交通事故の見舞金は10万円が相場?受け取ると賠償額が減る?
自分の保険会社から交通事故の見舞金が出ると言われました。
これは何ですか?
また、相場は10万円と聞いてことがあるのですが、本当ですか?
交通事故にあった場合に、被害者が搭乗者傷害保険に加入していた場合、定額の保険金が出る場合があります。
この搭乗者傷害保険金のことを、見舞金と呼ぶ方もいます。
また、加害者から任意で見舞金を受け取ることもあります。
見舞金の相場は、10万円と決まっているわけではありません。
もっとも、搭乗者傷害保険として支払われる金額は、5〜10万円が多いです。
この記事でわかること
- 交通事故の見舞金について
- 見舞金を受け取った場合の賠償金の減額について
- 事前に賠償金の一部を受け取れる方法
交通事故の見舞金とは?
保険会社からの見舞金
被害者の方が加入されている任意保険で、搭乗者傷害保険というものが付帯されている場合があります。
搭乗者傷害保険とは、簡単に申し上げると、被保険自動車を運転中又は同乗中に交通事故により怪我をした(あるいは死亡した)場合に、支払われるものです。
保険会社の方が言う「見舞金」は、この搭乗者傷害保険のことを指していることが多いです。
搭乗者傷害保険は、定額給付方式です。
つまり、あらかじめ契約内容で定められている金額が支払われます。
定額の方式には、日額方式や部位症状別払などがあります。
日額方式
事故の発生日を含めて180日以内を限度に日額で支給されるものです。
具体的には、契約した自動車保険の入院・通院の日額保険金の額 × 入院・通院日数で算出されます。
部位症状別払
例えば、打撲・骨折等の症状、部位・頭部・四肢・体幹等の部位にて入通院が一定日以上であれば、定額の金額が支払われます。
金額としては、5万円や10万円が多いです。
なお、搭乗者傷害保険の給付を受け取ったとしても、翌年の等級に変動はありません。
加害者からの見舞金
加害者から、陳謝の意を表すとして、任意で見舞金が支払われることがあります。
これは、社会的儀礼の一つとして(法的根拠は特になし)任意で支払われるものなので、相場はありません。
見舞金を受け取ると賠償額が減る?
交通事故に遭われた被害者が、事故に起因して何らかの利益を得た場合、その利益が損害の補填として認められるときは、その利益を損害から差し引くことがあります。
これを損益相殺といいます。
では、見舞金は損益相殺され、賠償金が減るかが問題となります。
搭乗者傷害保険の場合
搭乗者傷害保険の保険金は、損益相殺されませんので、受け取っても賠償金は減りません。
加害者からの見舞金
加害者からの見舞金は、損益相殺される場合とされない場合があります。
損益相殺されてしまう場合は、加害者の見舞金が損害賠償金の一部と認定される場合です。
損益相殺がされない場合は、純粋な社会的儀礼としての見舞金と認められる場合です(参考判例として、大阪地判平成19年9月26日がある)。
したがって、加害者から見舞金を受け取る際は、それが損害賠償金の一部としての意味合いなのか、純粋な社会的儀礼としての見舞金の意味合いなのか、確認するのが良いかと思います(名目ではなく、実質が重要ということです)。
また、あまりにも高額な見舞金を受け取る場合は、損害賠償金の一部と認定される可能性が高まりますので、社会的儀礼としての見舞金である旨の書面等は取り付けることも検討すべきでしょう。
事故後、示談前に賠償金を受け取れる方法は?
内払い
相手方の任意保険会社が、示談前に損害賠償金の一部(例えば、休業損害や慰謝料)を被害者に支払ってくれる場合があります。
これを内払いといいます。
内払いは、法的根拠があるわけではなく、保険会社の任意で行われるものです。
内払いを希望される場合は、保険会社に申し出ることが必要です。
内払いは損害賠償の一部なので、支払われた分は当然に最終示談額から差し引かれます。
仮渡金
仮渡金とは、自賠責保険に対して、損害が確定していない段階で請求できる前払金のようなものです(自動車損害賠償保障法17条)。
仮渡金として請求できる金額は、傷害の程度に応じて、5万円、20万円、40万円(死亡の場合は290万円)と定められています。
仮渡金の請求のために必要な書類については、以下のサイトで詳しく説明していますので、ご覧ください。
なお、仮渡金として受け取った金額が、最終的な損害額を上回った場合は、差額分を返還しなければなりません。
仮渡金も損害賠償の一部なので、支払われた分は当然に最終示談額から差し引かれます。
まとめ
- 交通事故の見舞金には、搭乗者傷害保険と加害者から支払われる見舞金がある。
- 搭乗者傷害保険は賠償金から差し引かれないが、加害者からの見舞金は、受け取り方によっては賠償金から差し引かれる可能性がある。
- 事前に賠償金を受け取る方法として、内払いと仮渡金制度がある。
- 見舞金の相場は10万円と決まっているわけではない。