歩行者が誤って高速道路に侵入し、事故になった場合の過失割合は?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

歩行者は、高速道路に立ち入ることは許されません(高速自動車国道法17条1項)。

したがって、高速道路上に歩行者がいること自体が、歩行者に重大な過失があると考えられます。

ここでは、具体的な事故状況に沿って過失割合を解説します。

※以下の過失割合は、あくまで目安であり、個別事情によって変わることがありますので、この点ご留意ください。

※本文中の交通事故図は別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(東京地裁民事交通訴訟研究会 編)を参考にしています。

 

高速道路上での事故で歩行者の過失が大きくなる理由

高速道路は、自動車や126㏄以上のバイク以外の手段での通行は許可されていません。

そして高速道路へは歩行者や自転車がみだりに侵入することも許されていません。

したがって、歩行者や自転車が高速道路を通行することを自動車の運転者は予期していません。

そのため、高速道路上での歩行者と車両との事故があった場合、歩行者の過失が大きくなるのです。

もっとも、歩行者の存在を予期できなかったとしても、昼間であれば自動車運転者が歩行者を発見するのは困難でないため、事故が起こった場合前方不注視またはハンドル・ブレーキ操作の不適切等の安全運転義務違反(道路交通法70条)があるとして、車両にも過失があるとされます。

 

 

基本過失割合

1.高速道路に侵入した歩行者と車の事故

歩行者 自動車・バイク
基本過失割合 80% 20%

以下のような事情がある場合には、過失割合が修正されます。

自動車・バイクの著しい過失 -10〜20%
自動車・バイクの重過失 -20〜30%

「著しい過失」は、以下のような場合を指します。

著しい過失
  • 脇見運転等著しい前方不注視
  • 著しいハンドル・ブレーキ操作不適切
  • 携帯電話の使用
  • 画像を注視しながらの運転
  • 時速15〜30Kmのスピード違反
  • 酒気帯運転

「重過失」は、以下のような場合をさします。

重過失
  • 居眠り運転
  • 飲酒運転
  • 無免許運転
  • おおむね時速30kmのスピード違反
  • 過労、病気、薬物などにより正常な運転ができない恐れがある場合

 

2.駐停車車両の近辺にいる歩行者や工事関係者との事故

故障のため駐停車している車両の乗員や高速道路工事関係者と通行車両との事故の過失割合です。

歩行者 自動車・バイク
基本過失割合 40% 60%

以下のような事情がある場合には、過失割合が修正されます。

歩行者の過失割合が加算される事情

視認不良 +10%
歩行者の著しい過失重・過失 +10〜20%

歩行者の過失割合が減算される事情

歩行者が停止表示器材を設置している場合 -20%
自動車・バイクの著しい過失 -10〜20%
自動車・バイクの重過失 -20〜30%

高速道路において、停止する場合には停止表示器材により、停止していることを表示しなければなりません(道路交通法75条の11第1項)。

その表示方法は、夜間は夜間用停止表示器材を、夜間以外の場合には昼間用停止表示器材を後方車両から見やすい位置に設置する必要があります。

したがって、単にハザードランプのみを点灯させているだけでは、「停止表示器材を設置している場合」には当てはまりません。

参考:第七十五条(自動車の使用者の義務等)|法令検索e-gov

 

過失割合


 
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