逸失利益とは?早見表でわかりやすく解説|計算ツール付
逸失利益(いっしつりえき)とは、仮に事故が起きなかった場合、将来得られたであろう収入の減少分の補償です。
逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の2種類があります。
【 後遺障害逸失利益の計算式 】
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
【 死亡逸失利益の計算式 】
基礎収入 ×(1 – 生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
逸失利益は、賠償項目の中で最も高額になる損害項目の一つであり、とても重要な損害項目です。
このページでは、逸失利益の計算法や請求方法等を交通事故にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。
ぜひ参考になさってください。
目次
逸失利益とは?
逸失利益とは、仮に事故が起きなかった場合、将来得られたであろう収入の減少分のことをいい、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の2種類があります。
以下、それぞれ説明します。
後遺障害の逸失利益
事故によって、体の痛みや可動域制限(関節の動かしづらさ)などの後遺障害が残ってしまう場合があります。
後遺障害が残ると、労働能力が低下し、将来の収入の減少が予想されます。
逸失利益は、このような減収に対する補償のことをいいます。
逸失利益は、交通事故の場合に問題となることが多いですが、暴力事案、労働災害、医療事故などでも生じる可能性があります。
死亡の逸失利益
事故により被害者が死亡した場合には、被害者が生存していれば得ることができたはずの収入が得られなくなります。
死亡の逸失利益は、この得られなくなった収入を補償するものです。
相続人である遺族が、加害者に対して請求することができます。
逸失利益は賠償金の中の一つ
交通事故でケガをすると、逸失利益以外にも様々な損害が発生します。
例えば、治療費や車の修理代などの支出がありますし、会社を休んで給料が減ってしまった場合には休業損害が発生します。
これらの損害のことをまとめて「賠償金」といいます。
逸失利益は、賠償金の中の一つの損害項目ということになります。
逸失利益と慰謝料との違い
慰謝料は、「精神的な苦痛を負ったこと」に対する補償となります。
これに対して、逸失利益は予想される「収入の減少」に対する賠償金となります。
死亡あるいは後遺障害が残った場合は、収入の減少が予想されるだけでなく、精神的な苦痛も発生します。
そのため、逸失利益とは別に、死亡あるいは後遺障害の慰謝料も請求することとなります。
逸失利益と休業損害との違い
休業損害は入院や通院をしている期間の収入減少に対する補償です。
逸失利益は死亡した時点あるいは症状固定となった時点以降に将来的にどの程度収入が減少するであろうかということに対する補償になります。
事故により労働ができなくなったり労働能力が低下したりすることに対する補償という点で両者は共通しますが、休業損害は現に減収していることに対する補償なのに対して、逸失利益は将来の減収に対する補償という点で異なります。
つまり、治療中の期間は休業損害、後遺障害として取り扱われて以降は逸失利益というように、ある時点を基準に請求できる項目が変わるということになります。
この「ある時点」とは、後遺障害の場合は症状固定の時点、死亡の場合には死亡した時点ということになります。
逸失利益の自動計算機
このページでは逸失利益の計算方法を詳しく説明していますが、実際に計算するとなるとなかなか難しいものです。
下記のページでは、必要事項を入力することで、逸失利益の金額が自動計算できる計算機がございます。
詳細な計算は弁護士に相談されることをお勧めしますが、概算を知っておきたいという方は、是非ご利用下さい。
後遺障害の逸失利益【早見表】
以下の表は、後遺障害逸失利益の早見表です。
年齢別、男女別で計算しています。
基礎収入に関しては、令和5年の賃金センサス(全学歴計、年齢別、男女別)を参考に以下の金額で計算しています。
- 25〜29歳
男性4,393,300円 女性3,811,600円 - 35〜39歳
男性5,642,900円 女性4,134,600円 - 45〜49歳
男性6,512,400円 女性4,372,900円 - 55〜59歳
男性6,981,600円 女性4,326,300円 - 65〜69歳
男性4,119,400円 女性3,012,300円
男性
等級 | 25歳 | 35歳 | 45歳 | 55歳 | 65歳 |
