解決事例
更新日2020年1月21日

2度の異議申立により非該当から後遺障害12級を獲得した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Nさん

受傷部位足指(右第一中足骨骨挫傷)
等級12級12号
ご依頼後取得した金額
合計1000万円

内訳
弁護士によるサポート結果
後遺障害等級 12級12号

 

状況

Nさんは、自転車で走行していました。

Nさんが、丁字路交差点に差し掛かったところで、突然、加害者車両が一時停止せずに交差点に進入してきたため、Nさんは避けることができず、加害者車両に衝突されました。

この事故により、Nさんは、右第一中足骨骨挫傷などの傷害を負い、整形外科に通院することになりました。

しかし、加害者は任意保険に加入していなかったことから、Nさんの人身傷害保険によって治療費を賄うことになりました。

事故後、Nさんは医師の指示の下、治療を継続していましたが、右足指の痛みが引かないまま、半年が経過し症状固定となりました。

後遺障害の申請をするにあたって、専門の弁護士に相談したいとのことで、Nさんは当事務所に相談に来られました。

 

弁護士の対応

事故の態様や、Nさんの治療状況からして、後遺障害に該当する可能性が十分あると判断した弁護士は、Nさんに後遺障害申請について説明し、弁護士において後遺障害の申請を行うことになりました。

そこで、弁護士において必要書類を収集して後遺障害の申請を行いました。

しかし、後遺障害の結果は非該当(後遺障害に該当しないという結果)で、さらに、それに対して異議申立を行いましたが、それでも非該当という結果でした。

こうした結果を踏まえて、弁護士はNさんと打ち合わせを行ったところ、やはりNさんには、右足指に痛みが残っており、指の可動域制限(動かしづらいこと)も生じているとのことでした。

そこで、再度、後遺障害の結果に対して、異議申立をすることにしました。

異議申立を行うにあたって、まずNさんの現状を詳細に記した陳述書を作成しました。
陳述書とは、被害者自身の言葉で被害の状況や治療の経過、日常生活・仕事上の支障などについて記載するものです。

さらに、弁護士は、Nさんの画像フィルム(レントゲンやMRIなど)を画像鑑定を行うことができる業者に鑑定を依頼しました(画像の鑑定は医師が行っています。)。
そうしたところ、足指の関節面に一部異常がみられるという結論を得ることができました。

弁護士は、この画像鑑定結果を踏まえて、Nさんの主治医と面談を行いました。
その中で、Nさんに現状残っている痛みや可動域制限と事故との因果関係などについて、詳細に聴き取りを行いました。

聴き取り調査を踏まえて、主治医に医療照会という形で、Nさんの右足指の痛みや可動域制限の原因が事故に基づくものであることなどの意見をもらいました。

その上、事故の状況などが詳細に説明できるように、実況見分調書(事故の具体的な状況が記された警察が作成している書面)を取り寄せました。
実況見分調書を踏まえて、事故の発生状況とNさんの負傷が整合的であり、重い後遺障害が残っても矛盾しないことなどを具体的に説明する文書を作成しました。

弁護士は、こうした資料をまとめて、異議申立書を作成し異議申立を行いました。

その結果、後遺障害12級12号「1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの」に該当するとして、後遺障害認定を得ることができました。

Nさんは、この認定の結果、自賠責保険と人身傷害保険から合計1000万円以上の補償を受けることができました。

 

弁護士のアドバイス

本件での異議申立について

後遺障害の認定の審査は、損害保険料率算出機構が行います。

関連:損害保険料率算出機構

この審査の結果に不服があるときには、異議申立を行うことができます。

異議申立を行うと、再度、審査が行われることになります。

この異議申立に回数制限はなく、何度でも行うことができます。

もっとも、全く同じ申請書類を出し続けたとしても認定の結果が覆ることはありません。

異議申立にあたっては、異議を申立てる対象となる認定結果が、不適切なものであることを、証拠に基づき主張していかなければならないのです。

本件の異議申立にあたっては、以下の準備を行いました。

異議申立の準備

  1. ① 被害者の陳述書の作成
  2. ② 被害者の画像(レントゲン、MRI)の画像鑑定
  3. ③ 主治医との面談
  4. ④ 主治医との面談を踏まえた医療照会
  5. ⑤ 実況見分調書の取得

被害者の陳述書については、被害者の症状の状況や仕事や日常生活での支障を具体的に説明するのに有効な証拠です。

もっとも、後遺障害の審査は、医療記録をもとに審査されます。

したがって、陳述書は、補足的な証拠にとどまり、陳述書が認定を覆す決定的な証拠とまでにはならないでしょう。

被害者のレントゲンやMRI、CTなどの画像は非常に重要な証拠です。

画像上、異常が見られないと評価されていた画像でも、別の医師に画像鑑定をしてもらうことで異常所見が得られ、後遺障害の認定を覆す決定的な証拠となることがあります。

本件では、画像鑑定をすることで関節面に異常があることが分かりました。

本件では、この画像鑑定の結果が認定を覆すにあたって最も重要な証拠となりました。

④の主治医の医療照会の結果も重要な証拠となります。主治医にどのような点について、医療照会をすべきかを確認するために、事前に医師面談をすることが多いです。

⑤の実況見分調書は、事故の態様等を警察が調書として作成したもので、事故の規模や態様を説明する際に有効な証拠です。

異議申立により、等級の認定を覆すには、上記のように様々な準備をする必要があります。

一度出された後遺障害の認定は容易に覆るものではありませんが、後遺障害認定に納得がいかない場合には、専門の弁護士に相談された方がいいでしょう。

紛争処理機構への申立て

異議申立てにより、認定が覆らない場合には、紛争処理機構へ審査を申請することが考えられます。

紛争処理機構では、自賠責保険で判断された内容が正しい内容であるかどうかを判断してくれます。

紛争処理機構への申請は、1回しかできません。また、追加で証拠を提出することができません。

異議申立時に提出されている証拠のみから、自賠責保険の後遺障害の認定の妥当性を判断するのです。

したがって、紛争処理機構へ申請するのは、異議申立で全てを出し尽くした後に行うことになります。

 


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