解決事例
更新日2021年11月19日

後遺障害5級で将来介護費用を1日2000円獲得した事例

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Mさん

受傷部位右腕(右上腕骨骨折)、左腰(左寛骨脱臼骨折)など
等級併合5級
ご依頼後取得した金額
約2000万円

内訳
損害項目 弁護士に依頼する前 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 約165万円 約240万円
後遺傷害慰謝料 約1060万円 1360万円
後遺障害逸失利益 約300万円
将来介護費用 470万円
入院雑費 約16万円 約23万円
治療費 約50万円 50万円
看護料 約75万円 約250万円
過失相殺 15% 15%
結果 約1400万円 約2000万円

 

後遺障害5級で将来介護が必要となったMさん

Mさん(80代女性)は、夜、横断歩道のない道路を横断しようとしたところ左方から直進してきた車両に衝突されるという事故に遭いました。

Mさんは、この事故により、左寛骨脱臼骨折、右上腕骨骨折などの傷害を負い、約5ヶ月間にわたり入院することになりました。

入院中は、Mさんの家族が付き添うなどして、身の回りの世話をされていました。

退院後、事故直後よりは、回復したものの、右肩関節と右手関節が動かしづらくなっており、右手指にいたっては、物を握ることも困難な状態になっていました。

こうした状態なので、日常生活にも困るようになったため、親族がMさんの家事の補助をするために交代でMさん宅を訪れるようになりました。

退院後、月2回程度のペースで通院を重ね、事故から約1年を経過したところで、症状固定となりました。

その後、Mさんは、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、保険会社に提出して後遺障害申請をされています。

その結果は、右肩関節及び右手関節、右手指の機能障害が認められ、後遺障害併合5級という認定でした。

結果が出た後に保険会社から賠償の提示があったのですが、Mさんとご家族では、その内容が妥当であるのかどうか分からなかったので、ご家族が当事務所にご相談に来れられました。

 

将来介護費用1日につき2000円の賠償を獲得

弁護士は、まず、保険会社が提示している賠償内容を確認しました。

Mさんの年齢は80代で、すでに年金で生活されており、後遺障害逸失利益を観念することは困難でした。

しかし、賠償内容を見ると後遺障害逸失利益が約300万円計上されていました。

こうしたケースでは、弁護士が入ると、保険会社は大抵の場合、逸失利益の提示を撤回してきます。つまり、弁護士が入ることで賠償金の一部が減ってしまうことがあるのです。

しかし、逸失利益がなくなったとしても、その他の費目が増額されることで、最終的な賠償金額は増額されることがほとんどです。

弁護士は、こうした説明をMさんのご家族にした上で、増額できる見通しについて説明をしました。

まず、傷害慰謝料、後遺傷害慰謝料については、裁判基準に比べ約75%程度であったため、裁判基準の満額で計算し請求しました。

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また、看護料に関しては、退院後もご家族がMさんの自宅を訪れ家事の補助をするなど身の回りの手伝いをしていたことを十分に主張し、退院後の全日について看護料を請求しました。

次に、弁護士が検討したのは、将来介護費用です。

Mさんの当時の状況を聞くと、日常生活を一人で過ごすことは困難と思われ、将来においてもご家族の手助けが必要と思われました。

そこで、弁護士は、将来においてもMさんの看護が必要であることを具体的に主張し、賠償の請求をしました。

相手方保険会社とは何度も折衝することになりましたが、最終的には将来介護費用に関しても1日につき2000円の賠償を獲得することができました。

 

弁護士のアドバイス

本件では、保険会社の賠償提示内容次第では、訴訟提起も視野に入れる案件でした。

ただ、Mさんがご高齢であることなどから、Mさんとご家族の希望として早期解決をご希望されており、また、保険会社も将来介護費用を認めるなど、一定の賠償額の提示があったため、訴訟提起せずに示談交渉での解決となりました。

当初の保険会社の賠償提示には、将来介護費用という項目すら挙げられていませんでした。

専門家に相談しないまま示談を進めていれば、最後まで将来介護費用の費目が上がることはなかったと思われます。

将来介護費用は、裁判基準が記載されている赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻 2021年版)では、「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円。但し、具体的看護の状況により増減することがある。」と記載されています。

実際の裁判では、将来介護費用を認めるか、その金額はいくらかについては、

  • 介護の必要性(被害者に残存した後遺障害の内容等)
  • 介護の態様(職業付添人による介護か近親者付添人による介護か、施設看護か在宅看護か等)

などの事情を考慮して決められます。

裁判例を概観すると、後遺障害等級1級や2級の事例では比較的多く将来介護費用は認められていますが、Mさんの事例のように5級あたりでは、認められた例は多くはありません。また、認められたとしても、5級では日額2000円〜3000円あたりです。

以上の現状から、本件では、裁判基準に近い将来介護費用を交渉段階で獲得できたといえるでしょう。

保険会社の賠償提示を受けた場合には、その内容が妥当なものなのかを確認するために、交通事故専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 


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