---|---|---|---|---|---|
1〜3級 | 10412万円 | 11505万円 | 10378万円 | 7886万円 | 3513万円 |
4級 | 9579万円 | 10584万円 | 9548万円 | 7255万円 | 3232万円 |
5級 | 8226万円 | 9089万円 | 8199万円 | 6230万円 | 2776万円 |
6級 | 6976万円 | 7708万円 | 6953万円 | 5283万円 | 2354万円 |
7級 | 5831万円 | 6442万円 | 5812万円 | 4416万円 | 1967万円 |
8級 | 4685万円 | 5177万円 | 4670万円 | 3548万円 | 1581万円 |
9級 | 3644万円 | 4026万円 | 3632万円 | 2760万円 | 1229万円 |
10級 | 2811万円 | 3106万円 | 2802万円 | 2129万円 | 948万円 |
11級 | 2082万円 | 2301万円 | 2075万円 | 1577万円 | 702万円 |
12級 | 1457万円 | 1610万円 | 1453万円 | 1104万円 | 491万円 |
13級 | 937万円 | 1035万円 | 934万円 | 709万円 | 316万円 |
14級 | 520万円 | 575万円 | 518万円 | 394万円 | 175万円 |
14級9号 | 100万円 | 129万円 | 149万円 | 159万円 | 94万円 |
女性
等級 | 25歳 | 35歳 | 45歳 | 55歳 | 65歳 |
---|---|---|---|---|---|
1〜3級 | 9034万円 | 8429万円 | 6969万円 | 5696万円 | 2998万円 |
4級 | 8311万円 | 7755万円 | 6411万円 | 5240万円 | 2758万円 |
5級 | 7136万円 | 6659万円 | 5505万円 | 4499万円 | 2368万円 |
6級 | 6052万円 | 5648万円 | 4669万円 | 3816万円 | 2008万円 |
7級 | 5059万円 | 4720万円 | 3902万円 | 3189万円 | 1679万円 |
8級 | 4065万円 | 3793万円 | 3136万円 | 2563万円 | 1349万円 |
9級 | 3161万円 | 2950万円 | 2439万円 | 1993万円 | 1049万円 |
10級 | 2439万円 | 2276万円 | 1881万円 | 1537万円 | 809万円 |
11級 | 1806万円 | 1685万円 | 1393万円 | 1139万円 | 599万円 |
12級 | 1264万円 | 1180万円 | 975万円 | 797万円 | 419万円 |
13級 | 813万円 | 758万円 | 627万円 | 512万円 | 269万円 |
14級 | 451万円 | 421万円 | 348万円 | 284万円 | 149万円 |
14級9号 | 87万円 | 94万円 | 100万円 | 99万円 | 68万円 |
- 千円以下は切り捨てています。
- 55歳、65歳の労働能力喪失期間は簡易生命表の平均余命の2分の1を四捨五入した年数としています。
- 後遺障害の内容や個別事情によって金額は変動しますので、参考程度にされてください。
後遺障害の逸失利益の計算方法
逸失利益の計算方法は計算式が決まっており、以下の数式で求められます。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
したがって、逸失利益を求めるには、
- ① 基礎収入
- ② 労働能力喪失率
- ③ 喪失期間に対応するライプニッツ係数
の3つの数値を確定する必要があります。
以下、この3つの数値の意味について、くわしく解説します。
①基礎収入
基礎収入とは、被害者がどの程度の収入を得る見込みがあるかどうかということです。
したがって、被害者の方が交通事故にあう段階でどのような職業についていたか、年収はどの程度あったのかということがポイントになります。
以下では、被害者がどのような立場にあったかに応じて解説をしていきます。
会社員の方
交通事故にあった時点で被害者が会社員だった場合には、今後も会社員として仕事をしていく可能性が高いといえます。
そのため、原則として交通事故にあう前の年の年収を基礎収入とします。
もっとも、30歳未満の会社員の場合、実際の収入ではなく、賃金センサス(平均賃金)を基礎収入とすることがあります。
30歳未満の場合、将来において収入が増加する可能性があるからです。
