追い越し直後の追突事故。過失割合はどうなる?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

追い越し直後の追突事故では、追越車両の過失が大きくなることが多いです。

交差点と交差点以外の事故の過失割合は、以下の通りです。

※本文中の交通事故図は別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(東京地裁民事交通訴訟研究会編)を参考にしています。

 

追突事故の基本過失

次の相談事例をご覧ください。

過失割合について質問です。

私の自動車を追い越した自動車に追突し、交通事故を起こしました。

相手は追突だから私の責任だと主張していますが、過失割合はどうなりますか?

通常、完全停車している車両への追突は、0(追突された車両):100(後続車追突した車両)となっています(過失の修正要素を考えない場合)。

しかし、上記相談事例のような追い越し直後の追突事故では、追越車両の過失が大きくなることが多いです。

 

追い越しの意味

「追越し」の意味は、2通りあります。

交差点での「追越し」
先行車に追い付いた後続車が進路を変更して先行車の横を通過することです。
後続車の進路変更は1回だけです。
交差点以外での「追越し」
先行車に追い付いた後続車が進路を変更して先行車の横を通過後、再び進路を変更して先行車の前に出ることです。
つまり、後続車は2回進路変更をします。

ちなみに、先行車に追い付いた後続車が、進路を変更せずに先行車の横を通過し、先行車の前に出ることを「追い抜き」と言います。

 

 

自動車同士の追越し事故の基本過失

交差点と交差点以外の事故の過失割合を説明します。

交差点での追越し事故(追越される車は交差点を右折予定)

A:追越直進車 B:右折車
追越しが禁止されている交差点 90 10
追越しが禁止されていない交差点 50 50

以下のような事情がある場合には、過失割合が修正されます。

  • 右折車の過失に加算される修正要素
    • あらかじめ中央に寄らない右折
    • 右折車の著しい過失
    • 右折車の重過失 など
  • 右折車の過失に減算される修正要素
    • 追越直進車著しい速度違反、
    • 追越直進車の著しい過失
    • 追越直進車の重過失 など

 

交差点以外での追越し事故

A:追越車 B:追越された車
追越禁止場所における事故 90 10
追越禁止場所でない場所における事故 80 20

  追越禁止場所とは(道路交通法30条)

道路標識等によって追越禁止と指定された場所、道路の曲がりくねったかど付近、上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂。トンネル(車両通行帯の設けられた道路を除く)、交差点(優先道路の場合を除く)、踏切、横断歩道、自転車横断帯及びこれらの手前側端30m以内の部分をいいます。

以下のような事情がある場合には、過失割合が修正されます。

  • 右折車の過失に加算される修正要素
    • 追越された車の避譲義務違反
    • 追越された車の追越し完了前の加速
    • 追越された車著しい過失・重過失 など
  • 右折車の過失に減算される修正要素
    • 追追越直進車の著しい過失
    • 追越直進車の重過失 など

上記の過失割合は、あくまで目安です。

過失割合は、当該事故のすべての事情を総合して判断されることになるので、上記割合と異なる割合になることもあります。

 

 

過失割合


 
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