父が亡くなりました。
母はすでに亡くなっているので、子どもである私が相続人となるようです。
しかし、父と私は何十年も疎遠でしたし、父の相続財産は、祖父から受け継いだ不動産がありますが、まだ不明ですが借入金などの債務もある可能性があるため、相続放棄をしようと思っています。
唯一の相続人である私が相続放棄をした場合は、相続人がいなくなってしまうのでしょうか?
その場合には、不動産が国のものとなると聞いたのですが、本当ですか?
お子さんが相続放棄をしたとしても、相続人がいなくなるとは限りません。
お父様の両親や祖父母が生きていればその方が相続人となりますし、その方々がいない場合でも、お父様に兄弟姉妹がいれば、その兄弟姉妹が相続人となります。
もしお父様に両親や祖父母、兄弟が全くいない場合には、その財産について相続財産管理人が選任される可能性があります。
相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人が相続財産を換価して債務を弁済することになります。
そして、仮に債務を弁済しても財産が残った場合や、債務が全くない場合には、その残った財産は国庫に帰属することになります。
相続放棄について、詳しくはこちらをご覧ください。
法定相続人とは
お子さん全員が相続放棄をした場合、すぐに相続人がいないとして国庫に相続財産が帰属するわけではありません。
遺言がないケースでは、相続が発生すると法律の定めによって、遺産を引き継ぐ者(これを法定相続人といいます。)が決まります。
法定相続人について
配偶者を除く相続人には順序があり、第1順位が「子」、第2順位が「直系尊属」(両親など)、第3順位が「兄弟姉妹」となっています。
したがって、第1順位の子が全員相続放棄をしても、第2順位の両親などが相続人となるだけです。
そして、第2順位の両親などがいないか、全員が相続放棄した場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人となるのです。
第3順位の兄弟姉妹もいないか、全員が相続放棄をした場合には、第4順位の相続人というのはいないので、相続人がいないことになります。
法定相続人について、詳しくはこちらをご覧ください。
法定相続人がいない場合
では、相続人がいない場合はどうなるのでしょうか。
民法では、相続人がおらず、特別縁故者もいない場合には、国庫に帰属するという規定があります(959条)。
しかし、相続人がいなからといって、当然に国庫に帰属するというわけではありません。
相続人がいない場合には、相続の利害関係者(被相続人の債権者や特定遺贈を受けた者など)や検察官が相続財産管理人の選任を、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てることができます。
この申し立てがされると、以下のような手続きを経ます。
- ① 相続財産管理人選任及び選任公告
- ② 相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告、催告、弁済
- ③ 相続人捜索の公告
- ④ 相続人不存在の確定
そして、はじめて残余財産が国家へ引き継がれることになるのです。
この相続財産管理人選任の申し立てがされない場合には、いつまでも被相続人の財産の帰属は確定しないことになります。
相続放棄した相続人としては、自ら相続財産管理人を申し立てることはできませんが、被相続人の債権者から問い合わせが来た場合には、相続人が全員放棄をしたことを知らせ、債権者に相続財産管理人選任の申し立てをするように促すことはできます。
相続は手続きも多く、必要な書類もそろえる必要がありますので、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、相続人の調査なども行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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