交通事故で遅延損害金は請求できる?計算方法は?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故で裁判を起こした場合には、遅延損害金を請求することができます。

交通事故の賠償は示談交渉で解決することも多いですが、相手方保険会社の主張が不当である場合には、裁判をして解決することも検討しなければなりません。

裁判をした方が賠償金額が高額になるかどうかを検討するにあたっては、遅延損害金も踏まえて検討することになります。

この記事では、裁判をした場合の遅延損害金について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 遅延損害金が認められる範囲
  • 遅延損害金の計算方法

 

遅延損害金はなぜ認められる?

法律的には、加害者の損害賠償責任は交通事故が発生した時点で発生します。

実際に賠償金を受け取るのは、事故発生よりも先になるため、交通事故が発生してから実際に補償がなされるまでの間には、タイムラグが生じてしまうことになります。

このタイムラグを埋めるものとして、遅延損害金が認められています。

イメージとしては、お金を借りる際に発生する利息と同じようなものと考えていただければよいと思います。

 

 

遅延損害金の請求

示談交渉やADRを利用している段階では遅延損害金を支払ってもらうことはできません。

ADRとは、裁判所以外の第三者機関が関与して紛争を解決してもらう方法で、交通事故では、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどがあります。

遅延損害金を支払ってもらうには、裁判をするしかないのです。



 

 

遅延損害金の計算方法は?

遅延損害金は、以下の計算式で計算されます。

賠償額 × 法定利率 × 遅滞日数 ÷ 365日

法定利率

法定利率は、2020年3月31日以前は年5%でしたが、民法改正により2020年4月1日以降については、年3%に引き下げられました。

利率の使い分けは以下のとおりです。

【交通事故の発生日が2020年4月1日以降の場合】

年3%

【交通事故の発生日が2020年3月31日以前の場合】

年5%

 

遅滞日数

遅滞日数は、遅滞の起算日から支払済までの日数をカウントします。

遅滞の起算日は、交通事故の発生した日です。

交通事故による損害賠償債務は、事故が発生したと同時に発生するものと考えられています。

事故に遭った後に、治療費や休業損害などが発生することになるので少し違和感を感じられるかもしれませんが、不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の発生と同時に遅滞に陥ると考えられているので、交通事故が発生した日から遅滞しているということになるのです。

したがって、遅延損害金の起算日は、事故日ということになるのです。

支払済の時期に関しては、判決確定後、相手方の弁護士あるいは保険会社と調整することになります。

相手方弁護士の方から、「◯年◯月◯日までに支払います。その日までの遅延損害金◯◯万円ですので、その金額を支払います。」といったような内容の書面が届き、それが正しい計算になっているか確認することになります。

 

具体的な計算例

以下の条件では、30万1369円が遅延損害金の金額となります。

条件
賠償額:400万円
事故日:2020年3月1日
支払時期:2021年9月1日

計算式
400万円 × 5% × 550日 ÷ 365日 = 30万1369円

 

和解で解決する場合の遅延損害金は?

裁判をして、判決が出れば遅延損害金は当然に請求できます。

もっとも、裁判は全て判決で終わるわけではありません。

裁判が進み、被害者側と加害者側で言い分が出尽くした段階で、裁判所から和解の提案があります。

この提案で双方が納得する場合には、判決まで進むことなく裁判は終了します。

裁判官が出す和解案は、遅延損害金も一定程度考慮した金額になっていることが多いです。

裁判官によっては、ストレートに遅延損害金◯◯円として計上されることもありますが、弁護士費用と同様に「調整金」として加味されている事が多いです。

和解は、お互いに譲歩して合意するものなので、遅延損害金も満額ではなく、一定程度割り引いた金額になることが多いです。

 

 

裁判をした場合には弁護士費用も請求できる

弁護士費用も示談交渉やADRの段階では、請求することはできませんが、裁判をした場合には請求することができます。

弁護士費用が認められる範囲は、総損害額から既払金を控除した金額の10%が認められます。

 

 

まとめ

弁護士費用や遅延損害金を請求するには、裁判をすることが必須です。

具体的にどの程度の弁護士費用と遅延損害金が回収できるかの見通しは、専門の弁護士でないと判断するのは難しいです。

裁判をご検討されている方は、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

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