解決事例
更新日2019年6月10日

肩甲骨骨折の後遺障害でいくら請求できる?【弁護士が事例解説】

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)
肩甲骨骨折で後遺症が残った場合、慰謝料、逸失利益などの賠償請求が考えられます。

肩甲骨骨折の賠償問題について、交通事故に精通した弁護士が実際の解決事例をもとに徹底解説いたします。



肩甲骨骨折の解決事例の紹介


※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Lさん

受傷部位肩甲骨骨折 右肩棘上筋部分断裂など
等級12級6号
ご依頼後取得した金額
約1300万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 114万円(裁判基準の90%)
後遺障害逸失利益 893万円(喪失率14%、喪失期間39年)
後遺障害慰謝料 260万円(裁判基準の90%)
休業損害 37万円
結果 約1304万円

 

状況

Lさんは、原動付自転車で交差点を左折しようとしたところ、後方から追い越し左折しようとした車に巻き込まれ接触し転倒しました。

この事故により、Lさんは右肩甲骨を骨折する重傷を負い、整形外科の通院を開始しました。

整形外科の治療では、三角布固定及び投薬治療がなされ、その後、可動域を広げるためのリハビリを開始しました。

Lさんは、週に3~4回程度、整形外科に通院してリハビリを継続しましたが、痛みは一進一退であり、可動域の制限も改善しませんでした。

Lさんは、治療を継続しても痛みや可動域制限が改善されないため、後遺障害について弁護士に相談に来られました。

弁護士の対応

弁護士が、Lさんの受傷の程度、治療経過、現在の症状を確認したところ、後遺障害に該当する可能性がありました。

弁護士は、相談された時点で症状固定時期が近々であることが予想されたため、保険会社から、Lさんの診断書や診療報酬明細などを取り寄せ、適切な後遺障害診断書を主治医に作成してもらえるように準備しました。

Lさんの症状では、右肩に可動域制限が残存する可能性があったため、それが明確に後遺障害診断書に反映されるように、主治医と電話連絡により、打ち合わせを実施しました。

出来上がった後遺障害診断書を弁護士が確認したところ、いくつか訂正する必要がある箇所があったため、その点を医師に修正してもらうい、必要書類を添付して後遺障害の申請を行いました。

その結果、Lさんの右肩の可動域制限に後遺障害12級6号が認定されました。

この認定結果を基に、弁護士において損害を算出し、保険会社に請求をかけました。

本件でのメインの問題は、逸失利益の算定でした。

Lさんは、当時アルバイトをしながら資格試験の勉強に励んでいたため、収入自体はそれほど高くありませんでした。

そのため、保険会社からの逸失利益の提案は、当時のLさんの年収額を基礎収入として算定されていました。

そこで、弁護士は、保険会社に対し、Lさんが資格試験のために勉強に励んでおり、合格後には相当の収入を得る蓋然性があることを粘り強く交渉しました。

その結果、賃金センサス男性平均年齢の平均年収額の70%を基礎収入とすることができ、当初の保険会社から提案された金額の3倍程度まで引き上げることができました。

 

弁護士のアドバイス

Lさんのように、就労意欲があり将来において賃金センサスの平均年収額に到達する蓋然性がある方でも、それを主張しなければ、保険会社は現実の収入でしか算定してくれません。

賠償金の中でも逸失利益は大きな割合を占める損害費目ですので、保険会社がどのような算定をしているか注意深く検討する必要があります。

また、後遺障害の認定にあたっては、後遺障害診断書の内容が非常に重要です。

Lさんは、後遺障害診断書を作成する前に相談に来られたことから、弁護士が後遺障害診断書作成に関わることができました。

医師は、体を治すプロであるため、必ずしも後遺障害について十分な知識があるとは限りません。

したがって、後遺障害診断書を作成するにあたっては、交通事故を多く取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

逸失利益の計算方法については、こちらのページをご覧ください。

 

当法律事務所には、肩甲骨骨折等の後遺症でお悩みの方から多くのご相談が寄せられています。

肩甲骨骨折の場合、注意しなければならない共通のポイントが見受けられます。

豊富な解決実績を誇る事故弁護士が肩甲骨骨折のポイントについて、ご紹介いたします。

 

 

肩甲骨骨折とは

肩甲骨とは、肩帯を構成する骨の一つです。

後方から肋骨を覆っている逆三角形の大型で扁平な骨であり、左右一対あります。

鎖骨とともに、上肢を体幹に結びつける役目を持っています。

肩甲骨骨折は、日常生活ではあまり起こりませんが、交通事故のような大きな衝撃が加わる場合は発生する可能性があります。

 

 

肩甲骨骨折で仕事ができない場合

肩甲骨骨折は、肩という腕の付け根の付近の骨折であるため、受傷後しばらくの間は仕事ができない場合が多くあります。

この場合、仕事を休むことによって給料がもらえないなどの損害が生じます。

そこで、加害者(その保険会社)に対して、休業損害を請求することを検討すべきです。

休業損害は、基礎収入に休業期間を乗じて計算します。

休業損害 = 基礎収入 ☓ 休業期間

基礎収入は、会社員、自営業、主婦(家事従事者)、無職者などで、それぞれポイントがあるので注意が必要です。

休業損害について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

また、肩甲骨骨折を負ってしまうと、治療が終わってからでも、腕や肩を動かすと、肩の周辺に痛みが生じて仕事ができないか、できたとしても、制限されてしまうことがあります。

このような仕事に影響が出ている場合、後遺障害の逸失利益や後遺障害の慰謝料を請求できる可能性があります。

後遺障害について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

 

肩甲骨骨折で腕が上がらないときに検討すべきこと

説明する医師のイラスト肩甲骨骨折は、痛みなどから肩や腕の可動域(動かせる範囲)が制限されることがあり、腕が十分に上がらないことがしばしばあります。

このような場合、まず、大事なことは専門の医師に相談して適切な治療を受けることです。

また、後遺障害の認定をきちんとしてもらうことが大切です。

弁護士上記の解決事例でも、もともとの後遺障害診断書は不十分であったため、医師と連携して適切な後遺障害診断書を作成し、その結果、後遺障害の等級を獲得することができました。

このように、診断書の記載内容によって後遺障害が認定されないこともあるので注意が必要です。

 

 

まとめ

肩甲骨骨折は、比較的重傷であり、日常生活や仕事が制限されるため、被害に遭われた方は大変な思いをされているかと存じます。

上述したように、交通事故が発生した場合、後遺障害の認定や損害額の立証が問題となります。

また、過失割合についても、争いとなることが多々あります。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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