高校無償化で進学費用は離婚時に決めた養育費に影響する?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

現在、高校の授業料が無償化されているとききました。

今もらっている養育費は、高校授業料が無償化される前に取り決めたものです。

元夫からは、高校授業料が無償になっているのだから減額すると言われています。

この場合、養育費は減額されてしまうのでしょうか?

高校の授業料無償化によって進学費用に変化があった場合も、法的根拠はなく、養育費の減額は認められません。

仮に、養育費の減額調停・審判を申立てられたとしても、裁判所は減額を認めません。

この問題について、離婚問題専門の弁護士が解説いたします。

公立高校の授業料の無償化について

学校のイメージ画像平成22年より、学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律により、就学支援として、高校の無償化制度が導入されました。

私立高校の場合には、就学支援金を支給して授業料を低減させる内容です。

これにより、現在、公立高校の授業料は無償化されています。

しかしながら、養育費算定表というのは、公立高校の授業料が有償であった時期の学校教育費相当額である年額約33万円を考慮済みでつくられています。

したがって、これが無償化になった以上は、養育費は減額されるようにも思え、問題になるのです。

高校無償化は離婚時に決めた養育費に影響する?

この点については、争いがありましたが、福岡高裁那覇支部の平成22年9月29日決定(注:ただし婚姻費用についての判断)を最高裁が是認したことで、現在の実務では、公立高校の無償化は養育費の額に影響を与えない運用をとっています。

前述の福岡高裁は、まさにこの点が争われた事案ですが、以下のように判示しています。

「抗告人(夫、父親)は、長女が通う公立高等学校の授業料が無償化されたから(公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成22年法律第18号)参照)、相手方(妻、母)の生活費がそれだけ減少したと主張する。

公立高等学校の授業料はそれほど高額ではなく、長女の教育費ひいては相手方の生活費全体に占める割合もさほど高くはないものと推察されるから、授業料の無償化は、抗告人が負担すべき婚姻費用の額を減額させるほどの影響を及ぼすものではない。

また、これらの公的扶助等は私的扶助を補助する性質のものであるから、この観点からも婚姻費用の額を定めるにあたって考慮すべきものではない。」

したがって、冒頭の事例のように、養育費の減額を求められても、その要請に法的な根拠はありませんから、応じなくても良いでしょう。

仮に、元夫が、高校授業料の無償化を事情変更の事由として養育費の減額調停・審判を申立てたとしても、裁判所は、減額を認めませんので、ご安心ください。

もっとも、高校授業料の無償化以外の事情変更は、養育費の減額事由になりえますので、元夫の主張をよく聞いて、適切に反論することが必要です。

養育費の増減額の問題でお悩みの方は、この問題に詳しい、当事務所の弁護士にご相談ください。

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