入院中の日用雑貨は賠償してもらえる?【弁護士が解説】

執筆者:弁護士 西村裕一 (弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士)

入院雑費についての質問です。

入院中に必要な日用雑貨を購入したのですが、これらは賠償してもらえないのでしょうか?

弁護士の回答

入院の際、治療費以外にもティッシュや飲み物といった物品を購入するために支出をすることがあります。

こうした費用については、入院雑費という費目で処理されるのが通常です。

入院雑費は、実務上入院日数に応じて一定額を賠償してもらうことが認められています。

入院雑費とは

被害者の入院中には治療費以外にも様々な費用がかかります。

入院中に支出した、以下のようなさまざまな費用も損害として認められます。

日用品雑貨費

パジャマなどの衣類、寝具、洗面用具、ティッシュ、文房具、食器などの日用品雑貨購入費用です。

通信費

通信費とは、電話代、切手代、電報代等の費用です。

文化費

文化費とは、新聞、雑誌の購入費、病院内でのテレビカード購入費やテレビ・ラジオの賃貸料等の費用です。

 

入院雑費の請求について

入院雑費は、それぞれの基準によって認められる金額が異なります。

自賠責保険の基準

1日の入院につき、1,100円が認められます。

裁判基準(赤本基準、弁護士基準)

入院1日当たり、1,500円が認められます。

細かいですが裁判基準と自賠責基準では1日当たり400円の差があります。

定額で認める理由

入院雑費は個々の多くの出費が少額であること、個別に出費の相当性・必要性を考慮することはとても煩雑で実益に乏しいため、定額化されています。

したがって、入院雑費の請求の際、領収書の添付は不要な場合がほとんどです。

もっとも、雑費として1日1,500円では賄えないような事情がある場合には、そうした事情を示す証拠と出費の金額がわかる証拠を残しておく必要があるでしょう。

弁護士が交渉をする場合には、裁判基準である1日1,500円を前提として請求を行います。

また、それ以上の雑費を要している場合には、その根拠となる資料とともに請求を行います。

 

 

将来の雑費

重度の後遺症が残った被害者の将来の雑費について、健常者が日常生活に必要とされている費用に含まれていない費用であると認められることと、将来にわたって雑費代として支出する可能性が高いと認められるとき、中間利息を控除した上で、損害として請求できます。

裁判例で認められた将来の雑費として、以下の品目があります。

判例

大阪地判 H20.6.30
紙おむつ代・外出用の生理用品代などの将来の衛生費を平均余命までの購入費用を認めた事例

東京地判 H17.10.27
人工導尿のためのカテーテル、ゴム手袋等の用具等を認めた事例

東京地判 H16.5.31
食事用のエプロン、ミキサー1台、歯磨き用の吸いのみ、口腔洗浄時の汚水受けとしてのガーグルベースなどを認めた事例

大阪地判 H22.5.12
人工肛門ケア用品としてパウチ、洗浄剤、不織布テープ、皮膚保護剤、剥離剤、ガーゼ、装具などを平均余命までの購入費用を認めた事例

こうした将来の雑費まで認められるためには、医師の診断書や意見書などにより、客観的な証明が必要になります。

ティッシュやパジャマといった日用品は将来雑費の対象になる?

入院雑費と異なり、ティッシュやパジャマといった日用品は、交通事故に遭わなくても支出が必要になりますので、このような費用については補償の対象外と考えられます。

 

 

将来の雑費の計算方法

具体例 1日1,000円の雑費を請求する場合

年齢:50歳男性
平均余命:32年(平成30年の簡易生命表)


将来の雑費は、1,000円 × 365日 × 15.8207(平均余命に対応するライプニッツ係数)= 576万7985円 となります。

1日単価としてどの程度の金額が妥当であるかは、各個別の事案に応じて、具体的に検討する必要があります。

 

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