骨折した被害者が紛争処理センターを利用し約500万円増額した事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 右腕(右橈骨遠位端骨折、右尺骨茎状突起骨折)、左足(左足関節外果骨折など) |
等級 | 併合12級 |
ご依頼後取得した金額 |
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約1000万円 |
主な損害項目 | 弁護士に依頼する前 | 弁護士によるサポート結果 |
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傷害慰謝料 | 約80万円 | 約140万円 |
後遺障害慰謝料 | 約120万円 | 290万円 |
後遺障害逸失利益 | 約320万円 | 765万円 |
合計額 | 約520万円 | 約1000万円 |
※その他にも治療費や入院雑費、通院交通費などの費目もありますが、上記表では主要な費目のみを記載してます。
状況
Sさんは、バイクで交差点に直進して進入したところ、対向車線から右折してきた普通乗用車に衝突されました。
この事故により、Sさんは、脳しんとうを起こしており、自ら起き上がることもできなかったので、緊急搬送されました。
その後、病院においてレントゲン等撮影した結果、右橈骨遠位端骨折、右尺骨茎状突起骨折、左足関節外果骨折などの重傷を負っていることが分かりました。
Sさんは、この事故により1週間程度入院し、その後は病院の整形外科でリハビリを継続することになりました。
リハビリを週2~3回程度継続して行い、事故から約1年が経過した頃に、医師から症状固定と判断されました。
Sさんは、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、それを保険会社に送付して後遺障害申請を行いました。
そうしたところ、左手関節について12級6号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」に認定され、また、肩と左足の痛みは、それぞれ14級9号「局部に神経症状を残すもの」に認定され、併合12級の認定を受けました。
この認定結果に基づき、相手方保険会社から賠償金の提示を受けたのですが、その金額が妥当なものか分からず、Sさんは、当事務所に相談に来られました。
なお、Sさんは、バイクの賠償額についても納得がいっておらず、相談に来られて時点で、バイクの賠償も終わっていない状況でした。
弁護士の対応
弁護士において、Sさんに提示された賠償内容を確認したところ、全く不十分な提示でした。
そこで、弁護士において、裁判基準(裁判をした場合の賠償水準で最も高い水準)で損害を計算し直して相手方保険会社に提示しました。
しかし、保険会社は、傷害慰謝料(入通院に対する慰謝料)及び後遺障害慰謝料(後遺障害に対する慰謝料)に関しては裁判基準の80%、後遺障害逸失利益については弁護士が提示した金額の半分にも満たない金額で提示をしてきたのです。
Sさんは、本件事故で3カ所の骨折をしており、左手関節の後遺障害まで残存していることを考えると、保険会社の提示は明らかに不当な提示でした。
弁護士は、保険会社に対して、本件事故によるSさんの精神的苦痛や仕事の支障などについて再三にわたり説明しましたが、保険会社は全く譲歩しませんでした。
そこで、弁護士はSさんと相談して、紛争処理センターにあっ旋の申立を行いました。
訴訟提起という選択肢もありました。
しかし、過失割合については、Sさんに有利に話が進んでおり、訴訟になった場合、過失割合がSさんに不利に変更される可能性がありました。
そこで、まずは過失割合が争われる可能性が少ない紛争処理センターに申立ててみようということになったのです。
弁護士は、紛争処理センターの申立に必要な書類の一切を収集し、意見書などを作成して、紛争処理センターにあっ旋の申立を行いました。
この時点で、物損に関しても話が平行線であったため、物損についても紛争処理センターに申立てを行っています。
紛争処理センターに申立てた場合、センターから嘱託を受けた弁護士(以下、「嘱託弁護士」といいます。)が、被害者と保険会社の間に入って賠償の調整をしてくれます。
弁護士は、嘱託弁護士との面談の中で、本件事故によりSさんの受けた精神的苦痛や仕事にどれだけの支障が出ているかなどを具体的事情に基づいて説明を行いました。
その後、嘱託弁護士が保険会社に譲歩するよう話をしたようですが、保険会社はすぐにはSさんが納得する賠償案を出してはきませんでした。
そこで、弁護士において、再度、Sさんの仕事上の支障を具体的に記載した書面を提出して、保険会社に正当な補償をするよう主張を行いました。
これを踏まえて、嘱託弁護士から約1000万円で解決できないかという試案が出されました。
Sさんとしても、十分納得できる金額であり、保険会社もこの試案に応じるとのことだったので、この試案で合意をすることになりました。
物損に関しても、買替諸費用等を上乗せし、当初の提示額よりも増額して合意することができました。
紛争処理センターを利用することで、通常の示談交渉のみの場合よりも時間はかかりましたが、適切な補償を受けることができ、Sさんにも満足していただくことができました。
弁護士のアドバイス
紛争処理センターの利用
示談交渉の段階では、保険会社によっては、不当な賠償提示をしてくる場合もあります。
こうした場合には、次のステップである紛争処理センターへの申立や訴訟提起を検討すべきでしょう。
紛争処理センターを利用するのか、訴訟提起するのかは、その交渉の状況によって判断する必要があります。
訴訟になった場合には、必ず相手方にも弁護士が就くことになります。
弁護士が就くと、その弁護士において一から全て資料を検討しなおして、再度主張されることになります。
したがって、交渉の段階では特に争いになっていなかった部分についても争われてしまい、場合によっては、訴訟提起をすることで不利に認定されてしまう部分も出てくる可能性があります。
他方で、紛争処理センターの場合、基本的に相手方に弁護士は就かないまま、保険会社の担当者が対応します。
もちろん、保険会社の担当者も顧問弁護士等に相談はしていると思いますが、交渉段階で全く争いになっていなかった部分について蒸し返して争ってくるということは、あまりありません。
したがって、交渉段階で裁判をした場合よりも有利な部分がある場合には、訴訟提起ではなく、紛争処理センターを利用した方が良いという場面も出てくるのです。
いずれにしても、紛争処理センターを利用するのか、訴訟提起をした方がよいのか、という判断は専門知識を要することになるので、専門の弁護士に相談された方がいいでしょう。
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