足首骨折による後遺症のポイント|弁護士が解説
交通事故で足首を骨折した場合、動かせる範囲が狭まる可動域制限や骨折による痛みといった後遺症が残ることがあります。
この場合、後遺障害が認定される可能性もあります。
目次
足首骨折とは
足首骨折とは、足首のくるぶしの部分の骨が折れることをいいます。
下半身の骨折の中では比較的起こりやすい骨折とされています。
参考:足関節骨折(足首のくるぶしの骨折)|一般社団法人日本骨折治療学会
足首の周辺には靭帯があり、足首骨折とあわせて靭帯も一緒に伸びたりして損傷することがあります。
そのため、足首が不安定になることもあります。
足首骨折の症状や日常生活への影響
足首骨折のけがをすると、折れた部分が腫れたり、痛みが出たりします。
そのため、普通に歩くことは難しいことが多いです。
松葉杖を使用して、しばらくは体重をかけないようにして過ごします。
腫れは時間の経過とともに次第に収まってくるのが一般的ですが、足首は足関節の動きに関係する部分ですので、骨折による骨のズレが大きかったり、関節の部分に近かったりすると、足が思うように動かせないという症状が出てしまいます。
歩けないといったことも起こるため当然日常生活に支障をきたします。
しばらく仕事を休まなければならないということもあるでしょう。
足首骨折の原因
交通事故で足首骨折のけがをするのは、歩行者や自転車で車にひかれてしまった場合やバイクで転倒してしまった場合に起こりやすくなります。
転倒する際に、足首をひねる形になってしまい、その状態で体重がかかってしまうため骨折してしまうのです。
また、車に乗っていて後ろから追突された場合に、衝撃に対して、踏ん張った際に足首の部分に負荷がかかり骨折をしてしまうこともあります。
いずれにしても、交通事故のけがの中でも足首骨折というのは比較的起こりやすいけがであるといえます。
足首骨折の後遺障害認定の特徴と注意点
足首骨折のけがをして、ギプス固定などをして、その後にリハビリを行っても足首をうまく動かせないといった可動域制限が残ってしまうこともあります。
また、治療をしても骨折した部分の痛みが取れないということもあります。
このように、交通事故による足首の骨折では、運動障害や痛みの後遺症が残ることがあります。
また、足関節が不安定になり、足首がぐらぐらするといった後遺症が残ることもあります。
このように交通事故により治療を行っても症状が残ってしまうことがあります。
こうした不具合が残ってしまうことを後遺症といいます。
後遺症が残れば、被害者の方としては補償を求めたいと思うのが当然ですが、交通事故の賠償実務においては、後遺症のすべてが補償の対象となっているわけではありません。
後遺症の補償を求めるには、自賠責保険の後遺障害の認定を受けなければなりません。
後遺障害とは、医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態をいい、労働能力の喪失を伴うものをいいます。
この後遺障害については、あらかじめ1級から14級まで、具体的な基準が設定されています。
したがって、後遺症 > 後遺障害の関係になり、後遺症を補償してもらうためには、基準にのっとって後遺障害の認定を受けなければなりません。
それでは、足首の後遺障害はどのようになっているのでしょうか。
足首骨折による後遺障害には、主に以下の2つが考えられます。
(1)機能障害(運動障害)
足首を骨折すると、足関節の動きに影響を及ぼす可能性があります。
こうした動きに関しては、機能障害として、以下の等級の後遺障害が設定されています。
等級 | 後遺障害の基準 |
---|---|
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
参考:自賠責保険(共済)における後遺障害の等級と保険金額|一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
- 12級7号:骨折していない足に比べて4分の3しか動かせない場合(4分の1以上の可動域制限が生じている場合)に該当します。
- 10級11号:骨折していない足に比べて半分しか動かせない場合(2分の1以上の可動域制限が生じている場合)に該当します。
- 8級7号:ほとんど足首が動かせない場合にはこの8級7号に該当する可能性があります。
なお、12級7号より下の後遺障害は用意されていませんので、可動域制限が4分の1以上に至っていない場合には、後遺障害は認定されず、非該当ということになります。
足首の運動は、屈曲(底屈、足を伸ばす方向へ動かす動き)と伸展(背屈、足の指を体の方向へ動かす動き)があります。
参考可動域は、それぞれ屈曲45度、伸展20度とされています。
以下に、具体例をご紹介いたします。
具体例① 屈曲で5度の可動域制限がある場合
屈曲で5度の可動域制限は、45度 × 4分の1 = 11.25(可動域は5度単位で測定するので、15度)よりも制限がないことになりますので、後遺障害の認定はされないということになります。
5度の可動域制限という後遺症はあるけれども、自賠責保険で設けられている後遺障害の基準は満たさないということです。
具体例② 屈曲で25度の可動域制限がある場合
45度 × 2分の1 = 22.5(可動域は5度単位なので、25度)となり、半分しか動かせない状態になりますので、このケースでは10級11号に該当するということになります。
(2)神経障害
足首を骨折すると、骨折した部分に痛みが残ってしまうことがあります。
こうした痛みについて、自賠責保険では以下の等級の後遺障害が用意されています。
等級 | 後遺障害の基準 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
参考:自賠責保険(共済)における後遺障害の等級と保険金額|一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
骨折した部分に痛みが残るというのは十分に起こり得るので、痛みが残った場合には神経障害が認定される可能性があります。
12級13号については、骨折した部分がうまくくっついていないことがレントゲンやCT画像で確認できる場合や、骨折により足関節にガタガタな部分が確認できる場合に認定されることがあります。
(3)足首の不安定さ
先ほど解説したとおり、足首の周辺には靭帯があり、足首骨折のけがを負うと、靭帯も一緒に損傷することがあります。
このとき、治療を行っても緩んだ靭帯が回復せず、足首の不安定さが後遺症として残ることがあります。
この後遺症について、自賠責保険では、可動域が狭まるという運動障害とは別に機能障害として、後遺障害に該当する可能性があります。
等級 | 後遺障害の基準 |
---|---|
8級 | 常に硬性補装具を必要とするもの |
10級 | 時々硬性補装具を必要とするもの |
12級 | 重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの |
足首骨折後にしびれがある場合、後遺障害は認められる?
