解決事例
更新日2020年8月17日

後遺障害14級、22年間の逸失利益が認定され和解が成立した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Sさん

受傷部位左腕(左橈骨骨幹部骨折、左尺骨骨折)
等級14級9号(左腕の痛み)
ご依頼後取得した金額
730万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 300万円(入院3ヶ月、赤本基準以上
後遺障害逸失利益 約300万円(喪失率5%、22年間)
後遺障害慰謝料 110万円(裁判基準)
調整金 20万円
結果 約160万円増額

 

 

状況

Sさんは、勤務先に通勤するため、自転車で車道の端を走行していたところ、同一方向に進行する自動車にはねられる交通事故にあいました。

加害者の車の速度が出ていたため、ボンネットから投げ出され、Sさんの自転車は高架下を走行していた他の自動車にぶつかるなど、一歩間違えば死亡事故になるような交通事故でした。

Sさんは、交通事故直後に救急車で病院に搬送され、レントゲン検査やCT検査を受けました。

そこで、左腕の橈骨と尺骨を骨折していることが判明し、手術しました。

手術後は、自転車からはね飛ばされて全身を強く打っていたこともあり、しばらくベッドからも起き上がれず、3か月ほど入院を継続しました。

退院後も定期的な通院を行いましたが、左腕の痛みや痺れがとれず、交通事故から1年後に主治医から症状固定の診断を受けました。

Sさんは、交通事故当時工場で力仕事に従事していましたが、交通事故により長期間の休業を余儀なくされたこともあって、復帰することが困難な状況でした。

そのため、今後のことが不安になったSさんは弁護士に相談することにしました。

 

弁護士の対応

弁護士は、Sさんから症状固定の段階に至っていることを確認し、病院に同行して、後遺障害の診断に立ち会いました。

そこで、主治医の先生に、Sさんの症状の原因や今後の寛解の見通しなどを直接確認するとともに、診断書の作成をお願いしました。

その上で、作成してもらった後遺障害診断書を踏まえて、後遺障害について被害者請求を行いました。

被害者請求について、詳しくはこちらからどうぞ。

この被害者請求を行っている間に、Sさんが勤務先を退職するということが正式に決定したため、傷害の部分について保険会社と示談を開始しました。

休業損害については、すでに支払ってもらっていたため、傷害慰謝料がもっぱらの争点でした。

相手方は、当初裁判基準の補償も否定的な見解を示していましたが、交通事故の程度の大きさやSさんが今回の交通事故で離職したことなどを主張して、裁判基準以上の補償を請求しました。

最終的に、赤本基準より30%ほど増加した 300万円を補償してもらうことで示談が成立しました。

その後、間もなく後遺障害の認定結果が出て、14級9号が認定されました。

この後遺障害の結果を踏まえて再度保険会社と交渉を行いましたが、双方の開きが大きかったため、1か月ほどで交渉を打ち切って裁判を提起しました。

裁判では、逸失利益の喪失期間が主な争点になりました。相手方は14級である以上、3年間ほどで影響はなくなると主張しました。

これに対して、弁護士は、裁判の時点ですでに症状固定から一定期間を経過しているにもかかわらず、症状に変化はないこと、実際にSさんは仕事を辞めていること、むちうちによる場合と異なり、Sさんには骨折という器質的な変化が生じた中での後遺障害であることを主張して、67歳までの22年間を喪失期間とすべきであると争いました。

逸失利益について、詳しくはこちらからどうぞ。

裁判のイラスト双方の主張が出たところで裁判所から和解案の提案がなされました。

和解案では、こちらの主張が受け入れられて22年間を喪失期間とする内容でした。

そのため、裁判から半年ほどで和解が成立しました。

 

弁護士のアドバイス

14級9号の逸失利益

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で計算されます。

後遺障害逸失利益の計算式

①基礎収入 × ②労働能力喪失率 × ③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

③の労働能力喪失期間に関して、14級9号の認定の場合、5年程度に制限されることが多いです。

示談交渉の段階においては、保険会社は、2~3年程度を主張してくることもあります。

このように、14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」に該当する場合に認定される等級です。

参照:一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構「後遺障害等級

時計一般に神経症状は、時間の経過とともに改善していくと考えられているため、労働能力喪失期間も上記のように制限的に考えられています。

もっとも、5年程度というのは、あくまで目安です。

本事例では、裁判をして、仕事への支障や症状の残存を具体的に主張することによって、被害者が67歳になるまで22年間を労働能力喪失期間として認められています。

他にも弊所の解決事例で、14級9号でしたが、示談交渉で喪失期間を10年とする解決ができた事例もあります。詳しくはこちらをご覧ください。

このように、事案によっては、14級9号の認定であっても、5年よりも長い喪失期間が認められることがあります。

事故から数年経過しても、後遺症によって、仕事への大きな支障が続いている場合や症状が強く残存しているような場合には、5年という目安にとらわれず、保険会社と交渉する必要があるでしょう。


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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