解決事例
更新日2019年4月23日

後遺障害14級9号が認定された個人事業主の事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Lさん

受傷部位腰(腰椎捻挫)、左肩(左肩関節捻挫)
等級併合14級
ご依頼後取得した金額
約190万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 約90万円
後遺傷害慰謝料 約110万円
後遺障害逸失利益 約58万円
過失割合 20%
回収額 約190万円

※その他にも治療費など表には記載していない損害があります。

状況

Lさんは、道路をバイクで走行していたところ、前方の普通乗用車が、左折を開始し、それに巻き込まれて転倒するという事故に遭いました。

Lさんは、すぐに緊急搬送され、腰椎捻挫、左肩関節捻挫という傷害を負いました。

Lさんは、事故後、整形外科に通院を継続していましたが、事故から半年弱で保険会社から治療の打切りにあいました。

Lさんとしては、治療を打ち切られるのは致し方ないが、痛みが残っているので、後遺障害等級については適正な認定をしてもらいたいと考え、デイライト法律事務所に相談に来られました。

 

弁護士の対応

弁護士は、Lさんの事故態様や治療経過などの必要事項を聴き取り、後遺障害の申請をすることにしました。

もっとも、Lさんは、痛みが残っており治療に一定の効果を感じられていました。そこで、Lさんは、健康保険を使用して治療を継続されることになりました。

弁護士は、Lさんが治療を継続していることや、Lさんが痛みによって具体的にどのような仕事上あるいは日常生活上の支障が出ているかを、審査機関に理解してもらうために、Lさんの陳述書を作成しました。

弁護士は、その他の必要書類に陳述書を加えて、後遺障害申請を行ったところ、腰の痛みと左肩の痛みについて、後遺障害14級9号が認められ、併合14級の等級認定を受けることができました。

この認定を受けて、弁護士は、Lさんの損害金額を算定し、相手方保険会社に賠償の提示を行いました。

そうしたところ、傷害慰謝料と後遺傷害慰謝料について、裁判基準(裁判をした場合の水準)の100%で合意することができました。

しかし、問題となったのは後遺障害逸失利益でした。

Lさんは、個人事業主でした。

個人事業主の場合、後遺障害逸失利益の計算に必要な基礎収入は、確定申告をもとに計算することが多いです。

しかし、Lさんは、事業を始めて間もない時期で事故に遭っていたため、まだ確定申告をされていませんでした。

そこで、確定申告ではなく、事故直近3カ月の収入額を明らかにした上で、それを年収ベースに計算し直して基礎収入を算定しました。

そうしたところ、保険会社も弁護士が算定した年収額を認め、労働能力喪失期間を5年、喪失率5%という裁判所で認められるのと同等の水準で後遺障害逸失利益を認めさせることができました。

 

弁護士のアドバイス

後遺障害申請における陳述書の作成

後遺障害の申請にあたって、被害者の「陳述書」(被害者が述べていることを書面化したもの)は必須の資料ではありません。

しかし、ケースによっては、提出が必須とされている書面のみでは、被害者の現状を明確に伝えることが難しい場合もあります。

そうした場合には、当時、残っている痛みや、痛みによる仕事上あるいは日常生活上の支障を具体的に記載するなどして、審査機関に理解してもらうことが大切です。

個人事業主の後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、事故により後遺障害が残った結果、働きづらくなり収入が減ってしまうことに対する補償です。

その算定にあたっては、基礎収入を確定しなければなりません。

サラリーマンであれば、事故前年度の源泉徴収票に記載されてある年収額をベースにしますが、個人事業主の場合は、確定申告の所得をベースにすることになります。

しかし、中には確定申告をしていない個人事業主の方や、本件のLさんのように事業を始めたばかりで確定申告が済んでいない方もいます。

こうした場合には、過去の収入などから、出来る限り、事故前の現実収入を特定する必要があります。

どうしても明確にできないときは、賃金センサスという平均賃金金額を基礎収入とすることもありますが、基本的には現実収入を明らかにしなければなりません

 

 


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