交通事故で骨折し偽関節に。後遺障害はどうなる?
交通事故で骨折しました。
骨のくっつき方が悪く、医師より偽関節になると言われました。
後遺障害に認定されますか?
偽関節とは、骨折した部分がうまくくっつかず、本来関節ではない部分が関節のようになってしまうことをいいます。
そのため、偽関節は、癒合不全と同じ意味で使われています。
偽関節・癒合不全の後遺障害は、上肢は7級9号、8級8号、下肢は7級10号、8級9号に該当する可能性があります。
偽関節とは
偽関節とは、骨折した骨が再生する過程で止まってしまい、骨がうまく癒合せず、本来つながっている部分がきれいにくっつかず、関節のようになってしまう状態をいいます。
そのため、偽関節は癒合不全ともいいます。
文字どおり、ニセの関節ができてしまうということで、偽関節と呼ばれます。
発生原因
偽関節は、骨折した場所が安定しない箇所である、骨の血行の流れが悪いなどの理由から発生します。
例えば、股関節の部分である大腿骨骨頭骨折のように、骨折によって骨頭部と骨の動脈が切断され、血行の流れが悪くなり、骨が癒合に時間がかかり、または癒合しないため偽関節になる、といった具合です。
また、骨折のずれ(転移)が大きい場合には、手術を行って、もとの位置で骨がくっつくように整復を行いますが、それでもずれたままで骨がくっついてしまう可能性もあり、これが偽関節の原因になり得ます。
判断される期間
骨折から6か月近く経過して、骨折した部分にずれが生じていることが明らかな場合には、偽関節と考えられます。
手術をしたケースでは6か月以上の期間が必要なこともあります。
偽関節(癒合不全)の対象となる骨
偽関節(癒合不全)の対象となる骨は、基本的には長管骨と呼ばれる骨です。
- 上肢は上腕骨、前腕の橈骨、尺骨
- 下肢は大腿骨、腓骨、脛骨
このように、上半身、下半身ともに3本の骨が対象となっています。
偽関節になるとどうなる?後遺症は?
交通事故により骨折して、偽関節になってしまうと、本来関節でないところが関節のようになってしまいますので、その場所が不安定になってしまいます。
そのため、偽関節が残ってしまった部位の運動に支障が生じるという後遺症が残るリスクがあります。
偽関節と後遺障害
偽関節による後遺症が残った場合、医師に偽関節と指摘された場合には、自賠責保険の後遺障害の申請を検討しなければなりません。
後遺障害について詳しくはこちらをご覧ください。
以下では、偽関節に対して、後遺障害の等級基準がどのように設定されているかについてみていきます。
上肢の等級
上肢長管骨の偽関節は、後遺障害等級7級9号、もしくは8級8号に該当します。
7級9号 「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」
「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、具体的には、常に硬性補装具を必要とし、
- 上腕骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 橈骨および尺骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
この等級に該当するためには、硬性補装具を常時使用しているケースでなければなりません。
8級8号 「偽関節を残すもの」
「偽関節を残す」(8級8号)ものとは、下記のいずれかに該当するものです。
- 上腕骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 橈骨および尺骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの
7級9号、8級8号のいずれの要件にも該当しない場合でも、変形が残っていると判断できれば、12級8号の「長管骨に変形を残すもの」が認定される可能性があります。
ただし、いずれの後遺障害についても、認定されるためには、レントゲン画像で癒合不全が明らかに確認できることが前提となります。
下肢の等級
下肢の長管骨の偽関節は、後遺障害等級7級10号、8級9号に該当します。
等級自体は、上肢と同じです。
7級10号 「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」
具体的には、常に硬性補装具を必要とし、
- 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 脛骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
上肢の場合と同様に、硬性補装具を常時使用しているケースである必要があります。
8級9号 「偽関節を残すもの」
「偽関節を残すもの」(8級9号)とは、下記のいずれかに該当するものです。
- 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 脛骨及び腓骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 脛骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
上肢と同じく、7級10号、8級9号に該当しないものの、変形が残っている場合には、12級8号の「長管骨に変形を残すもの」が認定されることがあります。
一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
交通事故で骨折と言われたら
偽関節は、基本的に骨折することで起こる症状です。
したがって、交通事故により骨折していると医師から診断された場合、以下の点がポイントになってきます。
定期的にレントゲン検査を受ける
交通事故で骨折することはよくあります。このとき、骨折の状態を確認するためには、レントゲン検査をきちんと受けることが必要です。
骨折のズレがそれほど大きくない場合では偽関節の可能性はそれほど大きくないですが、ズレが大きい場合には修復するのが難しくなります。特に、粉砕骨折のような場合には、骨片を取り除いた上で、整復しなければなりません。
したがって、交通事故の直後にのみ、レントゲン検査を受けただけでは、骨の経過を把握することができません。定期的にレントゲン検査を受けて、主治医からしっかりと被害者の骨の状態を確認しておくことが必要です。
日常生活への支障を保険会社にしっかりと伝える
偽関節はいわゆる変形障害といわれる障害です。
この変形障害は、後遺障害と認定されても、どのように日常生活や仕事に影響するかという点が保険会社と争いになるケースが多くなります。
したがって、被害者の方は日常生活においてどのような動作で支障があるかどうかをメモなどにまとめて整理をしておく必要があります。
特に12級8号の場合には、硬性補装具を使用しないため、第三者が被害者の方の支障を正確に把握するのが難しくなります。
偽関節に対する後遺症、後遺障害の補償を適切に受けるためには、専門家である弁護士のサポートを受けて、保険会社と示談交渉を行うということも大切になってきます。
骨折の後遺症について詳しくはこちらをご覧ください。