外傷性胸郭出口症候群とは?後遺障害認定される?
外傷性胸郭出口症候群(TOS)とは、頚椎捻挫や鎖骨骨折などの外傷後に発症する場合があり、神経障害と血流障害に基づき、上肢挙上の際の上肢痛、上肢の痺れ、頸部から肩、上肢へ痛みの症状がある疾患です。
裁判例として後遺障害等級9級10号、12級13号、14級9号に認められた例があります。
しかし、後遺障害認定を否定される例も多くみられます。
特に12級以上の等級は、かなりハードルが高いです。
ここでは、外傷性胸郭出口症候群の後遺障害について解説いたします。
胸郭出口症候群とは?
胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)とは、神経障害と血流障害に基づき、上肢挙上の際の上肢痛、上肢の痺れ、頸部から肩、上肢へ痛みの症状がある疾患です。
外傷性胸郭出口症候群(TOS)とは、頸部の外傷によって神経や血行を構成する斜角筋(しゃかくきん)断裂、鎖骨骨折による瘢痕(はんこん)治癒や変形癒合によって神経や血管を狭窄、圧迫する場合に生じます。
胸郭出口症候群の症状の特徴
原因が神経障害である場合
尺骨神経領域の疼痛(とうつう)・知覚障害の症状がでます。
握力低下、巧緻運動障害が生じる場合があります。
握力低下、巧緻運動障害が生じる場合、手の骨間筋、小指球筋に萎縮がみられます。
原因が血流障害である場合
原因が動脈の血流障害の場合と静脈の場合で特徴が異なります。
動脈が原因の場合
上肢の動脈の血行が悪く、腕が白色になります。
静脈が原因の場合
上肢の静脈の血行が悪く、腕が青紫色になります。
胸郭出口症候群の診断方法
胸郭出口症候群の診断にあたっては、以下の誘発テストが参考にされます。
鎖骨の上のくぼみ部分(首の付け根付近)を指で圧迫します。
その結果、圧痛または前胸部に放散痛が生じた場合には、陽性となります。
座った状態で、頭を痛みがある側に回旋させ、深呼吸を行わせます。
動脈の脈拍が弱くなるか停止した場合に陽性となります。
このテストは、胸郭出口症候群であっても陽性にならないことが多いです。
座った状態で、両肩を外側に90度挙げて、肘も90度曲げます。
その結果、脈が弱くなった場合には陽性となります。
座った状態で、胸を張り、両肩を後ろ下方向に引きます。
その結果、脈拍が弱くなった場合には陽性となります。
ライトテストと同じ体勢で、3分間、手を握る開くという動作を行います。
途中で、手指がしびれ、前腕がだるさのため、腕をおろしてしまった場合に陽性となります。
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治療方法
消炎鎮痛剤を服用し、症状が悪化するような動作をしないよう安静にします。
重症になった場合は、第1肋骨切除術、頚肋摘出術、斜角筋切除術を行うことになります。
外傷性胸郭出口症候群(TOS)の後遺障害等級認定の問題点
裁判例においても、胸郭出口症候群がどのような場合に「外傷性」といえるのか具体的な判断基準が判然としていません。
頸部の外傷によって神経や血行を構成する斜角筋断裂、鎖骨骨折による瘢痕治癒や変形癒合によって神経や血管を狭窄、圧迫する場合は外傷性と判断できます。
このような場合、鎖骨、斜角筋部、鎖骨上窩の腕神経叢部に骨折や筋断裂などの外傷性の病変や病変に伴う主張や圧痛などの客観的な外傷所見も得られるため、「外傷性」の証明は容易でしょう。
しかし、外傷性胸郭出口症候群として問題になるのは、なで肩や筋肉質のなどの体質、体格的素因があるところに、交通事故が契機となって、心理的、社会的要因が加わり、症状がでるような場合です。
また、すでに説明したように、症状誘発テストにて「胸郭出口症候群」と診断が可能なため他覚的に神経学所見を証明するのが難しいところがあります。
この点、血管造影検査や腕神経叢造影検査などの異常所見をもとに外傷性胸郭出口症候群の主張がなされる場合があるようです。
しかし、この2つの検査は健常者でも異常が出る場合があり、他覚的所見として決定打となりません。
さらに、電気生理学的検査の異常所見を神経学的異常所見の例とする主張もありますが、この場合、「腕神経叢損傷」「末梢神経損傷」の後遺障害として問題にすればよく、外傷性胸郭出口症候群よりも高い障害等級が得られる可能性もあるので、外傷性胸郭出口症候群の後遺障害を判断する必要がありません。