解決事例
更新日2020年8月21日

後遺障害非該当から異議申立により等級認定された高校生の事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Pさん

受傷部位左手舟状骨骨折
等級14級9号
ご依頼後取得した金額
約150万円増額

内訳
損害項目 保険会社提示額 弁護士介入後
治療費 再検査費用も認める
傷害慰謝料 110万円(裁判基準)
後遺障害慰謝料 なし 110万円(裁判基準)
後遺障害逸失利益 なし 約60万円(裁判基準 5年間)
過失相殺 20% 15%
結果 約150万円の増額

 

状況

Pくんは、自転車で下校中に一旦停止のある脇道から進行してきた自動車にひかれてしまいました。

この事故で、Pくんは転倒した際に左手をついて舟状骨骨折の重傷を負いました。

舟状骨骨折について詳しくはこちらをご覧下さい。

Pくんは、緊急搬送され入院し、骨折した左手について、スクリュー固定の手術(骨折部をネジで止める方法)を受けました。

退院後、自宅近く(福岡市内)の整形外科でリハビリを行い半年ほど行い症状固定に至りました。

なお、スクリューは主治医の意見も踏まえてPくんのご家族の意向で手の中に残ったままの状態で症状固定となりました。

Pくんは加害者の保険会社の言われるままに後遺障害について事前認定を行いましたが、結果は非該当でした。

この結果に納得できなかったPくんとご家族が弁護士に相談に来られました。

 

弁護士の対応

Pくんは事故書類を全くもっていなかったため、弁護士が受任後、保険会社から事故書類と後遺障害の事前認定書類を取得しました。

すると、リハビリを行った医師の当初の後遺障害診断書には、「自覚症状なし」と記載がありました。

しかし、Pくんは固定後も手術をした左手関節付近の痛みがあると言っていました。

そこで、自己負担になる可能性もある旨を説明して、手術した病院を受診するようアドバイスしました。

その病院でMRI検査を受診したところ、手術してスクリューが入っている部分について、「浮腫性の変化がある」と指摘されました。

この検査結果を受けて、検査をした病院に依頼し、後遺障害診断書を新たに作成してもらいました。

この検査画像と後遺障害診断書をもとに異議申立てを行ったところ、非該当からPくんの訴えていた左手部の痛みについて、14級9号の認定を受けることができました。

本件では、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、過失割合が主要な争点となりました。

相手保険会社は、当初、慰謝料について、裁判基準の80%しか認めないという強い姿勢で交渉してきました。

しかし、Pくんは入院のため、学校を休まなければならず、少なからず学業にも影響を及ぼしていました。

弁護士は、こうした事情を説明し、粘り強く交渉したところ、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料ともに、裁判基準で解決することができました。

また、過失割合についても、当初、保険会社が主張していた20(Pくん):80(相手方)から、15(Pくん):85(相手方)まで有利に交渉を進めることができました。

また、症状固定後に行った再検査の治療費も後遺障害が認定されたことを理由に支払ってもらえるよう交渉したところ、最終的には全額相手方保険会社が支払うということで合意することができました。

 

弁護士のアドバイス

後遺障害の審査は、後遺障害診断書に基づいて行われます。

つまり、後遺障害診断書に記載されていないことは審査が行われません。

例えば、肩の痛みと可動域制限(肩が挙がりにくい状態)が残っていたケースで、痛みの部分しか後遺障害診断書に記載されていない場合には、可動域制限については審査されず等級認定を受けることができないのです。

後遺障害診断書に記載されていなければ、実際に症状が残っていても等級認定はされません。

本件では、Pくんには、手関節付近に痛みが残っていたにもかかわらず、「自覚症状なし」、つまり、痛みがないという内容の後遺障害診断書になっていたのです。

こうした後遺障害診断書で申請しても非該当になるのは当然のことです。

後遺障害診断書を作成するにあたっては、主治医と十分にコミュニケーションをとり作成してもらうことが必要です。

万一、自分の症状が漏れているような場合には、主治医に加筆してもらうべきです。

また、後遺障害の種類によっては、一定の検査を受けなければ認定してもらえない等級もあります。

 

 


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