後遺症の種類
目次
外貌醜状
(1)外貌醜状障害
事故に遭い外傷を負った場合に、傷跡が残ることはよくあります。
そこで、後遺症外等級表においても事故により傷跡が残った場合の等級を定めています。
「外貌」とは、頭部、顔面部、頚部のように、上肢及び下肢以外で日常露出する部分のことです。
「著しい醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
・頭部は、手のひら大(指の部分は含みません)以上の瘢痕が残ること、又は、頭蓋骨の手のひら大以上の欠損。
・顔面部は、鶏卵大以上の瘢痕、又は、10円銅貨大以上の組織の陥没。
「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で人目につく程度以上のものをいいます。
単なる「醜状」は、原則として以下のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
・頭部では、鶏卵大面以上の瘢痕、又は、頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
・顔面部では、10円銅貨大以上の瘢痕、又は、長さ3センチメートル以上の瘢痕
・頚部では、鶏卵大面以上の瘢痕
※障害補償の対象となる外貌の醜状とは、人目につく程度以上のものであることが必要ですから、眉毛、頭髪等に隠れる部分については、醜状とは扱われません。
(2)上肢・下肢の醜状障害
「上肢の露出面」とは、上腕部、肩の付け根から指先のことを指します。
「下肢の露出面」は、大腿、足の付け根から足の背部までを指します。
後遺症外等級表には記載されていませんが、手のひらの3倍程度以上を超える瘢痕があれば、特に著しい醜状と判断され、12級相当が認定されます。
また、日常露出しない部位についても、胸部+腹部、背部+臀部の合計面積の4分の1以上の範囲に瘢痕を残すものは、14級が認定されることもあり、また、2分の1以上の瘢痕を残す場合には12級が認定されることもあります。
脊柱及びその他体幹骨の後遺症
(1)脊柱の障害
脊柱は、頚椎、胸椎、腰椎と仙骨、尾骨で構成されています。
脊柱の障害には、大きく変形障害と運動障害に分けられます。
①変形障害
変形障害の後遺障害等級は、その変形の程度に応じて等級に差が設けられています。
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、X線写真、CT画像、MRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合で、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
①2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。
「前方椎体高が著しく減少」したとは、椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であることをいいます。
②1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。
「前方椎体高が減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものをいいます。
「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは、X線写真、CT画像、MRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合で、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
①減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であり、後彎が生じているもの。
②コブ法による側彎度が50度以上であるもの
③環椎又は軸椎の変形・固定により、次のいずれかに該当するもの
a 60度以上の回旋位となっているもの
b 50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
c 側屈位となっており、X線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
「脊柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当する場合です。
①脊柱圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
②脊椎固定術が行われたもの
③3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頚部及び胸腰椎が強直したものをいいます。
①頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等があり、そのことがX線写真等によって確認できるもの
②頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
「脊柱に運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
①次のいずれかにより、頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
a頚椎又は胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