主婦・主夫の方
主婦(主夫)は、家事をすることで、配偶者から給料をもらえるわけではありませんが、家事そのものに経済的価値があるため、逸失利益を請求することができます。
もっとも、主婦(主夫)と一口に言っても、専業主婦(主夫)、兼業主婦(主夫)や高齢の主婦(主夫)などで状況が異なります。
以下、それぞれにわけて解説します。
-
専業主婦(主夫)の逸失利益の場合ボタン
-
兼業主婦(主夫)の逸失利益の場合ボタン
-
60歳以上の高齢の主婦(主夫)の逸失利益の場合ボタン
自営業の方
確定申告をしている場合、原則として、事故前年の確定申告の所得額を基礎収入とします。
「売上」ではなく、「所得金額」が基礎収入となりますので注意が必要です。
ただし、所得を算出するに当たって、青色申告控除や専従者控除など、税金上の優遇措置を利用していると認められる部分については、所得額に加算して基礎収入を算定します。
確定申告をしていない場合には、請求書や領収書、通帳の取引履歴などから所得を証明する必要がありますが簡単ではありません。
正確な所得金額の算定が難しい場合には、一定の収入があったことを示す証拠を示した上で、賃金センサスを参考に、基礎収入を検討することになります。
無職の方
交通事故の時点で無職だった場合、交通事故の直前に収入がなかったということになりますので、逸失利益は0となる可能性があります。
ただし、たまたま転職活動中であったという場合や内定があったものの交通事故で内定がなくなってしまったといったケースでは、今後近いうちに就労する可能性が高いと判断できます。
このように無職の場合であっても、就労する可能性が高いといえる場合には、賃金センサスを用いて、基礎収入を算定することができます。
したがって、事故に遭うまでの職歴やその収入、ハローワークでの登録証や就職活動をしていることを裏付ける資料(採用試験を受けている会社からの手紙やメール)といったものが証拠として必要になってきます。
高齢者の方
主婦以外の高齢者の場合も無職の人と同様に就労する可能性があるといえる場合には、賃金センサスを基礎収入として逸失利益を算出することがあります。
年金で生計を立てている高齢者については、後遺障害が認定されたかどうかで年金額が減るということはありませんので、逸失利益は原則として生じないということになります。
但し、死亡事故の場合には、年金も基礎収入とすることができます。
なお、自賠責保険の取扱いでは、高齢者で無職の場合でも一定額の逸失利益を認めるケースもあります。
学生の方
交通事故の時点で、学生だった場合には、まだ本格的に仕事をしているわけではないため、賃金センサスを用いて基礎収入を算定します。
具体的には、男女別、学歴計、年齢計の金額を使用します。
男性の2022年の額は569万8200円、女性の額は399万6500円で、男女合計の金額は506万9400円となっています。
したがって、学生の場合にはこれらの金額を基礎収入として、逸失利益を計算します。
ただし、むちうちによる後遺障害14級9号の事案の場合には、労働能力喪失期間が5年間程度とされることが多いため、年齢の合計ではなく、年齢別の金額を基礎収入とすることもあります。
例えば、2022年の20歳から24歳の賃金センサス(学生に適用される可能性が高い)は、男性で351万5300円、女性で318万0300円となっています。
最新の賃金センサスについては、以下をご確認ください。
外国人の方
永住資格あるいは、在留資格の更新が確実に認められる場合には、通常の日本国籍者と同様の考え方で算定します。
不法滞在や在留資格の更新が確実でない被害者の場合は、事故後一定期間経過後は、日本国外で就労するものとしてそこで得られるであろう収入水準を推定して基礎収入とすることになります。
②労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、その後遺障害がどの程度、本来の能力を失わせることになるかというもので、パーセントで表されます。
交通事故にあう前の状態を100%とした場合に、どの程度パフォーマンスが落ちるのかというのが労働能力喪失率ということになります。
これについては、認定された後遺障害の等級に応じて、一応の喪失率の目安が決まっています。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
基本的には、上記の表の労働能力喪失率を前提に後遺障害の逸失利益を計算します。
しかし、後遺障害の種類や職種によっては、別の取り扱いがなされるケースもあります。
以下では、代表的な例をご紹介します。
-
醜状障害の場合ボタン
-
腰椎の圧迫骨折の場合ボタン
