交通事故の休業損害が裁判で認められたパート主婦の事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 首(頸椎骨折)、胸(胸椎骨折)、臀部(尾骨骨折) |
等級 | なし |
ご依頼後取得した金額 |
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150万円(自賠責保険金を含む) |
損害項目 | 弁護士によるサポート結果 |
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傷害慰謝料 | 80万円 |
休業損害 | 60万円 |
遅延損害金 | 10万円 |
結果 | 150万円(自賠責保険金を含む) |
交通事故で頚椎捻挫と診断された兼業主婦のXさん
Xさんは、片側3車線の道路の真ん中の車線で信号待ちしていました。
そこに、後続から赤信号に気づかず前方不注意で走行してきた車に追突される交通事故にあいました。
Xさんはその日のうちに整形外科を受診し、頚椎捻挫と診断されました。
事故処理と治療を終えて自宅に帰宅しましたが、その日の夜から肩から指先にかけてのしびれが出てきたため、注射治療も受けるようになりました。
その後、Xさんは、整形外科を転院して、別の整形外科で治療を行うようになりました。
週に3回程度の通院を継続し、交通事故から5か月ほどで主治医からそろそろ症状固定という話がありました。
そこで、今後の賠償のことなどが不安になったXさんは、交通事故に詳しい弁護士に相談しようと思い、弁護士に相談に来られました。
パートの休業損害のみと主張されたものの主婦休損で解決
弁護士は、Xさんから現在の症状の内容の聞き取りを行いました。
そして、Xさんは弁護士費用特約が使用できるということでしたので、治療後の示談交渉のことも考えて、弁護士への依頼に特約を使用してもらうことになりました。
Xさんとしては、主治医から症状固定の話はあっているものの、依然として首から肩にかけての痛みが継続しているとのことだったので、6か月目まで治療を行った上で、後遺障害の申請を行うということになりました。
そこで、弁護士は、交通事故以降の通院の資料を保険会社から取り寄せるとともに、主治医に後遺障害診断書の作成をお願いして、作成をしてもらった上で申請を行いました。
しかしながら、自賠責保険の結果としては、Xさんの症状は後遺障害に該当しないということで、残念ながら非該当となってしまいました。
異議申立ても検討しましたが、追突事故の内容や症状固定後の状況なども考えると自賠責保険の判断が変わることはないと考え、異議申立てに時間を要するよりも保険会社との示談交渉を進めることでXさんにも了承してもらいました。
そこで、弁護士は、兼業主婦として休業損害を計算して、示談の提案をしました。
ところが、相手方の保険会社は、兼業主婦であり、パートの休業の話を事故当初に聞いているので、その補償しかしないと主張しました。
Xさんの収入は、年収で100万円ほどであり、ご主人の扶養の範囲内でしたので、こういったケースでは、家事労働の補償をしてもらうべき事案です。
そのため、弁護士は資料もつけて保険会社に家事労働の補償をするように主張し、また、Xさんが交通事故で支障のあった家事について具体的に聞き取った上で、その事情も説明をしました。
それでも相手方の保険会社は、頑なに主婦休業損害の補償をしないとのことでしたので、示談交渉を打ち切り、訴訟を提起することにしました。
当初、Xさんとしても裁判は大変そうだからどうしようかと迷っておられましたが、弁護士の説明を聞いて、ご了解いただきました。
裁判では、通院した整形外科からカルテ開示を受けた上で、双方が主張を行いました。裁判になったため、相手方の保険会社にも弁護士がついてやり取りをしていました。
こちらは、Xさんの年収からすれば、主婦休業損害の対象であること、実際にも家事労働ができずに家族のサポートを受けていたことを具体的に主張しました。
しかしながら、相手方の主張は、事故の内容と通院状況からすれば、主婦休業損害は発生していないという抽象的な主張にとどまっていました。
そのため、裁判所からの和解案では、こちらの主張どおり主婦休業損害を認定した上で、60万円の提示がありました。
また、訴訟に至っていたこともあり、遅延損害金として10万円ほども加算してもらいました。
最終的なXさんの賠償額としては自賠責保険も含めると150万円となり、訴訟提起から和解まで半年ほどかかりましたが、Xさんも「ここまで補償してもらえるとは思っていませんでした。」とおっしゃるほど納得いく解決ができました。
解説
後遺障害等級を争う方法
自賠責保険で後遺障害が非該当になった、あるいは等級が認定されたが不当な等級として争う場合の不服申立手段としては、以下のものがあります。
- 自賠責保険に異議申立て
- 紛争処理機構という期間に申立て
- 裁判を提起する
それぞれメリットやデメリットがあり、事案に応じてどの手段を用いるべきか変わってきます。
兼業主婦の休業損害
Xさんのような兼業主婦の場合、裁判の基準とされている損害賠償額算定基準(通称「赤本」)では、賃金センサスの女性、学歴、年齢計の収入と、仕事による現実収入の高い方をもとに算出するとされています。
他方で、現実収入が一定程度あって、そちらの方の休業が全くないため、現実的な収入面では減収が発生していないような場合には、家事労働にもそれほど影響はなかったのではないかとして主婦休業損害が争いになるケースもあります。
今回のXさんは、上記のようなケースと異なり、現実にも仕事を休んで減収がある状態でした。
そのため、主婦休業損害が認められてしかるべき事案でした。
そのため、弁護士としても訴訟を提起した方がよいと判断し、実際にも60万円の休業損害を獲得することができました。
なお、補足ですが、1人暮らしで自分のための家事を行っている者は、家事従事者としての休業損害は認められていません。
また、男性家事従事者については、多くの下級審裁判例で、男性の平均賃金ではなく、女性の平均賃金が基礎とされています。
裁判について
弁護士に依頼した場合、訴状といった裁判の書面は弁護士が作成しますし、裁判の期日にも基本的には弁護士のみが出席します。
したがって、事案にもよりますが、裁判所に当事者の方が出席せずに解決することもあります。
今回のXさんも本人尋問の前に和解が成立したため、一度も裁判所には行かずに、弁護士のみの出席で終了しています。
また、弁護士の判断だけで裁判提起をしません。
依頼者の方と十分協議の上で、裁判を提起するかどうか判断します。