b頚椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
c項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
②頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの
(2)その他体幹骨の後遺障害
①変形障害
その他体幹骨とは、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨のことをいいます。
事故に遭い骨折した場合、きれい骨が癒合すればよいのですが、うまく癒合しない場合があります。
骨折時の骨のズレが元の位置に整復・矯正されていない場合や、固定が不十分で整復された骨片が後でズレてしまった場合には、骨が曲がったまま癒合してしまうことがあるのです。
このような変形治癒を起こすと、外観上変形が明らかになるだけでなく、周囲の血管や神経、筋、腱などを圧迫して、正常な機能を損なうこともあります。
鎖骨の骨折は特に変形治癒を起こしやすいです。
脊柱を除いた体幹骨の後遺障害等級は下記のとおりです。
「鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形障害を残すもの」とは、裸体になったとき、変形(欠損を含む)が明らかに分かる程度のものです。
したがって、レントゲン撮影によってはじめて発見しうるものは該当しません。
肋骨の変形は、その本数、程度、部位等に関係なく、肋骨全体を一括して1つの障害として取り扱われますので、変形した骨が2本以上あったとしても、1つの後遺障害として認定されることになります。
それに対して、鎖骨と肩甲骨は左右それぞれで分かれているので、左右別々の骨として取り扱われることとなります。
骨盤骨については、仙骨は含まれますが、尾骨は除いて取り扱われています。
脊柱やその他の体幹骨の障害で、系列を異にする2つ以上の障害が認められるときは、自賠法施行令第2条1項3号により併合し等級を認定することになります。
また、女性の場合、骨盤を骨折したことで適切な産道が維持できなくなり、自然分娩に支障をきたす可能性がある場合には、慰謝料の増額事由になることもあります。
上肢の後遺症
上肢とは、肩関節・ひじ関節・手首の3つの関節と手指を含めた部分を指します。
上肢の後遺障害としては、切断、骨折、脱臼、神経麻痺などを原因として、欠損障害、機能障害、変形障害などがあります。
(1)欠損障害
「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当する場合です。
・肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
・肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
・ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの
「上肢を手関節以上失ったもの」とは次のいずれかに該当する場合です。
・ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
・手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを分離したもの
まず、指の関節の呼び方についてご説明します。
・DIP 遠位指節間関節 ⇒ 第1関節
・PIP 近位指節間関節 ⇒ 第2間接
・IP 指節間関節 ⇒ 親指の中間部分の関節
・MP 中手指節間関節 ⇒ 指の付け根部分の関節
「手指を失ったもの」とは、親指はIP、その他の手指はPIP以上を失ったものとされており、具体的には以下の場合が該当します。
①手指を中手骨(指の根元から手首にかけての骨)又は基節骨(指の根元から第2関節までの骨)で切断したもの。
②PIP(親指はIP)において、基節骨と中節骨(第二関節から第1関節の骨)とを離断したもの。
「指骨を一部失ったもの」とは、1指骨の一部を失っていることがエックス線写真等により確認できるものです。
(2)機能障害
「上肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものを指します。
「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当する場合です。
(ⅰ)関節が強直したもの(肩関節については、肩甲上腕関節がゆ合し骨性強直していることがエックス線写真により確認できる場合も含まれます)
(ⅱ)関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの。(「これに近い状態」とは、他動では稼動するものの、自動運動では関節の可動域が健側(健康な側)の可動域角度の10パーセント程度以下となったものをいいます)
(ⅲ)人工関節・人口骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されていているもの。
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは次のいずれかに該当するものです。
(ⅰ)関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
(ⅱ)人工関節・人口骨頭をそう入置換した関節のうち、「関節の用を廃したもの」の(ⅲ)以外のもの