-
鎖骨骨折後の変形障害の場合ボタン
-
専門職と呼ばれる職業に従事している場合ボタン
③喪失期間に対応するライプニッツ係数
喪失期間
労働能力喪失期間とは、事故によって残存した後遺障害による労働能力の低下が影響する期間のことです。
基本的には、症状固定日を始期として、就労可能年数の67歳までの期間を労働能力喪失期間とします。
25歳で症状固定となった場合、67 – 25 = 42年間が労働能力喪失期間となります。
この原則の例外としては、以下の場合があります。
被害者の症状固定時※の年齢が事故当時67歳を超える場合、「平均余命」(後記で解説)の2分の1を労働能力喪失期間とします。
また、「症状固定から67歳までの年数」と「平均余命の2分の1の年数」を比べて後者の方が長い場合は後者の年数を喪失期間とします。
→ 平均余命の2分の1の年数が喪失期間
※死亡事故の場合で、年金を基礎収入とする場合には、2分の1とすることなく、平均余命の年数をそのまま利用して計算します。
平均余命は、簡易生命表という資料に掲載されています。
2023年の簡易生命表は以下のとおりです。
▼簡易生命表はこちらをクリック
-
平均余命の早見表(2023年簡易生命表)ボタン
被害者の症状固定時の年齢が67歳を超えているため、平均余命の2分の1が労働能力喪失期間となります。
70歳の平均余命を上の表(男)から読み取ると「15.65」年
計算式:15.65年 × 1/2 = 7.82年
したがって、8年を喪失期間とします。
※平均余命の端数をどのように処理するかは争いがあります。ここでは小数点以下を四捨五入で計算しています。
「症状固定から67歳までの年数」と「平均余命の2分の1の年数」を比べます。
症状固定から67歳までの年数 → 17年
計算式:67歳 – 50歳 = 17年
平均余命の2分の1の年数 → 16年
計算式:32.51(上の表の男の50歳を参照)× 1/2 = 16.3年
したがって、17年を喪失期間とします。
20歳の大学生の場合、就労可能年数の67歳から年齢20歳を差し引くと、47年間となります。
しかし、大学卒業まで就労しない場合、47年間に対応する係数を適用するのは適正とは言えません。
したがって、この場合、47年に対応するライプニッツ係数から、就労開始予定までの年数分のライプニッツ係数を差し引きます。
例えば、就労開始予定まで2年の場合、ライプニッツ係数は23.1112となります。
25.0247(47年の係数)ー 1.9135(2年の係数)= 23.1112
むちうちをはじめとする神経症状の場合には、67歳までずっと痛みによる労働能力の喪失が続くとは考えにくいとして、例外的な取扱いがされることがほとんどです。
具体的には、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」については5年程度、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」については10年程度を労働能力喪失期間とすることが多いのが現状です。
ライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは、中間利息控除を行うための係数です。
逸失利益は、将来の収入の減少分を示談の段階で一括して先に受け取るものです。
もし、この受け取ったお金を運用した場合、通常は利息がつきます。
そこで、公平の観点から、この将来の利息による増額分は控除すべきと考えられています。
この利息の控除のことを、中間利息といいます。
この中間利息を控除する係数をライプニッツ係数といいます。
ライプニッツ係数は、下表のとおりです。
ライプニッツ係数の早見表
ライプニッツ係数表(法定利率3%)
労働能力 喪失期間 (年) |
係 数 | 労働能力 喪失期間 (年) |
係 数 |
---|---|---|---|
1 | 0.9709 | 44 | 24.2543 |
2 | 1.9135 | 45 | 24.5187 |
3 | 2.8286 | 46 | 24.7754 |
4 | 3.7171 | 47 | 25.0247 |
5 | 4.5797 | 48 | 25.2667 |
6 | 5.4172 | 49 | 25.5017 |
7 | 6.2303 | 50 | 25.7298 |
8 | 7.0197 | 51 | 25.9512 |
9 | 7.7861 | 52 | 26.1662 |
10 | 8.5302 | 53 | 26.3750 |
11 | 9.2526 | 54 | 26.5777 |
12 | 9.9540 | 55 | 26.7744 |
