休業損害と逸失利益の違いは?どちらも請求できる?【弁護士が解説】
休業損害と逸失利益は、どちらも収入の減少に対する補償という点では同じですが、休業損害が現在の補償を求めるものであるのに対し、逸失利益は将来の部分の補償を求めるものであるという違いがあります。
休業損害は現実に生じた収入の減少であるのに対し、逸失利益は将来予想される収入減少であり、「フィクション」が入る点で異なるといえます。
そのため、休業損害を請求しつつ、逸失利益を請求するというようにどちらも請求することは可能です。
休業損害とは
交通事故によるけがのため、仕事を休んだり、時間を短くして勤務するなど、事故前よりも不十分な稼働状況を強いられたことを理由とする収入減少をいいます。
例えば、1か月30万円の給料を受け取っている方が会社を1か月休んだ場合、会社からは給料を受け取ることができず、その月の給料はなし(0円)になります。
このとき、仕事をしていれば受け取れたであろう30万円が休業損害ということです。
つまり、休業損害は現実の収入減少がある場合に発生するのが原則です。
休業損害について、詳しくはこちらをご覧ください。
減収がなくても休業損害が認められるケースはこちらをご覧ください。
逸失利益とは
交通事故によるけがの影響で、将来受け取れたであろう収入にマイナスの影響が生じることに対しての損害のことをいいます。
この逸失利益は、後遺障害が認定された場合に補償を求めることができます。
後遺障害が残るということは、その後の仕事や家事、日常生活にも影響を与えるものと考えるのが通常です。
そうすると、後遺障害の影響は、将来的な収入の減少という形で具体化することが想定されます。
例えば、交通事故によって、両足を骨折し、車いすでの生活となった場合、建設業といった高所で命綱をつけて行うような仕事を行うことはできなくなりますので、もし、被害者が建設業に従事していた場合、それまで勤めていた仕事は退職せざるを得なくなりますし、その後も生涯にわたって、できる仕事は制限されることになります。
このように、交通事故がなかった場合に得られたであろう収入が失われることの補償が逸失利益となるのです。
休業損害と逸失利益の関係性
ここまでの解説から、休業損害と逸失利益は、収入の減少に関係する損害であるという共通点があることがわかります。
他方で、休業損害が現実的な収入の減少を対象とするのに対して、逸失利益は将来的な収入の減少(可能性)を対象としているという点に違いがあります。
つまり、請求の対象となる時点が異なるということです。
そのため、休業損害を請求し、なおかつ、逸失利益を請求するということは可能ということです。
また、休業損害は発生しないものの、将来的な収入減少が起こる可能性があるため、逸失利益のみ請求するという事例も出てきます。
具体的には、未成年者や大学生といった場合です。
小学生は交通事故の時点では、仕事をしていないため現実的な収入の減少はありません。
しかしながら、後遺障害が原因で大人になったときに事故がなかったときと比べて収入が少なくなるという可能性があるのです。
このように、休業損害と逸失利益では、対象としている時点が異なるわけですが、両者を分ける基準時点というのがあります。
それが、「症状固定」です。
症状固定とは
治療を一定期間継続したうえで、これ以上治療を行っても症状の改善が見られない状態のことです。
交通事故の損害は、症状固定によって確定します。
例えば、交通事故で手指を欠損してしまった場合、現代の医学では欠損した部分をすぐに縫合できなければ、元どおりの指を形成することはできず、シリコンなどの人工指を上から装着することになります。
このように、治療が一生涯続くというのではなく、どこかで「目処」がつきます。
この「目処」のことが症状固定ということになります。
症状固定は医学的な問題ですので、判断するのは原則として主治医の先生ということになります。
症状固定について、詳しくはこちらをご覧ください。
休業損害と逸失利益を請求する場合のポイント
このように休業損害と逸失利益は、似ている点もありますが、症状固定という時点を軸として、休業損害(現在)と逸失利益(将来)というように分かれています。
したがって、交通事故の被害者が保険会社に適切な補償を受けるためには、両者の違いをしっかりと理解しておくことが必要です。
その上で、気をつけるべきポイントがあります。
それは、自分の置かれている状況で、妥当な休業損害、逸失利益の金額を正確に把握するのは非常に難しいということです。
交通事故は人生で1度あるかどうかの出来事です。
交通事故に関する知識はなくて当然です。
休業損害も逸失利益も基本的な考え方と算定方法が定まっています。
休業損害や逸失利益は収入に対する補償ということから、被害者の方の生活にも直結する重要なものです。
知識がないことを理由に不十分な補償しか受け取ることができなかったということにならないようにするには、やはり交通事故を専門とする弁護士に相談、依頼し、サポートを受けることが必要です。
逸失利益の具体的な計算方法はこちらをご覧ください。