「関節の機能に性合を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものを指します。
「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は、MP若しくはPIP(親指はIP)に著しい運動障害を残すものをいいます。
具体的には以下の場合がこれに該当します。
①手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの。
②MP又はPIP(親指はIP)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されたもの。
③親指については、橈側回転又は掌側回転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているもの。
④手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも、「手指の用を廃したもの」に準じて扱われます。
「遠位指節間関節(DIP)」を屈伸することができないもの」とは、以下のような場合をいいます。
①遠位指節間関節(DIP)強直したもの。
②屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの。
以上のように、上肢、手指の後遺障害等級については、専門的な判断が必要となりますので、お困りの方は、専門の弁護士にご相談下さい。
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むちうち(頸椎捻挫・腰椎捻挫)
むちうちは、交通事故などに遭い、頭部に急激に外部から力が加わることで、ムチを振った時のようにS字に頚部が大きく動き、筋肉や靭帯、椎間板などを損傷してしまうことが原因となり生じます。
呼び方としては、むち打ち損傷、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群などとも言われています。
事故直後の急性期の症状としては、頚部痛や頚部不快感などがあります。
もっとも、受傷直後にただちに症状が現れない場合があるので注意が必要です。
2、3日後あるいはそれ以上の期間経過後に症状が現れることもあるのです。
急性期の症状は、長期化せずに、自然に寛解していき一般的には長期化せずに1ヶ月以内で治療が終了することも多いですが、症状が持続し慢性化する場合もあります。
慢性化した場合の主な症状は、頚部痛、頭痛、めまいが挙げられますが、それらの痛みは気圧や湿度の変化に影響され、日によって痛みの程度が異なる場合もあります。
また、他にも頭部・頚部のしびれ感、視力低下、視野狭窄、耳鳴り、吐き気、四肢のしびれ・痛みなどの症状が出る場合もあり、このような頚部の自律神経機能障害が出ている場合をバレ・リュ―症候群といいます。
慢性化した場合には、下記の後遺障害等級に認定される可能性があります。
裁判実務においては、12級に該当するのは、傷害の存在が医学的に証明できるものであることが要求されています。
ここでいう医学的証明とは、他覚的所見が存在することを意味しており、画像診断や神経学的所見などが認められる場合には、12級と認定される可能性があります。
また、14級に該当するのは、医学的に説明可能な傷害を残す所見があることが要求されています。
受傷の状況や症状、治療経過、臨床所見などから当該症状が事故による外傷であると説明することができる場合には、14級と認定される可能性があります。
むちうちは自覚症状のみであることが多く、適切な後遺障害等級の認定を受けるには専門家の弁護士のアドバイスが必要です。
むちうちでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
CRPS(RSD / 反射性交換神経性ジストロフィー)
CRPSとは
CRPSとは、Complex regional pain syndromeの略語で複合性局所疼痛症候群といいます。
交通事故により骨折や捻挫、打撲といった外傷を負ったことで、慢性的な痛みと浮腫、皮膚温の異常といった症状が出ることがあります。
CRPSは2つのタイプに分類されます。一つがRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)と呼ばれるもので(TypeⅠ)、もう一つがカウザルギー(TypeⅡ)です。両者の違いは、神経損傷があるかないかで、神経損傷がないものがRSD、神経損傷があるものがカウザルギーと分類されます。
このCRPS、特にRSDの特徴は、軽微な外傷の場合でも症状が出現する場合があるという点です。
これは交感神経の異常に基づいて出現する症状という点に由来しています。
すなわち、当初の外傷が軽微であっても交感神経の緊張により、神経伝達物質などは多く放出されます。
通常であれば一定期間の経過により交感神経は正常に戻るのですが、正常に戻らない場合、交感神経は緊張状態を継続するため、神経伝達物質が不必要に多く分泌されてしまいます。
CRPSの症状
交通事故により受傷した部位はもちろん、それ以外の部位にもズキズキとした痛み、灼熱痛が主な症状です。
被害者の方は、「ナイフのような鋭いもので刺されたような痛み」があるとおっしゃいます。
また、皮膚温や色調の変化や発汗異常も生じます。さらに、骨萎縮や関節拘縮も発生します。
カウザルギーの場合は、神経損傷を伴うため感覚低下の症状もあります。
CRPSと後遺障害
交通事故により、CRPSを発症した場合には、上記の項目に該当するかが問題となります。