13 | 10.6350 | 56 | 26.9655 |
14 | 11.2961 | 57 | 27.1509 |
15 | 11.9379 | 58 | 27.3310 |
16 | 12.5611 | 59 | 27.5058 |
17 | 13.1661 | 60 | 27.6756 |
18 | 13.7535 | 61 | 27.8404 |
19 | 14.3238 | 62 | 28.0003 |
20 | 14.8775 | 63 | 28.1557 |
21 | 15.4150 | 64 | 28.3065 |
22 | 15.9369 | 65 | 28.4529 |
23 | 16.4436 | 66 | 28.5950 |
24 | 16.9355 | 67 | 28.7330 |
25 | 17.4131 | 68 | 28.8670 |
26 | 17.8768 | 69 | 28.9971 |
27 | 18.3270 | 70 | 29.1234 |
28 | 18.7641 | 71 | 29.2460 |
29 | 19.1885 | 72 | 29.3651 |
30 | 19.6004 | 73 | 29.4807 |
31 | 20.0004 | 74 | 29.5929 |
32 | 20.3888 | 75 | 29.7018 |
33 | 20.7658 | 76 | 29.8076 |
34 | 21.1318 | 77 | 29.9103 |
35 | 21.4872 | 78 | 30.0100 |
36 | 21.8323 | 79 | 30.1068 |
37 | 22.1672 | 80 | 30.2008 |
38 | 22.4925 | 81 | 30.2920 |
39 | 22.8082 | 82 | 30.3806 |
40 | 23.1148 | 83 | 30.4666 |
41 | 23.4124 | 84 | 30.5501 |
42 | 23.7014 | 85 | 30.6312 |
43 | 23.9819 | 86 | 30.7099 |
令和2年3月31日以前に発生した交通事故の場合には、以下の係数表を使用して計算します。
▼こちらをクリック
-
令和2年3月31日以前に発生した交通事故の損害賠償請求に適用する表
ライプニッツ係数表(法定利率5%)ボタン
子どもは、働いておらず収入がないため、67歳に達するまでの係数から、18歳に達するまでの係数を差し引くという考え方が取られています。
27.1509(57年に対応する係数)− 7.0197(8年に対応する係数)= 20.131
上記のように、10歳の子供の場合は、ライプニッツ係数が20.131となります。
下表は、被害者が18歳未満の場合に適用するライプニッツ係数の早見表となりますので、ご参考にされてください。
年齢 | 労働能力 喪失期間 (年) |
係 数 |
---|---|---|
0 | 49 | 14.980 |
1 | 49 | 15.429 |
2 | 49 | 15.892 |
3 | 49 | 16.369 |
4 | 49 | 16.860 |
5 | 49 | 17.365 |
6 | 49 | 17.886 |
7 | 49 | 18.423 |
8 | 49 | 18.976 |
9 | 49 | 19.545 |
10 | 49 | 20.131 |
11 | 49 | 20.735 |
12 | 49 | 21.357 |
13 | 49 | 21.998 |
14 | 49 | 22.658 |
15 | 49 | 23.338 |
16 | 49 | 24.038 |
17 | 49 | 24.759 |
引用:別表Ⅱ-1就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省
後遺障害の逸失利益の計算例
会社員の方
【 前提 】
- 基礎収入:400万円
- 後遺障害等級:1級(労働能力喪失率100%)
- 症状固定時の年齢:40歳
①まず、労働能力喪失期間からライプニッツ係数を算出します。
ライプニッツ係数:上記の早見表で労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を見る→ライプニッツ係数18.327
②逸失利益を下記の公式に当てはめて計算します。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
以上から、逸失利益は7330万8000円となります。
主婦・主夫の方:収入ゼロ、又はパートタイマーなどの場合
- 基礎収入:399万6500円※
