解決事例
更新日2020年12月30日

足の骨折で後遺障害が認定された事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Cさん

受傷部位右足(脛骨骨幹部骨折)
等級14級9号(右足痛)
ご依頼後取得した金額
480万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
休業損害 75万円
傷害慰謝料 150万円
後遺障害慰謝料 110万円(裁判基準100%)
逸失利益 145万円(賃金センサス×5%×10年)
合計 480万円

状況

交通事故のイメージ画像Cさんは、後部座席で寝ていたところ、運転していた知人が居眠り運転をしてしまい、看板に衝突して車が横転する交通事故にあいました。

Cさんは寝ていたため、当然事故に対して身構えることなどできず、大きな衝撃を体に受けました。

すぐに救急車で病院に搬送され、全身打撲と右足の骨折と診断されました。

骨折の転移が大きかったことから、骨折した部分にスクリューを入れて固定する手術を受け、しばらく入院生活を余儀なくされました。

Cさんはご両親が弁護士費用特約に加入していたため、事故直後から弁護士費用特約を使用して、別の弁護士に依頼をしていました。

その後、Cさんは事故から1年近くリハビリと経過観察を続け、そろそろスクリューの抜釘手術を受けようというタイミングになっていました。

症状固定が近づいてきたタイミングで、依頼していた弁護士から特にアドバイスや説明がなかったため、不安を感じ、友人から勧められたデイライト法律事務所の弁護士にセカンドオピニオンを求め、ご相談に来られました。

 

弁護士の対応

弁護士は、Cさんから事故の状況とこれまでの治療の状況をうかがいました。

そして、手術をして1年ほど経過していたので、そろそろ症状固定として後遺障害の手続をとる必要がある旨を説明し、具体的な手続に向けての流れをアドバイスしました。

後遺障害の認定手続きについて、詳しくはこちらをご覧ください。

Cさんには骨折した際の手術痕などもあったため、きちんと後遺障害診断書に記載してもらうことが必要であることも伝えるとともに、Cさん自身にも写真を撮っておいてもらいました。

弁護士が依頼を受けて間もなく抜釘が行われるということでしたので、その間に保険会社から診断書などのデータを取得し、後遺障害の準備を治療と同時並行で進めていきました。

そして、抜釘後次の問診の際に、念の為可動域の検査をしてもらいましたが、幸い膝関節や足関節の可動域制限については生じていなかったため、右足の痛みと手術痕を後遺障害の申請に上げました。

このときに、手術痕については、線傷のため、手のひら大の大きさはないとも思われましたが、手続上審査対象としてもらうことで、傷跡が残っていることを証明する資料となるため、その点も意識して弁護士は手続を進めました。

弁護士が後遺障害の手続を行った結果、骨折後に痛みが残っていることを評価され、右足の痛みで14級9号の後遺障害が認定されました。

傷跡については、やはり認定には至りませんでした。

その結果も踏まえて、相手方の保険会社との示談交渉を開始しました。

その際、弁護士は治療期間が1年以上に及んでいたことや20代の女性にとって、後遺障害が認定されなかったとはいえ、手術痕が残ったことを主張して、慰謝料を安易に裁判基準より減額すべきでないと交渉しました。

また、逸失利益についても、むちうちとは異なるので、10年は補償されるべきであると主張しました。

すると、保険会社は最初の回答では、逸失利益については、5年ではなく、10年でよいとの回答でした。

しかも、Cさんの年齢から現実に得ていた収入ではなく、賃金センサスで計算をしてもらうことで合意しました。

しかしながら、後遺障害慰謝料については自賠責保険の基準と同じ 32万円という内容でした。

逸失利益については、Cさんにとって有利な内容でしたので、弁護士はできる限り示談ですすめるべく、慰謝料についての交渉をさらに進め、自賠責保険の基準では話にならないと回答しました。

その上で、すでに受け取っていた休業損害や慰謝料の一部と自賠責保険からの賠償金(合計 180万円)を除いて 300万円ほど受領できれば示談に応じると回答しました。

保険会社としても、事故からかなり時間が立っていたこともあり、弁護士からの具体的な金額提示を受けて、最終的には承諾することになり、示談が成立しました。

最終的なCさんの受領額は 480万円ほどになり、弁護士費用特約で弁護士費用もまかなえたので非常に満足されておられました。

 

弁護士のアドバイス

 

脛骨骨幹部骨折の後遺障害

本件事故により、Cさんは、脛骨骨幹部骨折の重傷を負いました。

もっとも、事故後の治療の経過は良好で、骨癒合は正常に得られたため、後遺障害は14級9号の認定となりました。

本件では、骨癒合が正常であったため、14級の認定となりましたが、骨癒合に異常がある場合など、状況によっては、もっと重い後遺障害に認定されることもあります。

脛骨骨幹部を骨折した場合には、以下のような等級に認定される可能性があります。

機能障害
脛骨骨幹部骨折によって、膝関節の可動域が狭まった場合には、以下の等級に認定される可能性がります。
8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

神経症状による後遺障害
脛骨骨幹部骨折によって、神経症状(痛み、しびれ等)が残った場合には、以下の等級に認定される可能性があります。
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

 

偽関節の後遺障害
偽関節とは、骨折した部分がくっつかないまま、骨癒合が止まってしまっている状態です。
7級10号 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
8級9号 1下肢に偽関節を残すもの

 

変形障害
12級8号 長管骨に変形を残すもの

 

機能障害
脛骨骨幹部骨折によって、足が短くなった場合には、以下の等級に認定される可能性があります。
8級5号 1下肢の5センチメートル以上短縮したもの
10級8号 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

 

乗っていた車での単独事故について

交通事故のイメージイラスト今回のCさんの事例では、Cさんが乗っていた車の運転手が居眠り運転をして、単独事故を起こしています。

つまり、乗っていた車の過失が100%ということになります。

このとき、乗っていた車が誰の名義か、運転していた人が家族かどうかによって、補償内容が変わってきます。

今回は、乗っていた車はCさんの名義ではなく、運転していた人もCさんの知人で家族ではなかったため、追突事故などと同じように、乗っていた車の自賠責保険も任意保険(対人賠償保険)も使えるというケースでした。

 

傷跡の後遺症について

足の傷跡については、手のひら大の大きさがなければ後遺障害には該当しないということになっています。

しかしながら、後遺障害には該当しないからといって傷跡がないというわけではありません。

そこで、慰謝料において交渉を行うためにも症状固定時に、後遺障害診断書には少なくとも傷跡が残っていることを記載してもらっておくほうがよいケースがあります。

Cさんのケースでも、きちんと医師が記載をしてくれたことから慰謝料の交渉に積極的に用いることができました。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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