異議申立てで後遺障害11級に認定され1000万円以上の賠償を得た事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 首(頸椎骨折)、胸(胸椎骨折)、臀部(尾骨骨折) |
等級 | 併合11級(頸椎から胸椎にかけての脊柱の変形障害) |
ご依頼後取得した金額 |
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1300万円(自賠責保険含む) |
損害項目 | 当初の自賠責保険の認定を前提とした額 | 弁護士によるサポート結果 |
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傷害慰謝料 | 215万円 | 215万円 |
休業損害 | 45万円 | 45万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 | 400万円(11級、裁判基準95%) |
後遺障害逸失利益 | 165万円(年収 × 5% × 5年) | 875万円(年収 × 14% × 67歳まで + 賃金センサス × 14% × 68歳から平均余命の2分の1までの期間) |
過失相殺 | 15% | 15% |
結果 | 455万円 | 1300万円(自賠責保険含む) |
ご主人の弁護士特約を使用し弁護士に相談したTさん
Tさんは、ご主人の運転する自動車の助手席に乗っていました。
ご主人が青信号に従って、交差点を直進していたところに、反対車線から同じく青信号で右折してきた自動車と衝突する交通事故にあいました(いわゆる「右直事故」)。
この交通事故で運転していたご主人は幸い、軽い打撲ですんだのですが、Tさんは救急車で搬送されて、病院でのレントゲン検査の結果、胸骨の骨折と診断されました。
そこで、折れた部分を固定するために、コルセットをして生活をしていました。
ところが、事故から1週間ほど、首から背中の激痛と臀部痛が続いたため、再度整形外科で検査を受けたところ、MRIにより頸椎の骨折と胸椎の骨折、尾骨の骨折が新たに発見されました。
脊椎の骨折ということもあり、その後すぐに病院に入院して安静となりました。
ベッドでは、首にカラーを装着して2か月ほど入院生活を余儀なくされました。
病院を退院してからは、町の整形外科でのリハビリ治療とともに救急指定病院での月に1回の定期観察が続きました。
交通事故から半年ほどして、あまりに大きなけがを負ったことで、補償も含め、今後のことが心配になったTさんは、交通事故の問題に詳しい弁護士を探し、相談することにしました。
弁護士の異議申立てが成功し、11級の等級が認められた事例
弁護士はTさんから、事故の状況と治療経過、現在の症状を相談時に聞き取りを行いました。
Tさんのご主人が弁護士費用特約に加入していたこともあり、すぐにTさんからご依頼を受け、相手方の保険会社から、事故からの診断書や明細書などを弁護士の方で取得しました。
そして、資料を精査した上で、Tさんの現状と今後の治療の見通しについて確認するために、救急指定病院の定期観察に際して、弁護士がTさんと同行して、主治医の先生の見解を伺いました。
そこで、主治医の先生から複数の椎骨が骨折しているため、1年近くは経過を見ていく必要があるとのご意見をいただきました。
主治医の先生との面談も踏まえ、Tさんには引き続き治療を継続してもらうとともに、相手方保険会社にも主治医の意見を伝え、継続して治療費の支払いをしてもらうようお願いしました。
そして、交通事故から1年半近く経過した段階で症状固定の時期となり、再度主治医の医師と面談をした上で、後遺障害診断書を作成してもらうようお願いしました。
その上で、事故以降に定期的にとってきたレントゲン画像やMRI画像とともに、自賠責保険へ被害者請求をして後遺障害の申請をしました。
すると、自賠責保険は、頸椎や胸椎に骨折は認められるものの、変形障害と捉えることは困難であるとして、脊柱の変形障害という11級の後遺障害を否定しました。
他方で、首の痛みや胸部の痛み、臀部の痛みについては、1年以上の治療後も残っているとして、14級9号の認定が出されました(併合14級)。
弁護士が自賠責保険の判断を受け取って内容を確認しましたが、到底納得できるものではありませんでした。
