異議申立てで12級の後遺障害が認定、約1400万円を獲得した事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 右膝膝蓋骨開放骨折 |
等級 | 12級13号 |
ご依頼後取得した金額 |
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約1400万円 |
損害項目 | 保険会社提示額(14級の時点) | 弁護士介入後 |
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入院雑費 | 11万3300円(1日1100円) | 15万4500円(1日1500円) |
休業損害 | 約100万円 | 約210万円 |
傷害慰謝料 | 約150万円 | 280万円(入院3.5か月、通院期間約12か月 裁判基準) |
後遺障害逸失利益 | 75万円 | 約430万円(前年所得×14%×17年) |
後遺障害慰謝料 | 290万円(12級 裁判基準) | |
小計 | ― | 約1225万円 |
遅延損害金 | なし | 約150万円 |
弁護士費用 | なし | 30万円 |
結果 | 約250万円(過失相殺5%) | 約1400万円(1150万円以上増額、人身傷害保険を含む)(過失相殺5%) |
状況
異議申立てまでの状況は、こちらをご覧ください。
弁護士の対応
被害者請求による異議申立てだったため、自賠責保険金を示談前に受取り、Yさんにお渡ししてから、弁護士はその後の交渉について、道筋を立てました。
すなわち、Yさんの交通事故は、人身傷害保険に関する最高裁判決が出る前の事故であったため、訴訟基準での保険金計算の約款が整備されていない状態でした。
そのため、人身傷害保険を相手方の賠償金より先行して受領しなければ、人身傷害保険基準での損害額計算により、Yさんが損害額の全額を回収することが困難になる見込みが高かったのです。
そこで、弁護士は、相手方の示談交渉に先立って、Yさんの保険会社に連絡し、人身傷害保険金を受領しました。
その上で、相手方との示談交渉を行いましたが、相手方保険会社はYさんがすでに受け取った自賠責保険金と人身傷害保険金の合計が賠償額を超えているので、支払義務はないと回答しました。
そのため、弁護士は訴訟提起を行いました。裁判での主な争点は、逸失利益でした。
すなわち、Yさんの後遺障害による将来の仕事への影響がどの程度の期間認められるかという点が争われました。相手方の弁護士は、神経症状の後遺障害なので12級といえども10年程度に喪失期間は制限されると主張していました。
これに対して、弁護士は、Yさんの症状が、関節の不整という器質的な変化に由来するもので、改善の見込みがないこと、症状固定から一定期間経過した裁判時点でも具体的な症状が残存していることを主張して、原則どおり67歳までを喪失期間とみるべきであると主張しました。
証人尋問の前に、裁判所から和解案が示されましたが、逸失利益については、こちらの主張が認められた内容でした。
そこで、Yさんにも説明の上、和解が成立しました。
Yさんは、自賠責保険、人身傷害保険、相手方の賠償金という形で3回補償を受けました。
この合計額は約1400万円であり、当初保険会社から示されていた示談金よりも 1150万円増額しました。
弁護士のアドバイス
▪️人身傷害保険の利用
本件では、相手方保険会社よりも先にYさんの加入していた人身傷害保険を使用して保険金を先に受領しました。
最高裁判所が採用した訴訟基準差額説という考え方があり、この考え方を前提にすると、被害者に過失割合がある場合でも、先に人身傷害保険を利用して賠償金を回収し、相手保険会社に訴訟提起して賠償金を回収することで、結果的に過失割合ゼロであるのと同じ金額を回収することができるのです。
現在では、相手保険会社に訴訟提起して、その後に人身傷害保険を利用した場合でも過失相殺された分を人身傷害保険で回収することができるように約款が変更されている保険会社もあります。
人身傷害保険は、相手方が無保険の場合や、過失割合が大きいケースなどでは特に力を発揮しますので、相手保険会社の対応が不十分な場合には、人身傷害保険の利用も検討すべきでしょう。
▪️12級13号の逸失利益
12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する場合に認定される等級です。
簡単に言えば、痛みや痺れなどが残っていて、その原因が交通事故による受傷であることを医学的に証明できたときに認定されます。
12級13号の場合、後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間は10年として算定されることが多いです。
これは、神経症状の場合、時間の経過につれて徐々に回復していくと考えられているためです。
しかし、全ての12級13号の事案でこれが当てはまるわけではありません。
本来、労働能力喪失期間は、各個別事案に応じて考えられるべきであり、医学的観点から生涯にわたり、痛みや痺れが続く蓋然性があるのであれば、10年を超える期間も労働能力喪失期間として認められるべきです。
本件では、Yさんが骨折した右膝膝蓋骨周辺の膝関節面に不整(配列が整っていない状態)が残存しており改善の見込みはなく、裁判時点においても具体的な症状が残っていたことを主張することで17年間の労働能力喪失期間で解決することができました。
この事案について、実際のお客様の声はこちらからどうぞ。