自動車のドア開放事故の過失割合は?【弁護士が解説】
個別の事案によって、過失割合は前後しますが、被害者側としては、0(自転車):100(ドア開放自動車)と主張していくべきでしょう。
過失割合とは
民法722条2項では、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定されています。
つまり、被害者に何らかの原因があった場合に、被害者に生じた損害のすべてを加害者に負わせるのは妥当ではなく、被害者の責任部分については、減額するというのが損害の公平な分担に沿うとされているのです。
これが、過失相殺という制度です。
過失割合は、損害の全額に対して影響してくるため、5%違うだけでも賠償額に大きな影響が出てくることがありますので、慎重な交渉が必要です。
ドア開放事故の過失割合
停車中の四輪自動車がドア開放して、四輪自動車の左側又は右側を走行しようとしたバイクや自転車に接触する事故のことをドア解放事故といいます。
では、ドア解放事故の過失割合は、どのような割合になるのでしょうか。
この点、交通事故賠償実務においては、過失割合を検討するにあたっては、「別冊判例タイムズ38 民事訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(東京地裁民事交通訴訟研究会 編)」が参考にされています。
同書籍は、過去の裁判例などの集積から、事故態様を類型化して過失割合の目安を示しているものです。
同書籍では、自転車:ドア開放自動車の交通事故の類型は記載されていません。
もっとも、バイク:ドア開放自動車の類型は記載があり、自転車:ドア開放自動車の交通事故を検討するにあたって、参考になります。
バイク:ドア開放自動車の類型の過失割合は、10(バイク):90(ドア開放自動車)とされています。
単車(バイク) | 自動車 | |
---|---|---|
基本過失割合 | 10 | 90 |
この過失割合を基本として、個別事情に応じて割合を修正することになります。
バイク側に加算される事情
降車・乗車が予想されるような場合、ドア開放を予測させる事情があるとしてバイクの過失が加算されます。
具体的には、タクシーが合図を出して停止した直後の場合、トランクが開いているなど、乗車降車が予測できるような場合です。
スピード違反をしている場合、ドア解放時に避けるのがより困難になるため、修正要素とされていると考えます。
著しい過失の例としては、著しい前方不注視、酒気帯び運転などが考えられます。
重過失としては、酒酔い運転や居眠り運転などが考えられます。
また、自動車の左側の隙間が狭く自転車などが通過すると予想しにくいような状態であるのに、自転車等が無理に通行した場合、二輪車側にその他の著しい過失・重過失あるとされ、過失が加算されることがあります。
バイク側に減算される事情
左折のウインカーを出して停車している場合は、合図がある場合となります。
バイクが通り過ぎる直前に自動車のドアが解放された場合には、バイクとしては避けるのがより困難になるため、修正要素とされています。
自転車対ドア開放自動車の過失割合
上記のバイク対ドア開放自動車の過失割合を参考にして、自転車対ドア開放自動車の過失割合を検討することになります。
自転車の場合、バイクよりも保護の必要性が高いと考えられるため、自転車の被害者側としては、0(自転車):100(ドア開放自動車)を主張していくべきでしょう。
このような裁判例があります。
判例 自転車0% 対 四輪車100% とした裁判例
この事例は、同乗していた者が、後方の安全を確認しないまま、後部右側座席ドアを開けたところ、後方から進行してきた被害者に、ドアが衝突した事案です。
裁判所は、被害者に前方不注視の事情はなく、その他にもドア開放を予測させる事情がなかったとして過失相殺を認めませんでした。
【東京地裁平成21年3月30日判決】
もっとも、修正要素については、バイクの場合と同様に検討されることになりますので、事案によって、自転車0%対四輪車100%とならない場合もあります。
まとめ
ドア解放事故の場合、「ドア開放を予測させる事情」の有無が最も大きな争点になると思われます。
こうした事情は、客観的にその有無が決まるわけでなく、人の評価によって変わりうるものですので、自転車の被害者側としては、予測できなかったことを説得的に主張反論していく必要があるでしょう。