場合によっては、局部に神経症状を残すものとして、14級9号の認定がなされるケースもあります。
CRPSの後遺障害等級認定のポイント
CRPSについては、症状を他覚的に証明することができるかという点が非常に重要になります。
まず、RSDについては、①関節拘縮、②骨萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性的な主要な3つの全ての症状が腱側(異常のない健康な部分)と比べて明らかに認められなければならないとされています。
また、カウザルギーについては、分類の観点から明らかなとおり、神経損傷が認められる必要があります。
その上で、疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び日内変動やその他の他覚的所見により、等級認定を行います。
その際、疼痛により労務や日常生活にどの程度の支障を来たすかによって上記のうち、どの等級に該当するかを決定しています。
本来、痛み=疼痛というのは、被害者の方にしかわからない、自覚症状が中心の症状であり、それをいかに裏付けられるかというのがCRPSの等級認定を考える上でポイントになってきます。
関連記事:よくある相談Q&A「CRPS(RSD)とは何?交通事故の後遺障害として認められる?」
脊髄損傷の後遺症
脊髄は、脳から脊椎の中を通って伸びている神経線維の束のことを指します。
脊髄は、脊椎の中で保護されているのですが、交通事故や高所からの転落等により強い外力が加わることで脊椎骨折、脱臼などが生じ、脊髄も損傷することが多いです。
脊髄損傷の後遺症の認定基準は、下記のとおりです。
以上のように、脊髄損傷の後遺障害等級の認定基準は抽象的であり、複雑な評価が関連するため、専門家の弁護士に相談することをお勧めします。
脊髄損傷でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
腰椎骨折をはじめとする脊柱骨折(圧迫骨折)
脊柱の障害
脊柱は、頚椎、胸椎、腰椎と仙骨、尾骨で構成されています。
脊柱の障害には、大きく変形障害と運動障害に分けられます。
(1)変形障害
変形障害の後遺障害等級は、その変形の程度に応じて等級に差が設けられています。
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、X線写真、CT画像、MRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合で、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
①2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。
「前方椎体高が著しく減少」したとは、椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であることをいいます。
②1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。
「前方椎体高が減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものをいいます。
「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは、X線写真、CT画像、MRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合で、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
①減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であり、後彎が生じているもの。
②コブ法による側彎度が50度以上であるもの
③環椎又は軸椎の変形・固定により、次のいずれかに該当するもの
a60度以上の回旋位となっているもの
b50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
c側屈位となっており、X線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
「脊柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当する場合です、
①脊柱圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
②脊椎固定術が行われたもの
③3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
(2)運動障害
「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頚部及び胸腰椎が強直したものをいいます。
①頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等があり、そのことがX線写真等によって確認できるもの
②頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
「脊柱に運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
①次のいずれかにより、頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