なぜなら、整形外科での診断は頸椎と胸椎の骨折であり、圧迫骨折として変形障害が認められるべき事案であると考えていたからです。
そこで、弁護士は、画像鑑定を行っている専門機関に対して、自賠責保険へ提出した画像データを送り、圧迫骨折による変形障害があると評価できるかどうかについて、意見をもらうことにしました。
なお、この画像鑑定には10万円ほど費用がかかりますが、弁護士がTさんの保険会社にあらかじめ相談をして、この画像鑑定の費用も弁護士費用特約で賄ってもらうことになりました(Tさんの自己負担はなし。)。
→実費については、社会通念上必要かつ妥当な額は、弁護士費用特約加入保険会社から支払ってもらえます。
画像鑑定の結果、鑑定医はTさんの骨折後の状態は、頸椎と胸椎の骨折を一体的に評価して、脊柱の変形障害と判断すべきものであるとの意見でした。
鑑定医の意見を踏まえて、弁護士は異議申立書を作成し、11級の変形障害が認められるべきであると主張を行いました。
その結果、画像鑑定の資料が決め手となり、弁護士の異議申立てが成功し、無事に11級の変形障害が認められました。
その後、弁護士は自賠責保険の結果を踏まえて、最終的な示談交渉を保険会社と行うことになりました。
このとき、弁護士は入院期間中のTさんのご主人の休業損害もTさんの休業損害とあわせて請求しました。
弁護士から資料も準備の上で請求をしたので、ご主人の休業損害についても保険会社に認めてもらうことができました。
しかしながら、弁護士と保険会社との示談交渉では、圧迫骨折による変形障害の逸失利益が主に争点になりました。
というのも、Tさんの変形が11級とは認められたものの、圧迫骨折の程度(圧壊率)がそれほど大きくなかったためです。
当初保険会社は、喪失率を12級相当の14%、喪失期間を8年間と主張していました。
これに対し、弁護士としては、Tさんの変形の程度も踏まえ、11級の喪失率を主張しても裁判では認められない可能性が高いと判断し、他方で圧迫骨折が生涯にわたって継続することを考えると喪失期間が8年間というのはあまりに短すぎると主張し、喪失期間をできる限り伸ばす方針で交渉を行いました。
その結果、喪失期間については、Tさんの平均余命の2分の1の期間補償するという内容で保険会社も納得し、67歳まではTさんの事故前年の年収を前提に、それ以降はTさんが家事労働に従事することを前提に女性の平均賃金を計算根拠として、賠償額を決定することになりました。
この金額が実に875万円となり、後遺障害の慰謝料部分は裁判基準にほぼ近い400万円で、後遺障害の部分を合計すると1300万円ほどの補償になったため、弁護士はTさんとも相談の上で示談することにしました。
最終的な賠償額もTさんのご主人の過失を相殺しても、1300万円になりました。
解説
圧迫骨折の後遺障害について
今回のTさんのような胸椎等の圧迫骨折の場合、変形障害としてその程度に応じて、6級5号、8級相当、11級7号の後遺障害の可能性があります。
また、運動障害であれば、6級5号、8級2号の可能性があります。
さらに、痛みの後遺障害として、12級13号、14級9号の可能性があります。
どの等級に該当するかどうかは、診断書、後遺障害診断書、カルテ等医療記録を精査、検討必要があります。
異議申立てについて
後遺障害等級に不服がある場合は、異議申立てという手続を行うことができます。
異議申立てには、基本的に新たな証拠を提出します。
どのような証拠を提出するかは事案によって異なりますが、以下のようなものが考えられます。
- 主治医等の意見書
- カルテ
- 未提出のレントゲン、CT、MRIの画像等の検査資料
- 刑事記録(実況見分調書等)
- 物損資料(修理見積書や破損部分の写真等)
- 被害者、関係者の陳述書
まとめ
Tさんは、今回の交通事故で長期間の治療を余儀なくされました。
その中で、Tさんから症状をうかがったり、主治医の医師との面談をし、自賠責保険の最初の後遺障害の認定はおかしいと思っていました。
仮に、14級のままで賠償金を算出すると最大でも455万円ほどにしかならないと想定されるため、弁護士による異議申立てにより実に800万円近い賠償額の増額に成功したといえます。
今回のTさんの事例で異議申立てが成功した理由の一つが画像鑑定による鑑定医の意見でした。
Tさんのような圧迫骨折では、逸失利益の補償が大きな争点となります。
逸失利益の交渉は専門的ですので、弁護士に交渉を任せた方がよいケースがほとんどです。