※上で解説したように、主婦の場合、賃金センサス(女性の学歴計、年齢計の年収額)を用います。
- 後遺障害等級:9級(労働能力喪失率35%)
- 症状固定時の年齢:50歳
①まず、労働能力喪失期間からライプニッツ係数を算出します。
ライプニッツ係数:13.1661
→上記の早見表で労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を見る
②逸失利益を下記の公式に当てはめて計算します。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
以上から、逸失利益は1841万6411円となります。
自営業の方
- 基礎収入:500万円
- 後遺障害等級:6級(労働能力喪失率67%)
- 症状固定時の年齢:35歳
①まず、労働能力喪失期間からライプニッツ係数を算出します。
ライプニッツ係数:20.3888
→上記の早見表で労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を見る
②逸失利益を下記の公式に当てはめて計算します。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
以上から、逸失利益は6830万2480円となります。
無職の方
- 基礎収入:399万6500円※
※上で解説したように、無職の場合でも就労する可能性が高い場合は賃金センサスを使用します。この例では、女性の全年齢・全学歴・男女別の平均賃金(2023年)を使用しています。
- 後遺障害等級:8級(労働能力喪失率45%)
- 症状固定時の年齢:30歳
①まず、労働能力喪失期間からライプニッツ係数を算出します。
ライプニッツ係数:22.1672
→上記の早見表で労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を見る
②逸失利益を下記の公式に当てはめて計算します。
逸失利益=基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
以上から、逸失利益は3986万6046円となります。
高齢者の方
【 前提 】
- 基礎収入:367万9000円※
※ご高齢の場合でも就労する可能性が高い場合は賃金センサスを用います。この例では、男性の年齢別・男女別の70歳以上の金額(2023年)を用いています。 - 後遺障害等級:7級(労働能力喪失率56%)
- 症状固定時の年齢:70歳
①まず、労働能力喪失期間からライプニッツ係数を算出します。
被害者の症状固定時の年齢が67歳を超えているため、平均余命の2分の1が労働能力喪失期間となります。
70歳の平均余命を上の表(男)から読み取ると「15.65」年
したがって、8年を喪失期間とします。
ライプニッツ係数:7.0197
→上記の早見表で労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を見る
②逸失利益を下記の公式に当てはめて計算します。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
以上から、逸失利益は1446万2266円となります。
学生の方
- 基礎収入:506万9400円※
※上で解説したように、学生の場合賃金センサスを用います。
この例では、男女の平均賃金(2023年)を使用しています。
- 後遺障害等級:9級(労働能力喪失率35%)
- 症状固定時の年齢:10歳
①まず、労働能力喪失期間からライプニッツ係数を算出します。
子供の場合、67歳に達するまでの係数から、18歳に達するまでの係数を差し引きます。
②逸失利益を下記の公式に当てはめて計算します。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
以上から、逸失利益は3571万8231円となります。
死亡の逸失利益の計算方法
死亡した場合、将来得ることができたはずの収入を得られなくなるため、その分の補償として死亡逸失利益を請求することができます。
以下、死亡逸失利益の計算方法を説明します。
死亡逸失利益の計算式は以下のとおりです。
①基礎収入
基礎収入の考え方は、後遺障害の逸失利益と同じですので、上記の説明をご参照ください。
②生活費控除率
被害者が死亡した場合、被害者の収入はなくなりますが、他方で被害者が生存していれば必要になる生活費は発生しなくなります。
したがって、死亡逸失利益の算定にあたっては、この生活費を控除して計算することになります。
生活費分をどの程度控除するかは、被害者の立場によって変わってきます。