a頚椎又は胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
b頚椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
c項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
②頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの
下肢(股関節・膝・足首)の後遺症
下肢の欠損障害
下肢の欠損障害の認定の基準は下記のとおりです。
下肢の機能障害
下肢の機能障害の認定基準は下記のとおりです。
「下肢の用を全廃したもの」とは?
下肢の用を全廃したものとは、①下肢の3大関節の全てが完全に強直した場合、あるいは、②全ての関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合です。
強直とは、関節部の骨および軟骨の変形や癒着などが原因により関節の可動域が制限されることです。
「関節の用を廃したもの」とは?
関節の用を廃したものとは、①関節が強直した場合、②関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある場合、③人工関節・人口骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域の角度の2分の1以下に制限されている場合です。
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは?
関節の機能に著しい障害を残すものとは、①関節の可動域が健側の可動域の2分の1に制限されている場合、②関節に人工関節・人口骨頭をそう入置換した場合です。
「関節の機能に障害を残すもの」とは?
関節の機能に障害を残すものとは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されている場合です。
下肢の短縮障害
下肢の短縮障害は下記のとおりです。
計測にあたっては、上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを測定して健側と比較して算出されることが多いです。
下肢の奇形障害
下肢の機能障害の認定基準は下記のとおりです。
偽関節とは、骨折した部分の骨の癒合が起こらず異常な可動性がみられる状態です。
下肢の後遺症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
膝十字靭帯損傷
膝には、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4つの靭帯が存在します。
靭帯は骨と骨を結び付けている結合組織ですから、これらを損傷してしまうと関節が不安定になり、
正常可動域よりも可動域が大きくなったり、異常な方向に動くなどの症状が生じることがあり、
後遺障害等級(例えば8級7号、10級11号、12級7号)に該当する場合があります。
前十字靭帯損傷(ACL損傷)
膝は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨と腓骨)をつないでいる関節ですが、前十字靭帯は上下の骨が前後にずれるのを防ぐ働きをしています。
前十字靭帯を損傷する事故は、バイクや自転車などの二輪車を運転中の事故が多いです。
前十字靭帯が断裂した場合には、ブチッという音がなり、関節内は大量に出血し大きく腫れます。
前十字靭帯の損傷はラックスマンテストという検査をします。
膝を15~20°ほど屈曲させ、前方に引き出すという態様の検査ですが、前十字靭帯を損傷している場合、脛骨が異常に前方に引き出されます。
もっとも、ラックスマンテストのみでは、靭帯損傷の程度を知ることはできないので、ストレスXP撮影を実施することが重要です。
ストレスXP撮影は、脛骨を前方に引き出し、ストレス(圧力)をかけてレントゲン撮影をします。断裂がある場合には、脛骨が前方に引き出されます。その引き出された程度によって損傷の程度を知ることができるのです。
後十字靭帯損傷(PCL損傷)
後十靭帯損傷は、膝を強く打ちつけ場合に生じやすく、交通事故においては、ダッシュボードにひざを強く打ちつけた場合に発症する場合が多々あります。
前十字靭帯損傷の場合と比べ、痛みや機能障害の自覚は少ないことが多いです。
後十字靭帯損傷の場合も、ストレスXP撮影をすることで損傷の程度を明らかにすることが重要です。
内側側副靭帯損傷(MCL損傷)
内側側副靭帯損傷は、靭帯損傷の中で最も生じやすく、膝の外側から大きな衝撃が加わったときに発症します。
内側靭帯が断裂している場合、膝をまっすぐに伸ばした状態で脛骨を外側へ動かすと、膝がぐらつきます。
この場合も、ストレスXP撮影やMRIで損傷の程度を明らかにしておくことが重要です。
複合靭帯損傷
膝は、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4つの靭帯で支えられていますが、事故に遭い膝に大きな外力が集中した場合、複数の靭帯を損傷する場合があります。このことを複合靭帯損傷といいます。
複合靭帯損傷を発症した場合、予後は不良で重大な後遺障害が残存する可能性が高いです。
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外傷性てんかんの後遺症
外傷性てんかんは、頭蓋骨陥没骨折等で脳を損傷した場合に、発症することがあります。
