解決事例
更新日2019年6月10日

右肩腱板損傷により12級6号に認定された事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Tさん

受傷部位右肩(右鎖骨遠位端骨折、右肩腱板損傷)
等級12級6号
ご依頼後取得した金額
約1720万円

内訳
主な損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 約180万円
後遺障害慰謝料 約290万円
後遺障害逸失利益 約1250万円
回収額 約1720万円

※その他にも治療費、休業損害など表には記載していない損害があります。

状況

Tさんは、自転車で路側帯内を走行していたところ、後方から走行してきたトラックに接触され転倒するという交通事故に遭いました。

Tさんは、すぐに緊急搬送され治療を受けました。

病院で、レントゲン等を撮影した結果、右鎖骨遠位端骨折していることが分かりました。

事故から約3ヶ月を経過しても、肩の痛みや可動域(動く範囲)が回復しないことから不安になったTさんは、当事務所に相談に来られました。

 

弁護士の対応

まず、弁護士は、Tさんに交通事故事件の最終的な解決までの流れや、賠償金の計算方法など、Tさんが不安に感じている点について説明を行いました。

Tさんが相談に来られた時点で、物損についても解決できていませんでした。

そこで、弁護士は受任通知(弁護士が依頼を受けたことを通知する文書)を保険会社に送付するとともに、物損の賠償請求も行いました。

しかし、保険会社との交渉は難航し、人損(身体の損害)と一緒に最終的に訴訟などで解決するしかないとも思われました。

そうしたところ、加害者側(加害者の勤める会社)が当方の主張する金額を賠償するとの申出がありました。

そこで、物損に関しては、保険会社ではなく加害者側が支払いをするということで解決ができました。

Tさんは、事故発生以降、週3,4回程度のペースで通院されていました。

この間、弁護士は、Tさんの休業損害の請求やTさんの治療状況等について保険会社に説明するといったサポートを行っていました。

Tさんは、事故発生から1年を経過した頃に症状固定となり、後遺障害の申請を行うことになりました。

弁護士は、後遺障害の申請に必要な書類の一切を集め、後遺障害の申請を行いました。

そうしたところ、右肩の痛みが14級9号「局部に神経症状を残すもの」に認定されました。

しかし、結果が出た当時においても、Tさんの右肩の痛みは強く、可動域(動く範囲)は制限されている状態でした。

可動域制限の程度は、12級6号に該当するレベルの可動域制限でした。

14級9号から12級6号に認定を覆すには、可動域制限が生じていることについて、客観的な証拠により証明しなければなりません。

そこで、弁護士は、レントゲンやMRIなどの画像を鑑定してくれる業者に依頼して、Tさんの画像を鑑定してもらいました。

そうしたところ、Tさんが右肩腱板損傷していることが分かり、可動域制限はこの腱板損傷が原因であることが分かりました。

この結果を踏まえて、14級9号の後遺障害認定に対して、異議申立を行うことになりました。

ただ、事故当初から、Tさんには腱板損傷の診断はされていなかったため、事故との因果関係が問題視される可能性がありました。

そこで、弁護士は、事故態様などから事故時に腱板損傷していた可能性は極めて高いこと、事故後一貫して右肩の痛みや可動域制限を訴えていること、年齢的に経年による損傷の可能性は低いこと(当時Tさんは30代前半)等を意見書としてまとめました。

さらに、事故により右肩腱板を損傷した可能性が高いことが記載された医師の意見書も取り付けました。

以上のような資料をまとめて異議申立を行ったところ、Tさんの右肩の可動域制限について、12級6号の認定を受けることができました。

弁護士は、この結果に基づき、裁判基準(裁判になった場合の賠償水準で最も高い水準)にて損害を計算して、相手方保険会社に賠償請求を行いました。

今回特に重要となったのは、後遺障害逸失利益でした。

後遺障害逸失利益の計算に用いる基礎収入は、原則、事故前年度の収入とされています。

しかし、Tさんは症状固定時、年齢は30代前半でした。

したがって、今後、収入が増加する見込みは十分にありました。

そこで、弁護士は、Tさんの現状の収入状況や年齢、勤め先の会社規模などを踏まえて、将来においてTさんの収入が増加する蓋然性が高いことを説明し、賃金センサス(性別や年齢等で分けられた平均賃金)を用いて基礎収入を算定すべきとの主張を行いました。

相手方保険会社も概ねこちらの主張を認め、賃金センサスを用いて後遺障害逸失利益を算定することで合意ができました。

また、慰謝料については、傷害慰謝料は裁判基準の90%程度でしたが、後遺傷害慰謝料については裁判基準の100%で解決することができました。

 

弁護士のアドバイス

本件では、後遺障害認定に対して異議申立をすることで認定を覆すことができた事案です。

異議申立により後遺障害認定を覆すことは容易なことではありません。

しかし、等級が覆ることで賠償金額は大きく変わってきます。

仮に、本件で14級9号のまま交渉を進めていた場合、よくても300~400万円程度の賠償にとどまったと思われます。

金額にすると1000万円以上の違いが出てきます。

異議申立をして認定を覆すには、認定を受けるのに欠けていた証拠を収集して、その証拠に基づいて適切な主張することが必要となり高度の専門性が要求されます。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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