足首骨折によるけがをした後、治療をしても足首にしびれが残ることがあります。
このときに、後遺障害が認められるかどうかですが、しびれも神経障害として評価されることになっています。
したがって、足首骨折後にしびれがある場合には、14級か12級の後遺障害が認められる可能性があります。
認定されるケースの多くは14級になるケースが多いかと思います。
足首骨折後に痛みがある場合、後遺障害は認められる?
先ほど解説したとおり、足首骨折後に痛みが残ることがあります。
こうした痛みについては、しびれと同じように神経症状として、後遺障害の認定対象になっています。
他方で、「違和感」というのは、後遺障害にはならないとされています。
足首骨折の慰謝料などの賠償金
交通事故で足首骨折のけがを負った場合に、慰謝料などの賠償金はどの程度になるでしょうか。
以下では主な賠償項目と相場を解説していきます。
休業損害
足首骨折で歩けなくなったり、松葉杖で生活する場合、その期間、仕事や家事が全くできないという可能性があります。
仕事を休めば当然給料に影響してきます。
このように、交通事故で仕事を休んで収入が減少したり、有給休暇を使用せざるを得なかった場合の補償が休業損害です。
休業損害は、1日あたりの収入額 × 休業した日数で計算することになります。
慰謝料
慰謝料には、大きく分けて通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つがあります。
このうち、後遺障害慰謝料については、後遺障害が認定されなければ補償されません。
まず、通院慰謝料についてですが、交通事故により足首骨折のけがをして、治療をした期間に応じて、慰謝料の金額が変わってきます。
例えば、入院なしで、通院を半年ほど行った場合、自賠責保険の基準では77万4000円、弁護士基準では116万円となります。
骨折の程度が大きく、足首にボルトを入れる手術をしたり、歩けずに入院をした場合には、通院だけの慰謝料の場合に比べて、慰謝料も高くなっていきます。
次に、後遺障害慰謝料については、足首骨折の後遺症により認定される後遺障害の等級に応じて金額は変わります。
例えば、足首骨折により動かせる範囲が狭まり、機能障害で12級が認定された場合、後遺障害慰謝料の目安は自賠責保険の基準では94万円、弁護士基準では290万円となります。
後遺障害慰謝料については、認定される等級が重くなるのに応じて、その慰謝料の相場も高くなっていきます。
自賠責保険での慰謝料 | 弁護士基準での慰謝料 | |
---|---|---|
8級7号 | 331万円 | 830万円 |
10級11号 | 190万円 | 550万円 |
12級7号 | 94万円 | 290万円 |
自賠責保険での慰謝料 | 弁護士基準での慰謝料 | |
---|---|---|
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
逸失利益
また、足首骨折による後遺症が残った場合の賠償項目としては、逸失利益というものもあります。
この逸失利益についても、後遺障害が認定された場合に補償される項目になります。
逸失利益というのは、交通事故による後遺症によって、将来得られたはずの収入が減ってしまうことに対する補償をいいます。
足首骨折による後遺障害の場合、足首の痛みやしびれで仕事に影響が出たり、運動障害により、足をうまく動かすことができずに、立ち仕事や営業活動などに支障をきたすことがあります。
このような将来の収入に対する補償が逸失利益で、慰謝料とは別個に算出されます。
具体例 足首の機能障害で12級の場合
事故の前年の年収 × 14% × 67歳までのライプニッツ係数
というのが逸失利益の一つの目安ということになります。
もちろん、あくまで目安ですので、年収をどのように算定すべきか、年数を何年にして計算するかというのは具体的なケースによって変わってきますし、保険会社との間で争点になることもあります。
そのため、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談すべきでしょう。
慰謝料や逸失利益の目安が知りたいという方は弊所のシミュレーターも是非ご活用してみてください。
足首骨折で適切な賠償金を得る4つのポイント
後遺障害診断書をしっかり作成してもらう
これまで解説してきましたが、足首の後遺症を後遺障害として認定してもらうためには、後遺障害の申請手続きをしなければなりません。
後遺障害が認定されなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益といった補償は得られません。
後遺障害の申請手続きにあたっては、医師が作成する後遺障害診断書が必要になります。
そのため、一定期間治療をした上で、それでも症状が残っている場合には、主治医にお願いして後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
可動域検査をはじめ必要な検査をしっかりと受ける