症状としては、主にてんかん発作に伴うけいれんです。
また、突然意識を失ったり、記憶が飛んだりするなど意識障害が生じることもあります。
発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害を来たし、高度になると痴呆・人格崩壊に至ることもあります。
外傷性てんかんに係る等級の認定は発作の型、発作の回数等に着目し、以下の基準によることになります。
1ヶ月に2回以上の発作があるときには、医学的経験則上、てんかん発作のみが単独で存在することは想定されません。
通常は、脳挫傷があり、高度な高次脳機能障害を遺残する状態でてんかん発作を伴っていると考えられます。
したがって、高度の高次脳機能障害に係る第3級以上の認定基準により障害等級を認定することになります。
眼の後遺症
眼の後遺障害には、(1)眼球の障害、(2)眼瞼の障害があります。
以下、それぞれについてご説明します。
(1)眼球の障害
①視力に関する障害
失明・視力の低下による後遺障害等級は下記のとおりです。
失明の有無や、視力の低下の程度に応じて等級が定められています。
失明とは眼球を失った場合や、明暗が判断できない、または明暗がようやく区別できる程度の場合です。
矯正された視力が0.01未満の場合も失明として扱われます。
視力の検査は、万国式視力表で行います。
ここでの視力とは、裸眼の視力ではなく矯正視力を指します。
矯正視力とは、メガネやコンタクトレンズを使用した場合の視力です。
ただし、角膜損傷等によって、メガネによる強制ができず、コンタクトレンズに限り強制できる場合には、裸眼視力を基準として判断することになります。
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②眼の調節機能障害に関する障害
眼の調節機能障害による後遺障害等級は下記のとおりです。
人の眼には、対象を見る場合にピントを合わせる機能がありますが、その調整機能は水晶体という眼の中にある組織が担っています。
水晶体は、カメラでいうところの凸レンズの役割を果たしているのです。
測定には、アコモドポリレコーダーという測定装置を使用しますが、調節力が2分の1以下となったものが、後遺障害の対象となります。
もっとも、眼の調節力は加齢によっても失われますので、55歳以上の方については、等級の認定対象にはなりません。
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③眼の運動障害に関する障害
眼の運動障害による後遺障害等級は以下のとおりです。
斜視とは、片方の目は正しく目標とする方向を向いていますが、もう片方の目が内側や外側、あるいは上や下に向いている状態のことです。
複視とは、物が二重に見える状態のことです。
④眼の視野障害に関する障害
半盲症とは、視野経繊維が、視野経交叉またはそれより後方において侵された場合に生じます。
症状としては、注視点(見ているポイント)を境界に、両眼の視野の右半分または左半分が欠損するという症状です。
視野狭窄とは、視野周辺の狭窄であって、同心性狭窄と不規則狭窄があります。
同心性狭窄の場合は、視野の周辺部分から中心に向かって視野が狭くなっていきます。
不規則狭窄の場合は、視野が不規則に狭くなる状態をいいます。
視野変状は、半盲症や視野狭窄のほか、視野欠損や暗転が生じて視野に一部見えない部分が発生することをいいます。
(2)眼瞼(がんけん)の障害
①まぶたの欠損に関する障害
「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、普通にまぶたを閉じた場合に、角膜を完全に覆いきれない程度をいいます。
「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、普通にまぶたを閉じた場合に、角膜は完全に覆うことができるが、球結膜(白目)が露出している状態です。
「睫毛はげを残すもの」とは、まつげ縁(まつげが生えている周縁)の2分の1以上にわたってまつげのはげを残すものをいいます。
②まぶたの運動に関する障害
「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは、まぶたを閉じたときに完全に角膜を覆いきれない場合、あるいは、まぶたを開いたときに、瞳孔(眼球の中心)が完全に覆われている場合のことをいいます。
鼻の後遺症
鼻の後遺症については、後遺障害等級表上、鼻の欠損障害が定められていますが、鼻の欠損を伴わない機能障害であっても、その障害の程度に応じて相当の等級が認定されます。
(1)鼻の欠損
「鼻の欠損」とは、鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損が生じることです。
「機能に著しい障害」とは、嗅覚の脱失又は鼻呼吸が困難であることをいいます。
鼻の一部が欠損している場合でも、外貌醜状として、後遺症が等級認定される可能性があります。
外貌醜状は、第7級~第12級までの幅がありますが、外貌醜状が鼻の欠損以外にもある場合には、合わせて顔全体の外貌醜状を判断することになります。
(2)鼻の欠損を伴わない鼻の機能障害
嗅覚の測定に当たっては、T&Tオルファクトメータという基準嗅力検査により判断されます。
この検査で、平均嗅力喪失値の認知域値が5.6以上であれば、嗅覚脱失とされ、2.6~5.5の間であれば、嗅覚減退とされます。
嗅覚脱失に関しては、労働能力に直接影響を与えるものではないとして、労働能力の喪失を否定する裁判例もあります。