家族関係、性別、年齢に照らして下表の割合が目安とされています。
被害者の立場 | 生活費控除率 | |
---|---|---|
一家の支柱 | 被扶養者が1名 | 40% |
被扶養者が2名以上 | 30% | |
女性(主婦、独身、幼児等含む) | 30% | |
男性(独身、幼児等含む) | 50% | |
年金受給者 | 通常よりも高い割合(50~70%) |
※この表は、目安であり、個別具体的事情によって異なる控除率で算定されることもあります。
③就労可能年数に対応するライプニッツ係数
就労可能年数
就労可能年数は、原則として67歳までとなります。
従って、45歳で死亡した場合には、22年が就労可能年数となります。
67歳 – 45歳 = 22年
ただし、ご高齢の方がお亡くなりになった場合は以下の例外があるので注意が必要です。
ご高齢の方の死亡事故では、気をつけるべきポイントが3つあります。
「67歳までの年数」が「平均余命の2分の1」よりも短くなる場合には、平均余命の2分の1の年数を就労可能年数として計算します。
例えば、60歳の男性が亡くなった場合で平均余命を24年※とします。
(※平均余命は毎年変わるため、仮の数値となります。平均余命の正確な年数については、上の表をご参照ください。)
この場合、67歳までの年数は7年です。
60歳の平均余命(24年)の2分の1は12年です。
したがって、より期間が長い12年を就労可能年数として計算します。
被害者の年齢が事故当時67歳を超える場合、「平均余命」の2分の1を就労可能年数とします。
死亡した方が年金受給者で、年金の逸失利益を計算する場合は、平均余命を2分の1とはしません。年金は、賃金と異なり、高齢によって受給できなくなるわけではなく、むしろ、高齢となってからはじめて受給できるものであるからです。
また、年金は死亡しなければいつまでも受給することが可能ですし、死亡した場合は相続も認められています。
遺族厚生年金(公正年金受給者の遺族に支給されるもの)など、いくつかの種類の年金については、受給者である高齢者自身の生活維持を目的とするものであること、受給者自身はその保険料を支払っていないことなどを理由として、逸失利益を否定した裁判例もあります(最判H12.11.14)。
参考判例:最高裁判所ホームページ
年金の逸失利益については、判断が難しいため、交通事故にくわしい弁護士にご相談なさってください。
ライプニッツ係数
ライプニッツ係数については、後遺障害の逸失利益の部分と同様ですので、上記の解説をご参照ください。
死亡の逸失利益の計算例
以下では、死亡逸失利益の計算例を紹介します。
個別事情によって金額は変動しますので、ご留意下さい。
具体例① 40歳男性、年収550万円、妻と子の扶養義務がある被害者のケース
この場合、基礎収入は550万円、生活費控除率は30%、就労可能年数は27年となります。
計算式:550万円 × (1 – 0.3) × 18.3270 = 7055万8950円
このケースでは、7055万8950円が死亡逸失利益の賠償額となります。
具体例② 70歳男性、年収200万円(年金収入のみ)、ひとり暮らし
この場合、基礎収入は200万円、生活費控除率50%、16年で計算します。
計算式:200万円 ×(1 − 0 .5)× 12.5611 = 1256万1100円
このケースでは、1256万1100円が死亡逸失利益の賠償額となります。
逸失利益の時効
消滅時効の期間
逸失利益等の賠償金の請求には、時効といって、請求できる期間が存在します。
ケガをした場合の賠償金の消滅時効は、基本的には5年となります。
なお、物損の場合の損害賠償請求は3年です。
時効開始の起算点
時効をカウントする、起算点について、法律上は「損害及び加害者を知った時から」と規定されていますが、逸失利益(逸失利益の慰謝料を含む。)の場合は「症状固定日」が起算日となります。
逸失利益以外の傷害慰謝料、治療費等の損害については「事故日」が起算点となります。
死亡事故の場合には、死亡した時点が起算日となります。
逸失利益の請求の流れ〜事故発生から支払まで〜
逸失利益を含めた賠償金は、通常、事故発生から以下の流れで支払われることとなります。
なお、上述したとおり、人身事故で生じる損害は逸失利益だけにとどまりません。
その他の治療費、車の修理費、休業損害、慰謝料などのもろもろの賠償金と合わせて請求し、交渉していく必要があります。
逸失利益がもらえないケース
逸失利益が認められず、賠償金を支払ってもらえないのはどのような場合でしょうか。
逸失利益は、上で解説したように、「基礎収入」「労働能力喪失率」「喪失期間に対応するライプニッツ係数」という3つの要素で決まります。
