解決事例
更新日2020年8月14日

自転車事故で膝に人工関節。弁護士に依頼し後遺障害が認められた事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Dさん

受傷部位左膝(左脛骨近位関節内骨折、前十字靭帯損傷、半月板損傷)、左足(左足関節三果骨折)
等級併合9級(10級11号(左膝機能障害)、12級13号(左足痛))
ご依頼後取得した金額
1028万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
入院雑費 22万5000円(1500円×150日)
近親者付添交通費 32万円
休業損害 230万円
傷害慰謝料 250万円(入院5か月、通院5か月弱 裁判基準)
後遺障害逸失利益 353万円
後遺障害慰謝料 620万円(裁判基準の90%)
過失相殺 30%
結果 1028万円(治療費のぞく受領額)

 

 

状況

解説図Dさんは、自宅から自転車に乗って、自宅前の道路を横断しようとしたところ、ちょうどそこに通りかかった自動車にひかれる交通事故にあいました。

Dさんはすぐに整形外科を受診し、レントゲン検査の結果、左脛骨の骨折(脛骨高原骨折)、左足関節三果骨折と診断されました。

その日に救急病院を紹介され、そのまま入院になりました。

そして、骨折を手術するに当たって、左足のMRI検査を受けたところ、前十字靭帯と半月板を損傷していることも新たに判明しました。

そのため、手術まで骨折した部分をギプスシーネで固定して、手術を行いました。

しかしながら、左膝の状態が芳しくなく、交通事故から3か月後に人工関節を挿入する手術を再度受け、Dさんの左膝は人工関節となってしまいました。

Dさんが入院している段階で、ご家族が事故の重大さを認識し、Dさんに保険会社とのやり取りを任せるのは難しいと考え、弁護士に相談に来られました。


 
 

弁護士の対応

足負傷Dさんのご家族が相談に来られた時点で、Dさんは治療中でした。

治療経過を伺い、人工関節を入れる手術をするということでしたので、後遺障害が残る可能性が極めて高いと判断し、早い段階から相手方の保険会社へ診断書といった事故資料の送付を依頼し、Dさんの症状経過を確認しました。

Dさんは、人工関節を挿入後にリハビリのために転院し、リハビリ治療を継続しました。

しばらくは入院でリハビリでしたが、交通事故から5か月後には退院し、自宅に戻って通院治療を継続しました。

しかしながら、可動域が完全に回復することもできず、また足関節の骨折部の痛みも残った状態で症状固定となりました。

弁護士は医師に後遺障害診断書を作成してもらい、骨折部位や前十字靭帯、半月板の検査画像を取得した上で自賠責保険に被害者請求を行いました。

その結果、膝の人工関節置換術を行なっている点で膝の機能障害として10級11号が認定されました。

また、左足関節の痛みについては、骨癒合はできているものの関節面に不整が認められる(骨が綺麗にくっついていない)として痛みについては14級9号ではなく関節の痛みについては12級13号が認定されました。

この結果を踏まえて、相手方保険会社と交渉を開始することとなりました。

まず、弁護士において、裁判基準で損害を計算し、相手保険会社に提示しました。

Dさんは、主婦であったことから、休業損害については、主婦休損を請求しました。

主婦休損について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、Dさんが入院したことで、ご主人の介護を行うことができなくなり、介護施設を利用していたことから、その費用も請求しました。

さらに、年齢的なものもあり、ご家族が手術の際に遠方から付き添いに病院に来なければならなかったので、そのための交通費についても領収書を添えて保険会社に請求しました。

付き添い費用について、詳しくはこちらをご覧ください。

当初、保険会社は、慰謝料に関しては、裁判基準(裁判をした場合の基準)の80%程度で、休業損害についても請求額よりも低額の提示となっていました。

しかし、交渉を重ねることで、最終的には、傷害慰謝料は裁判基準の100%で、休業損害も妥当な金額となり、家族の病院までの交通費も認めさせることができました。

後遺障害慰謝料については、裁判基準の90%となりましたが、Dさんのご意向として裁判までは望んでいなかったことから、最終的に、上記「内訳」の金額で合意することとなりました。

 

弁護士のアドバイス

人工関節の後遺障害

手術のイメージ画像関節面に近い部分を骨折するなどして関節の機能が十分に果たせない場合、人工関節を挿入する手術を行います。

人工関節にはチタン合金などの金属やセラミック、プラスチックといった材質が用いられています。

この人工関節を入れた場合、関節の可動域が2分の1以上制限されている場合には、関節の用廃として8級7号に該当しますが、2分の1未満の場合には10級11号が認定されます。

今回のDさんは、可動域制限はあるものの2分の1未満だったので、10級11号の認定でした。

下肢(股関節・膝・足首)の後遺症について、詳しくはこちらからどうぞ。

 

近親者の付添交通費

近親者の付添交通費の費用は、当然に認められるものではありません。

病院にて、付添が必要であることを具体的に主張立証していく必要があります。

本件では、手術の内容やDさんの年齢など、付添いが必要であることを具体的に説明することで、保険会社に賠償してもらうことができました。

近親者の付添交通費は、保険会社の方から進んで提案してくることは、ほとんどないので、ケースによっては、賠償から漏れてしまっていることもあるので、忘れないよう注意が必要でしょう。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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