解決事例
更新日2020年8月24日

事故で高次脳機能障害の後遺症を負った学生が1億円の賠償を得た事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Uさん

受傷部位頭部(脳挫傷、頭蓋骨骨折)
等級別表第1の2級1号(高次脳機能障害)
ご依頼後取得した金額
1億円(自賠責保険を除く)

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 380万円
休業損害(両親) 30万円
付添費用 約200万円(1日6500円 裁判基準)
入院雑費 48万3000円(1日1500円 裁判基準)
介護自動車購入費 150万円
自宅改装費 960万円
将来介護費 6000万円(1日8000円 裁判基準)
後遺障害慰謝料 2300万円(2級、裁判基準)
近親者慰謝料 300万円
後遺障害逸失利益 6000万円(賃金センサス(男女学歴、年齢計)×100%×67歳まで 裁判基準)
過失相殺 20%
結果 1億円(自賠責保険を除く)

 

状況

自転車Uちゃんは、自転車で友達の家に遊びに行き、友達の家から自宅に帰る途中でした。

自転車で下り坂を下って、そのまま横断歩道のある交差点に入ったところに、自動車が走ってきて、止まりきれずにぶつかってしまいました。

この交差点には信号機はありませんでした。

Uちゃんは転んだはずみで、自転車から投げ出されてしまい、頭を地面に強く打ってしまいました。

そのため、ドクターヘリで救急搬送され、全身のCT検査を受けたところ、多発脳挫傷と頭蓋骨骨折と診断されました。

突然交通事故の知らせを聞いたご両親もすぐに病院に駆けつけ、Uちゃんの状況を聞きましたが、ICUに入っており、この日からご両親は交代しながら、病院に付きっきりの状態となりました。

そして、10か月以上に及ぶ入院生活ののち、Uちゃんは退院し、自宅に戻ることになりましたが、体幹機能が喪失してしまっており、車椅子や杖がなければ歩行ができない状態になってしまいました。

また、怒りっぽくなってしまい、ご両親にも当たることが増えました。

まさに、Uちゃんとご両親の生活は交通事故を機に一変してしまったのです。

退院後も定期的なリハビリを継続して、一進一退の状況まで至ったため、症状固定となり、Uちゃんのご両親は後遺障害の手続を行いました。

その結果、高次脳機能障害として別表第1の2級1号に該当すると判断されました。

Uちゃんのご両親は後遺障害が認定された段階で、最終的な示談交渉を行うに当たって、弁護士にご相談に来られました。

 

 

弁護士の対応

弁護士は、Uちゃんのご両親から交通事故前後での生活状況の変化を詳細に聞き取り、請求すべき賠償項目を漏らさないよう細心の注意を払ってお話をお伺いしました。

その上で、相手方保険会社から診断書などの資料を取得するとともに、病院のカルテも取得し、詳細に検討をして、まずは、認定されている等級が妥当かどうか、時間をかけてチェックしました。

カルテなどの資料からUちゃんの初診時の意識障害としては、JCSが200、GCSも3点と非常に重症であり、簡単な応答に反応するようになったのも3日後と記録されていることがわかり、Uちゃんがまさに生死の境にいたことを痛感しました。

その上で、症状固定時には学校に登校していたため、交通事故前後の成績の変化や友人との人間関係などの資料も確認し、最終的に弁護士は認定された等級を前提に示談交渉を行う方針を立てました。

車椅子のイメージ画像そして、示談交渉に際して、請求すべき金額を算出するために、Uちゃんの自宅を訪問し、自宅の状況を確認したり、事故現場の検証をしたりしました。

自宅を訪問すると階段や段差がいくつもあり、ご両親がUちゃんの体を支えて家に入らないといけない状態であることがわかり、リフォームの必要性を強く感じました。

実際、事故前は、Uちゃんは2階で生活していましたが、事故後は2階まで上がれないため、1階のリビングのスペースに布団を敷いて寝ている状態でした。

キッチンも手すりを設けたり、高さを下げて車椅子でも利用できるようにしないといけませんでした。

こうしたリフォーム費用については、見積書を取得して、相手方保険会社に請求をしました。

石本さん(仮)の画像また、ご両親からお話を伺うと、Uちゃんの看病でどうしても会社を休んだ日もあるとのことでしたので、休業損害証明書の作成を弁護士がお願いして、休業損害の部分と定額の付添介護費の請求をすることにしました。

他にも介護自動車を新たに購入したということでしたので、そのカタログや注文書を取得して、請求額に追加しました。

さらに、これだけ大きな事故で、ご両親の生活も一変していることも考えると、将来のUちゃんの介護の苦労やご両親の精神的な慰謝料も補償してもらう必要があると判断し、自宅改装費だけでなく、将来介護費や近親者慰謝料も請求をしました。

これに対して、相手方保険会社は、弁護士が最初から示談交渉に入っていることもあり、近親者慰謝料を認めるということでしたが、額としては 100万円程度の提示でした。

また、将来介護費についても1日あたり 6000円という提示に止まっていたため、将来介護費について 1500万円近く請求額と開きがある状況でした。

そのため、弁護士は、Uちゃんのご両親から詳細にお伺いしていた介護の状況を保険会社に説明し、1日 8000円という裁判基準を下回るのは不当であると主張するとともに、幼いUちゃんの交通事故により愛する娘の変わってしまった姿を目の当たりにしているご両親の苦痛は 100万円では到底補償できるものではないと主張しました。

最終的に、相手方保険会社も今回の交通事故の重大さを考慮して、こちらの要求をかなり認めてもらう内容での示談を提案してきました。

  • 請求した休業損害は全額認め、付添介護費用も入院期間中は裁判基準である1日あたり 6500円で認める。
  • 介護自動車の購入費用も 150万円認め、リフォーム費用としても見積書の 960万円を補償する。
  • 将来介護費として、1日 8000円の裁判基準で平均余命まで認める。
  • Uちゃんの後遺障害慰謝料は裁判基準の 2370万円、逸失利益も100%で67歳まで補償する。
  • 近親者慰謝料としてご両親に対して 300万円を補償する。

総額としては、自賠責保険の 3000万円を除いて、1億円の賠償を得ることができ、Uちゃんのご両親も納得の上で示談が成立しました。

 

 

弁護士のアドバイス

初めてUちゃんとお会いした日を弁護士は今でも忘れられません。

また、ご両親から交通事故前後で生活状況が変わってしまったというお話をうかがった時のことも鮮明に覚えています。

今回のUちゃんのように、交通事故を境に本当に人生が変わってしまうということを弁護士としても改めて痛感するとともに、これからの生活を少しでも安心して過ごしてもらえるようにという強い思いで、示談交渉を行いました。

結果として、裁判に移行せずに示談交渉でこちらの要望をかなり認めてもらうことができ、本当によかったです。

弁護士として、過去に遡って、交通事故をなかったことにすることはもちろんできませんが、これからもご家族に寄り添って、精一杯サポートをさせていただきます。

今回、Uちゃんのご両親にはインタビューにご協力いただいております。

こちらから是非ご覧ください。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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