相手方も子どもを監護している場合、婚姻費用をどう算定すべき?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

夫と妻の双方が子どもを監護している場合の婚姻費用は、総収入に対する標準的な割合を用いて基礎収入を算出し、標準的な生活費指数を用いて算定します。

ただし、婚姻費用は双方の収入の他にも、学費、治療費等の特別の支出や住宅ローンを考慮する場合もあります。

そのため具体的な額の見込みについては、離婚を専門とする弁護士へのご相談を強くおすすめします。

双方とも子を監護している場合の婚姻費用

婚姻費用を算定するときは、実務上、算定表という簡易的な早見表を使っておよその額を算定します。

この算定表は、夫婦双方の所得を当てはめて婚姻費用の適正額を算出するものですが、早見表であるため、通常の場合を想定されています。

子どもが複数いる場合でも、通常は妻、夫のいずれか一方が全員を監護しているため、算定表はそれを前提にして作成されています。

そのため夫と妻の双方が子どもを監護している場合、どのようにして算定すべきかが問題となります。

この場合、いくつか考え方はありますが、ここでは標準的な生活指標を用いて算出する方法をご紹介します。

具体的には、総収入に対する標準的な割合を用いて基礎収入を算出し、標準的な生活費指数を用いて算定します。

この方法を理解するために、前提として、婚姻費用の標準的な算定方法を解説します。

弁護士森内公彦画像標準的な算定方式では、義務者・権利者双方の実際の収入金額を基礎とし、義務者・権利者及び子どもが同居しているものと仮定し、双方の「基礎収入」の合計額を世帯収入とみなし、その世帯収入を権利者グループの生活費の指数で按分し、義務者が権利者に支払う婚姻費用を算出します。

その「基礎収入」、子の生活費、義務者が支払うべき婚姻費用の額を算定する計算式は、次のようになります。

 

妻、夫のいずれか一方が全員の子どもと同居している場合の婚姻費用の算定方法

①基礎収入

「基礎収入」とは、
税込収入から「公租公課」、「職業費」及び「特別経費」を控除した金額であり、「養育費を捻出する基礎となる収入」のことをいいます。

総収入から、 公租公課、職業費および特別経費を控除した基礎収入の割合は、給与所得者と自営業者とで異なります。

お金の計算イメージ画像給与所得者の基礎収入は、総収入の概ね 34~ 42%の範囲内となります。

自営業者については、給与所得者と異なり、課税される所得金額を総収入とします。課税される所得金額に対する割合を、給与所得者と同様に求めた結果、自営業者の基礎収入は、総収入の概ね 47~ 52%の範囲内となります。

下記の基礎収入の割合表は、ある裁判官が統計上の平均的数値をもとに作成したものであり、算定表ではなく手作業で基礎収入を算出するときの目安になります。具体的な事案に応じて修正してください。

給与所得者の場合

基礎収入=総収入× 0.34~ 0.42(高額所得者の方の割合が小さい)

給与収入(万円)
~100 42
~125 41
~150 40
~250 39
~500 38
~700 37
~850 36
~1350 35
~2000 34

 

自営業者の場合

基礎収入=総収入× 0.47~ 0.52(高額所得者の方の割合が小さい)

給与収入(万円)
~421 52
~526 51
~870 50
~975 49
~1144 48
~1409 47

 

 

②婚姻費用の計算式

権利者世帯に割り振られる婚姻費用=(Z)

権利者が子ども 1人(15歳未満)と同居しているケースを例とします。

(Z)=(X+Y)×(100+55(子の指数))/(100+100+55(義務者の指数+権利者の指数+子の指数))

解説図X:義務者の基礎収入
Y:権利者の基礎収入
Z:権利者世帯に割り振られる婚姻費用

義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額= Z – Y

 

指数についての補足説明

ポイント解説のイラスト成人の必要とする生活費を 100 とした場合の子の生活費の割合(指数)を定めます。生活費の指数化については、生活保護法第8条に基づき厚生労働省によって告示されている生活保護基準のうち「生活扶助基準」を利用して積算される最低生活費に教育費を加算して算出します。

その結果、子の標準的な生活費の指数(以下「子の指数」という)は、親を 100 とした場合、年齢 0歳から 14歳までの子については 55、年齢 15歳から 19歳までまでの子については 90 となります。

 

妻、夫の双方がそれぞれ子どもと同居している場合の婚姻費用の算定方法

以上を前提として理解してもらった上で、双方が子どもを監護している場合を考えてみます。

電卓例:義務者(夫)の年収(給与所得)が 800万円、権利者(妻)の年収(給与所得)が200万円、子どもA(16歳)を夫が、子どもB(10歳)を妻が、それぞれ監護している場合の養育費

義務者の基礎収入(X):800万円× 0.36=288万円
権利者の基礎収入(Y):200万円× 0.39=78万円

権利者である妻の世帯(妻と子B)に割り振られる婚姻費用

(288万円+78万円)×(100+55)/(100+100+55+90)≒ 164.4万円

義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額

上記結果から権利者である妻の基礎収入を控除すると、義務者が支払うべき婚姻費用は、次の式のとおり、月額7.2万円程度となります。

(164.4万円−78万円)÷ 12か月= 7.2万円

 

具体的な額については離婚に特化した弁護士へご相談を

上記の計算方法はあくまで一例です。

また、婚姻費用は双方の収入の他にも、学費、治療費等の特別の支出や住宅ローンを考慮する場合もあります。

さらに、別居に至った経緯等の状況も千差万別です。

婚姻費用は、離婚が成立するまでの間の支払い義務ですが、離婚条件である養育費やその他の条件にも大きな影響力をもつため重要です。

弁護士竹下龍之介画像そのため具体的な額の見込みについては、離婚を専門とする弁護士へのご相談を強くおすすめします。

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