足首の後遺症のうち、足首の動かせる範囲が狭くなったという可動域制限が残ってしまった場合には、どの程度の可動域制限が残っているかによって、後遺障害が認定されるかどうか、認定されるとして、どの等級の後遺障害が認定されるかが変わってきます。
したがって、可動域検査は非常に重要になってきます。
後遺障害診断書を作成してもらう段階で、きちんと医師や理学療法士の方に角度計を用いて測定してもらうことが必要です。
また、足首の不安定さに関する後遺障害については、等級が認定されるためには、
- MRIなどで靭帯の損傷が確認できること
- ストレスレントゲンという検査を受けること
が必要になります。
このことから、MRI検査やストレスレントゲン検査を受けなければならないことがわかります。
このように、後遺障害の申請に当たっては、必要な検査というのがあります。
それを適切に受けずに後遺障害の申請をしてしまうと、当然妥当な等級認定を受けることができなくなります。
それが結果的に適切な賠償金を受け取ることができないということに繋がってしまうのです。
ですので、後遺障害の等級の認定というのは賠償金にとって、とても大切なものであるということを押さえておきましょう。
適切な賠償金の金額を算定する
交通事故で足首骨折のけがを負ったときに、保険会社から適切な賠償金を獲得するためには、自分のケースで妥当な賠償金がいくらくらいなのかということを知らなければなりません。
しかしながら、交通事故の被害者の方が自分でそれを知るのは、とても難しいと思います。
交通事故に何度もあっているという方は多くありません。
そのため、被害者の方はどのくらいが妥当な賠償金なのかがわからないためです。
インターネットである程度のことは調べることができますが、あくまで一般論という限りでしか把握することができず、自分のケースではどうなのかということまではなかなかわからないはずです。
被害者の方の中には、保険会社からの提示をそのまま受け入れてしまっているということもあります。
サインをしてしまってからは手遅れです。
先ほどのケースでも、弁護士として「サインする前に相談にきてくれていれば交渉できたのに」と思うことが多々あります。
サインをしてしまうと示談が成立しているため、弁護士が入ってももはや取り消すことはできません。
ですので、くれぐれも焦らないで、まずは専門家である弁護士に相談して、自分の状況を聞いてもらった上で、保険会社からの提示が妥当な提示内容といえるのかどうか、専門家の目からチェックしてもらいましょう。
示談はそれからでも決して遅くはありません。
特に、足首骨折のけがを負った方は、痛みも含めて何らかの後遺症が残る可能性があるため、その後の生活のためにも適切な賠償金を得ることはとても大切です。
後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する
多くの方にとって、交通事故は人生で1度か2度あうかどうかのもので、それほど頻繁にあることではないです。
そのため、交通事故にあうと、慣れない保険会社とのやりとりや書類の送付、病院への通院や勤務先とのやりとりや関係性に配慮したりと様々な場面で被害者の方は不安や面倒さを感じるはずです。
まして、足首の骨折という大きなけがを負ってしまい、そのことだけでも仕事や日常生活に支障があり、先々に不安を抱える方も多くいらっしゃると思います。
こうした不安や手続の面倒さを少しでも解消した上で、先々の後遺障害の申請を適切に行っていくためには、できるだけ後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談しておくことが大切です。
弁護士特約の保険会社に連絡をすると、「まだ治療中なので、弁護士に依頼する必要はないですよ」と言われたりする方もいますが、決してそんなことはありません。
むしろ、早いほうが良いと考えています。
なぜなら、早い段階から弁護士のサポートを受けることで、先々を見越して対応することができ、等級認定や賠償金の額に違いが生じてくる可能性があります。
また、弁護士費用特約に加入されている方であれば、治療中の段階で弁護士に依頼しても、示談交渉の段階になってから弁護士に依頼しても、どちらの場合でもほとんどのケースで特約の範囲の中で弁護士にサポートをしてもらうことが可能です。
そうであれば、早くから相談して、弁護士に入ってもらっていたほうが被害者の方にとっては安心できるのではないでしょうか?
まとめ
ここまで足首骨折と後遺症について、交通事故の取り扱い経験が豊富な弁護士が解説してきました。
交通事故で足首を骨折した場合には、可動域の制限による機能障害(運動障害)や痛みやしびれによる神経障害が残る可能性があります。
また、靭帯を一緒に損傷して、足首の不安定さが残ることもあります。
こうしたことから、治療中の段階から、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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