手術痕が残ったことを踏まえて慰謝料を増額することができた事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 骨盤骨折、胸椎横突起骨折、左腓骨骨折、他 |
等級 | 併合14級(14級9号(骨盤骨折後の腰痛)、左足のシビレ、知覚鈍麻(14級9号) |
ご依頼後取得した金額 |
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330万円 |
損害項目 | 保険会社提示額 | 弁護士介入後 |
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入院雑費 | 6万6000円(1日1100円) | 9万円(1日1500円) |
傷害慰謝料 | 90万円 | 135万円(入院2か月、実通院日数3.5倍(約2か月)裁判基準) |
後遺障害逸失利益 | 60万円(5%、5年) | 約60万円(喪失率5%、5年) |
後遺障害慰謝料 | 32万円 | 125万円(裁判基準以上) |
結果 | 約190万円 | 330万円(140万円以上増額) |
状況
Lさんは、彼氏の運転する車に乗っていたところ、ハンドル操作を誤り、コンクリートの壁に衝突する交通事故(自損事故)に遭いました。
この事故で車は大破し、Lさんは救急車で北九州市内の救急病院に搬送されました。
そして、搬送先の病院で骨盤の仙骨骨折、胸椎横突起骨折。左腓骨骨折などの重傷を負い、骨盤骨折に対してはプレートを挿入する手術を行いました。
Lさんは、交通事故から2か月間入院を余儀なくされ、退院後は、月に1回程度の経過観察が続きました。
そして、骨折していた部分の癒合が確認できたこともあり、事故から1年ほど経過した段階で、症状固定に至りました。
ただし、手術して挿入したプレートは、取り除く際に他の部位を損傷するリスクがあるとして抜釘できず、プレートが入ったままで症状固定となりました。
Lさんは、彼氏の保険会社に任せて後遺障害の手続を行い、腰痛について14級9号、骨折した左足のシビレや知覚鈍麻について、それぞれ14級9号の認定を受けました。
手術痕については、腰という普段は人の目に触れない部分であることもあり、後遺障害の認定が得られる面積には及んでいませんでした。
この結果を踏まえて、保険会社から示談案が提案されていました。適切な賠償額がわからないLさんは弁護士に相談に来られました。
弁護士の対応
Lさんが受けていた示談案を弁護士が検討したところ、後遺障害逸失利益については、喪失率5%、喪失期間5年というおおむね裁判基準での提案を受けていると判断できましたが、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料ともに不十分なものでした。
Lさんには弁護士費用特約もついていたので、弁護士に交渉を依頼するべきだと説明し、保険会社との交渉を開始しました。
交渉に当たっては、Lさんに手術痕を見せてもらい、写真も入手しました。
手術した部分は確かに普段は服を着ていて隠れる部分でしたが、お尻の上の部分に手術痕があり、20代の女性には、特に大きなショックを伴うものであると考えられました。
そのため、保険会社に写真も示して主張し、また、プレートが残ったままの状態で症状固定に至っている点も指摘し、交渉を行いました。
当初は、慰謝料を80%程度でと主張していましたが、こちらに過失がないことや訴訟に至った場合には、逸失利益自体も争うという姿勢を示していたこともあって、最終的には、傷害慰謝料が 135万円、後遺障害慰謝料が 125万円(裁判基準の約110%)と裁判基準以上の金額に相当する補償を受けることができました。
弁護士のアドバイス
本件では、手術痕が残ってしまいましたが、後遺障害に認定される程度の傷跡ではありませんでした。
事故により傷跡が残った場合で後遺障害に認定されるのは、以下のような場合です。
Lさんは、お尻の上の部分に手術痕が残りましたが、「手のひらの大きさ」ほどのサイズではなかったため、後遺障害には認定されなかったのです。
後遺障害に認定されなかった場合には、傷跡が残っていたとしても特に考慮されることなく賠償額が決定されることがありますが、明らかに妥当ではありません。
後遺障害に該当しないとはいえ、一生傷痕が残ってしまう可能性がある中で、何の評価もされないのは不合理です。
そこで、傷害慰謝料や後遺障害慰謝料の中で、傷痕が残ったことを理由に慰謝料の増額を主張していくべきと考えます。
本件では、Lさんは、腰痛や左足のしびれについて、後遺障害14級9号の認定を受けていました。
そこで、後遺障害慰謝料を裁判基準(裁判をした場合の水準で最も高い水準)からさらに増額する形での賠償を求めたところ、最終的には、裁判基準の110%で解決することができたのです。
傷痕についての後遺障害について、詳しく確認されたい方は、こちらをご覧ください。