交通事故で膝に後遺症。後遺障害に認定される?
交通事故で膝に後遺症が残ってしまった場合、後遺障害に認定される可能性はあります。
膝関節の可動域制限が、後遺障害等級認定の基準に当てはまるかどうかがポイントです。
具体的には、
- 膝関節が強直すれば、8級7号
- 膝関節の可動域が健側の1/2以下に制限されれば、10級11号
- 膝関節の可動域が健側の3/4以下に制限されれば、12級7号
に認定される可能性があります。
このページでは、膝の後遺症がある場合の後遺障害等級認定や慰謝料額などについて弁護士が解説いたします。
目次
膝関節の特徴
膝関節は、大腿骨を通じて脛骨に力がかかるところです。
かかる力は体重の5倍くらいといわれています。
そのため最もケガの多い関節と言われています。
また、大きな力を支えつつ可動域の確保、安定性を図る膝関節は、関節内に前後の膝十字靭帯、内外側側副靭帯、膝関節内で大腿骨、脛骨のクッションとなる内側・外側半月などからなり、複雑な構造になっています。
しかし、とても複雑な構造のため、ケガをすると治療の時間が長くかかります。
交通事故での膝のケガに関する傷病名
交通事故で膝に大きな外力がかかり受傷する
- 前十字靱帯損傷(ACL損傷)
- 後十字靱帯損傷(PCL損傷)
- 内側側副靭帯損傷(MCL損傷)
- 複合靭帯損傷
- 半月板損傷
- 脛骨高原骨折
- 膝蓋骨骨折
などです。
これらの傷病による膝関節の可動域が制限されます。
膝の後遺症は後遺障害等級に認定される?
1.8級7号
「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
「強直」とは、関節がまったく可動しない状態のことです。
関節が全く可動しないか,またはこれに近い状態を言います。
「これに近い状態」とは,健側の可動域の10%程度以下(5度単位で切り上げて計算)に制限されたものをいいます。
自動でも関節が動かないか、これに近い状態です。「これに近い状態」とは、(1)と同じ意味です。
2.10級11号
「著しい障害を残すもの」とは、次に該当するものをいいます。
3.12級7号
「単なる障害を残すもの」とは、次に該当するものをいいます。
膝関節の可動域の計測はどうやるのですか?
関節可動域は、他動の主要運動を計測します。
ケガをしていない健側とケガをした患側の主要運動の合計を比較します。
膝関節の主要運動は、屈曲、伸展です。
屈曲は膝を曲げます。
伸展は膝を伸ばします。
膝関節に参考運動はありません。
他動とは
他動とは、主治医等が力を加えて可動域を計ります。
これに対して、自分の力で動かした場合の可動域を、自動といいます。
後遺障害の認定にあたっては、他動が重要視されます。
主要運動とは
主要運動とは、各関節における日常生活にとって最も重要なものをいいます。
下肢の三大関節の主要運動は、以下のとおりです。
三大関節 | 主要運動 |
---|---|
股関節 | 屈曲、伸展、外転、内転 |
膝関節 | 屈曲、伸展 |
足関節 | 屈曲、伸展 |
後遺障害逸失利益はどうなりますか?
後遺障害等級が認定されれば、後遺障害逸失利益というものを請求できます。
後遺障害逸失利益の具体的な計算方法は、
となります。その中で、労働能力喪失率は、等級によって異なります。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
8級 | 45% |
10級 | 27% |
12級 | 14% |
後遺障害慰謝料はどうなりますか?
後遺障害慰謝料の裁判基準は、等級によって目安が定められています。
等級 | 後遺障害慰謝料の裁判基準 |
---|---|
8級 | 830万円 |
10級 | 550万円 |
12級 | 290万円 |
まとめ
6ヶ月程通院しても、膝が動かしづらいなどの症状が残っていた場合は、主治医に後遺障害診断書を書いてもらい、後遺障害の申請を検討する必要があるかと思います。
稀に、膝関節の可動域を計測した際、患側の可動域の記載はあるが、健側の可動域の記載がない後遺障害診断書を見かけることがあります。
上記のとおり、可動域制限の判断は、患側と健側の比較なので、そのままの後遺障害診断書だと後遺障害は認定されません。
その場合は、後遺障害診断書を主治医に書き直してもらう必要があります。
このように、後遺障害の申請は、専門的知識が必要となります。
交通事故の後遺障害でお困りの方は、ぜひ一度交通事故に詳しい弁護士へご相談ください。
当事務所では、交通事故に精通した弁護士が対応いたします。