典型です。

また、別居後も相手方が自宅に訪れていたような場合、当該事実を主張します。

別居後も性交渉を行ったことがあれば、破綻していなかったことの有力な事実となります。

不貞慰謝料の立証方法などについて、くわしくは以下をごらんください。

 

 

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