鎖骨の変形障害の後遺障害で逸失利益を獲得できた事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 右肩(右肩鎖関節脱臼) |
等級 | 12級5号 |
ご依頼後取得した金額 |
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900万円 |
主な損害項目 | 弁護士によるサポート結果 |
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傷害慰謝料 | 162万円 |
後遺障害慰謝料 | 290万円(裁判所の基準) |
逸失利益 | 1200万円(大卒賃金センサス、14%、24年) |
過失相殺 | 45% |
結果 | 900万円 |
車との衝突事故で鎖骨が変形し、後遺障害認定されたTさん
Tさんは点滅信号の交差点を自転車で直進していたところ、同じタイミングで交差点を直進しようとした車と出会い頭で衝突する交通事故にあいました。
Tさんは救急車で近くの病院に搬送され、レントゲン検査の結果、右肩の肩鎖関節脱臼と診断されました。
医師からは車とぶつかった際に肩をぶつけたのが原因ではないかと言われていました。
Tさんは主治医と相談して、すぐには手術せず、保存療法を選択し、リハビリを行うことにしました。
しかしながら、半年ほどリハビリを継続しましたが、あまり症状が改善せず、肩の可動域が戻らない、痛みが取れない状況が続いたので、手術をすることになりました。
手術のために入院をして、手術後は1か月ほど入院の上でリハビリを行って退院しました。
退院後も定期的に病院に通院し、交通事故から1年経過した時点で症状固定と診断されました。
そこで、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、加害者の保険会社を通じて後遺障害の申請を行いました。
その結果、手術後のレントゲン、CT画像から裸体となったとき、変形が明らかにわかる程度のものと捉えられるため、「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号の後遺障害が認定されました。
保険会社から後遺障害の結果を伝え聞いたTさんは、最終的な示談交渉を大学生である自分だけで行うことはできないと考え、当事務所の弁護士に相談されました。
弁護士の交渉で大卒の平均賃金での逸失利益の獲得に成功
弁護士はTさんが保険会社から交通事故に関する資料を一式もらっていたので、その資料を確認しながらお話を聞きました。
Tさんは症状固定の時点で大学3年生でしたので、今後の進路についても確認し、民間企業へ就職予定である旨を聞き取りました。
また、今回Tさんは自転車での交通事故でしたが、自転車保険には加入しておらず、弁護士費用特約はないものとしてご相談に来られていました。
しかしながら、弁護士がご相談時にご両親の車の保険に弁護士費用特約が付いているかどうかを確認すると、今回のTさんの事故でも使用できることがわかったため、Tさんはご両親の弁護士費用特約を使用して、弁護士に示談交渉を依頼することにしました。
Tさんから依頼を受けて、弁護士はすぐに保険会社に連絡し、それ以降のやり取りは弁護士が行うようになりました。
Tさんから預かっていた後遺障害診断書と等級認定の通知によれば、鎖骨の変形障害による逸失利益が争点となることが予想されました。
あらかじめそうした見通しを立てた上で、弁護士から示談交渉の話を進めると、保険会社は逸失利益を一切認めないということまでは主張せず、今後20年ほど影響が残るという内容の賠償提案がなされました。
逸失利益が一切認められなかったり、認めてもらっても7年程度と主張されることもある中で、当該条件はTさんにとっても有利な内容といえる状況でした。
しかも、保険会社はTさんが大学生であるため、本来就職するまでの時間である1年間分の期間を控除しておらず、その点でも有利な状況でした。
しかしながら、逸失利益を計算する際の年収については、高卒なども含めた男性の平均賃金で計算していました。
そこで、弁護士はTさんから大学の成績証明書を取得して、残りの単位数からすれば大学を卒業することは明らかなので、大卒の平均賃金で計算すべきと主張しました。
慰謝料についても当初は裁判基準の80%と保険会社は主張していましたが、80%では安易に示談に応じることはしないと弁護士が回答したことで、後遺障害慰謝料については12級の裁判基準である290万円を認めてもらうことができました。
今回の事故ではTさんが45%の過失がありましたが、それでも賠償額は900万円になり、Tさんも「弁護士に依頼するとこんなにもらえるんですね」とびっくりしていました。
弁護士のアドバイス
変形障害の問題点
肩鎖関節を脱臼、骨折すると、肩の痛みや可動域の制限とあわせて、鎖骨が変形してしまうという後遺症が残ってしまうことがあります。
今回、Tさんには可動域制限はそれほど残っていませんでしたが、肩の痛みと鎖骨の変形が残っていました。
そのため、後遺症を補償してもらうために後遺障害の認定を受けることが必要な状況でした。
また、後遺障害が認定されても、鎖骨の変形障害の場合、変形が仕事にどのような影響があるのか、影響はないのではないかとして、逸失利益の補償額が争点となることが多くあります。
なぜなら、逸失利益は、将来の労働に対して影響があって初めて認められるものだからです。
変形障害の場合は、労働能力喪失を主張するため、以下の事項について検討する必要があります。
- 疼痛、しびれなどの症状がある
- 重い物が持てない
- コルセット着用が不可欠である
- 立ち続けたり座り続けたりすることができない
- 走ったり、早く歩くことができない
上記の事項を踏まえつつ、適切な補償を受けるためには、専門家である弁護士に依頼して、保険会社との示談交渉を任せることで、交渉の流れを踏まえて、ベストな解決を図るべくサポートを受けることが大切です。
弁護士費用特約について
また、今回のTさんのように、大学生をはじめとして、結婚したことがない被害者の方はご両親の自動車保険の弁護士費用特約が使用できることがあります(別居未婚の子という部類)。
弁護士費用特約は、運転していた車についているかどうかだけでなく、他にも使用できるパターンがいくつかあります。
保険会社も事故の報告を受けなければ、特約を使用できるとは案内しませんので、使用できる保険はないかしっかりとチェックすることが大切です。
結果的に、Tさんは弁護士費用を1円も手出しすることなく、900万円の賠償金を獲得することができています。