しかし、労働能力喪失の有無及び程度は、性別、年齢、減収の有無及び程度、嗅覚脱失・減退による職業への具体的な影響等の事情を総合的に考慮して決せられるとの考えから、等級どおりの労働能力喪失率を認めたものもあれば、等級以上の喪失率を認めたものもあります。
等級以上の喪失率を認めた例としては、料理店経営者で調理師として稼動していた59歳の男性について、嗅覚が素材の良否や完成した料理の風味いかんを見極めるなど、料理人の技術を発揮する上で極めて重要な感覚の一つである評価し、認定された自賠責等級12級(自賠責基準では喪失率14%)よりも高い喪失率20%が認定されています(労働能力喪失期間10年間)。
このように、嗅覚脱失・減退の労働能力喪失は裁判例でも判断が分かれていますから、お悩みの方は、専門家の弁護士に相談されることをお勧めします。
耳に関する後遺症
耳の後遺症には、(1)聴力に関するもの障害(2)耳殻の欠損障害、(3)耳鳴り、耳漏といったものがあります。
以下、それぞれご説明します。
(1)聴力に関する障害
聴力に関する後遺症外等級は下記のとおりです。
<両耳の聴力>
<1耳の聴力>
聴力検査には、純音聴力検査と語音聴力検査があります。
純音聴力検査は、どの程度音が聞こえているかを測る検査です。
語音聴力検査は、言葉をどの程度聞き取れているかを測る検査です。
基本的にこの二つの検査結果を踏まえて、後遺障害等級の認定がされます。
もっとも、これら2つの検査方法は、被害者の自発的な応答で判定されることから、結果について不審な点があれば、別途他覚的聴力検査を求められる場合があります。
このような場合の検査としては、ABRやSRという検査がされます。
ABRは、音の刺激に対する脳の反応を読み取って測定します。
SRは、中耳のあぶみ骨にある耳小骨筋が音に反応して収縮することを感知して測定します。
(2)耳殻の欠損
「耳殻の大部分が欠損した」とは、耳介の軟骨部の2分の1以上を欠損した場合をいいます。
両耳について耳介の欠損障害が生じた場合には、1耳ごとに等級を定めて併合して認定されることになります。
(3)耳鳴り・耳漏
①耳鳴り
耳鳴りに係る検査とは、ピッチ・マッチ検査及びラウドネス・バランス検査をいい、これらの検査によって耳鳴りが存在すると医学的に評価できる場合には著しい耳鳴りがあるものと評価されます。
ピッチ・マッチ検査とは、異なる23種類の音を聞いて、耳鳴りがどの音に近いかを調べて耳鳴りの周波数を検査するものです。
ラウドネス・バランス検査とは、ピッチ・マッチテストで特定された耳鳴りの周波数をつかって、耳鳴りと同じ大きさの音量を探って、耳鳴りの大きさを検査するものです。
②耳漏
耳漏とは、事故による受傷で鼓膜に穴が開き、外耳道から病的分泌液が流れ出す状況のことです。
後遺症外等級認定には、30dB以上の難聴が伴っていることが必要ですから、聴力障害の場合と同様に聴力検査も必要となります。
口の後遺症
口の後遺症には、咀嚼の機能障害、言語の機能障害、歯牙の障害、味覚の脱失・味覚の減退などがあります。
以下、それぞれについてご説明します。
(1)咀嚼の機能障害、言語の機能障害
①咀嚼機能について
「咀嚼機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できない場合です。
「咀嚼機能に著しい障害を残すもの」とは、お粥又はそれに準じる程度の飲食物以外は摂取できない場合です。
「咀嚼機能に障害を残すもの」とは、固形食物の中に咀嚼できないものがあること又は咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合です。
ここでの「固形食物の中に咀嚼できないものがあること又は咀嚼が十分にできないもの」の例としては、ごはん、煮魚、ハム等は咀嚼できるが、たくあん、らっきょう、ピーナッツ等の一定の固さの食物中に咀嚼できないものがあること又はその咀嚼が十分にできないものがある場合です。
②言語機能について
語音は、あいうえおの母音と、それ以外の子音とに区別されます。
子音はさらに以下の4種に区別されます。
口唇音(こうしんおん)
⇒ま行音、ぱ行音、わ行音、ふ
歯舌音(しぜつおん)
な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ
口蓋音(こうがいおん)
か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
喉頭音(こうとうおん)
は行音
「言語の機能を廃したもの」とは、上記の4種の語音のうち、3種以上の発音が不能になった場合です。
「言語の機能に著しい障害を残す」とは、4種の語音のうち、2種が発音不能になった状況または綴音機能に障害があり、言語のみでは意思を疎通させることができない状況です。
「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音不能のものです。
声帯麻痺による著しいかすれ声は、12級相当の認定となります。
(2)歯牙の障害
「歯科補綴を加えたもの」とは、現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴のことをいいます。
(3)味覚の脱失・味覚の減退
「味覚を脱失したもの」とは、甘味、塩味、酸味、苦味の4味質の全てが認知できない場合です。
「味覚が減退したもの」とは、4味質のうち1質以上を認知できない場合です。
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