したがって、逸失利益が認められないのは、基本的には以下のいずれかの原因があると考えられます。
- ① 収入がまったく減少していない
- ② 後遺障害等級が認められなかった
- ③ 労働能力喪失が認められなかった
また、上記のとおり、消滅時効にかかった場合も相手(保険会社)から時効を主張されると、賠償金を支払ってもらうことができません。
いずれにせよ、逸失利益が認められるか否かについては専門的な判断が必要となるため、交通事故に強い弁護士に相談なさることをお勧めいたします。
適切な逸失利益を支払ってもらうための4つのポイント
①後遺障害の等級認定が重要
上述のとおり、逸失利益の計算式は決まっています。
労働能力喪失率は、後遺障害の等級によって大きく異なります。
例えば、14級の場合が5パーセントであるのに対して、13級の場合は9パーセントとなり、その差は歴然としています。
したがって、後遺障害において、何級に認定されるかはとても重要です。
後遺障害の申請をする際に提出する書類の多くは治療期間中に作成されるものですから、治療期間中においても後遺障害の申請を意識した対応が大切になってきます。
②保険会社の提示が適正額ではないこと
上述のとおり、逸失利益には、任意保険基準があり、これは裁判基準よりも低額となる可能性があります。
裁判基準に基づく賠償金は、仮に裁判となった場合に認定される可能性が高い金額です。
すなわち、公平な第三者である裁判所が認める「適切な賠償金」といえます。
これに対して、任意保険の基準は、保険会社が独自に定めた基準に過ぎません。
被害者としては、当然、裁判基準の休業損額を受け取りたいと考えるでしょう。
また、逸失利益以外にも、賠償金(慰謝料など)に関しても、保険会社の提示額が適正額よりも低額な場合があります。
そのため保険会社から提示される金額を鵜呑みにせず、裁判基準を請求することが重要です。
③逸失利益の適切な金額を知ること
逸失利益は、基本的には上述した裁判基準の額が適切といえます。
また、交通事故で請求できる賠償金は逸失利益だけではありません。
治療費などの積極損害の他、慰謝料、休業損害なども請求できる可能性があります。
これらの賠償金について、適切な額を知ることが重要です。
被害者の方の中には、早期解決のために、保険会社の提示額に応じるという方もいらっしゃいます。
しかし、前提として「本来もらえるべき金額」がどの程度かを知ることは、意思決定を行うための重要なプロセスです。
一度示談書にサインをすると、後から撤回することはとても難しいため、示談を成立させる前に、適正額を知ることをお勧めいたします。
④専門家に相談すること
適切な賠償金の額を知るために、最も重要なことは、信頼できる情報を得ることです。
現在はインターネット上に様々な情報が溢れており、交通事故の賠償金に関する情報も入手できます。
しかし、インターネット上に公開されている記事は、不特定多数の方に向けられたものであり、個別具体的な状況を踏まえたものではありません。
そのため、交通事故被害者にとって、最適な情報とは言い切れません。
したがって、インターネットの情報は参考程度にとどめて、可能であれば専門家に相談することをお勧めいたします。
また、専門性が高い弁護士の場合、賠償金の算定だけでなく、保険会社との交渉のノウハウなど、インターネットに掲載されていない情報を持っている場合があります。
そのような弁護士にご相談されると、問題解決の道筋を教えてくれるでしょう。
まとめ
以上、逸失利益についての正しい計算方法、請求のポイント等について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
逸失利益には、裁判基準、任意保険基準、自賠責基準の3つがあり、被害者の方は、裁判基準によって算出した適切な金額を受け取る法的な権利があります。
そのためには、保険会社の提示を鵜呑みにしないようにすることが大切です。
逸失利益やその他の賠償金については、適正額を知るために、できるだけ交通事故の専門家に相談することをお勧めいたします。
専門性が高い弁護士であれば、逸失利益を含めた賠償金全般について、適切な額をアドバイスしてくれるでしょう。
この記事が交通事故に遭われた方にとって、お役に立てば幸いです。
当法律事務所の人身障害部は、交通事故に精通した弁護士のみで構成されており、後遺障害に悩む被害者を強力にサポートしています。
弁護士費用特約にご加入されている場合は、特殊な場合を除き弁護士費用は実質0円でご依頼いただけます。
LINEや電話相談を活用した全国対応も行っていますので、逸失利益の算定などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。