交通事故の慰謝料は弁護士基準が有利?他の基準と相場を比較
交通事故の慰謝料は他の基準と比較して弁護士基準が有利となる傾向です。
交通事故慰謝料の弁護士基準とは、弁護士が保険会社と交渉するにあたって使用するもので、最も高額な慰謝料の算定基準のことです。
過去の裁判例を踏まえて、適切な慰謝料額となるよう作られた基準であるため、最も妥当な算定基準ともいえます。
他には、自賠責保険基準と任意保険基準がありますが、弁護士基準と比較すると低額になり、加害者側の保険会社からは主にこの2つの基準で計算された慰謝料額が提示されます。
そのため、慰謝料を請求する際に、弁護士基準で計算された金額ではなく、保険会社から提示された金額で合意してしまうと大きく損をしてしまう可能性があります。
このページでは、弁護士基準(裁判基準)での賠償額の計算方法や、自賠責保険基準、任意保険基準との違い、弁護士に示談交渉を依頼することのメリットなどについて解説していますので、ご参考にされてください。
目次
交通事故慰謝料の弁護士基準とは?
弁護士基準とは、交通事故の賠償額を算定する基準の1つであり、弁護士が保険会社と交渉するにあたって使用する基準です。
交通事故の賠償の基準は、弁護士基準に加えて、自賠責保険基準、任意保険会社基準の3つの基準があります。
弁護士基準は、裁判をした場合に裁判所が用いる基準でもあるため裁判基準とも言われます。
弁護士基準は、3つの基準の中で弁護士基準が最も高い賠償基準です。
つまり、弁護士基準で計算した慰謝料が最も高い金額になります。
弁護士基準は、過去の裁判で認められた慰謝料を参考にして作られているので、被害者にとって納得できる基準と言えます。
慰謝料の基準には3種類ある
慰謝料の基準は、弁護士基準(裁判基準)の他に任意保険基準、自賠責保険基準の3つがあります。
自賠責保険基準とは?
自賠責保険基準は、自動車損害賠償保障法施行令によって定められている基準で、自賠責保険に請求した場合に使用される基準です。
交通事故の賠償基準の中では最も低い基準です。
任意保険基準とは?
任意保険基準は、各保険会社が内部的に作成している基準であり、公表されていません。
基準の水準としては、自賠責保険基準よりも少しだけ高い水準の賠償水準となっています。
なぜ異なる基準があるのか?
自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準は、それぞれ作成された目的が異なります。
自賠責保険基準は、交通事故被害者に最低限の補償をするという公益的な目的から政府が考えて作成している基準です。
任意保険基準は、各損害保険会社が、会社の経営や社会的な役割など様々な事情を踏まえて、被害者に賠償するのに適切な金額はどの程度かと言う観点から基準を設けています。
弁護士基準は、過去の裁判例などを踏まえて、適切な賠償の水準を検討し妥当な紛争解決を図ることを目的に設けられた基準です。
このように、各基準は作られた目的が異なり、それぞれがその目的を果たすために必要な役割を果たしているのです。
3つの基準のメリット・デメリット
下表は弁護士基準と他の2つの基準について、メリットとデメリットで比較した表です。
基準 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自賠責基準 |
|
最低補償であり、賠償水準は最も低い |
任意保険基準 |
|
|
弁護士基準 |
|
保険会社が応じない場合裁判を起こす必要があり、解決まで長期間を要する |
誰が慰謝料の基準を決めるのか?
適用される慰謝料の基準は、場面によって異なります。
自賠責保険に賠償金を請求した場合には、自賠責保険基準が適用されますし、被害者と保険会社が交渉している場合には、任意保険基準が適用されます。
弁護士が示談交渉をする場面と裁判になった場合には、弁護士基準が用いられます。
ただ、裁判になった場合、裁判官は弁護士基準を前提にはしますが、事案によっては、弁護士基準と異なる賠償額を決定することがあります。
裁判では、裁判官自身が事案を見極めて賠償の基準を決めるのです。
こうした意味では、最終的な賠償の基準は裁判官が決めるということになります。
交通事故慰謝料の弁護士基準の相場
交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つの慰謝料があります。
慰謝料の内容 | 請求の条件 |
---|---|
入院慰謝料 | 事故のケガにより入院あるいは通院をしたこと |
後遺障害慰謝料 | 事故により後遺障害等級に該当する症状が残ったこと |
死亡慰謝料 | 事故により死亡したこと |
以下では、それぞれの慰謝料の相場について説明します。
入通院慰謝料の弁護士基準〜相場表
入通院慰謝料は、交通事故により入院や通院をせざるを得なくなったことに対する慰謝料です。
具体的な金額は、入院期間、通院期間に応じて下表によって算出されます。
入通院慰謝料は、通院すれば発生する慰謝料なので、人身事故の被害者は特殊な事情がない限り、請求することが可能です。
もっとも、逆に言えば、通院していなければ入通院慰謝料は請求できません。
痛みはあるけれども、痛みに耐えて仕事や家事をして病院に行かなかったという場合には、入通院慰謝料は請求できません。
したがって、交通事故に遭って、痛みがあれば早い段階で病院を受診し、医師の指示に従い通院されることをおすすめします。
なお、算定表には2種類あり、むちうち・打撲等の軽傷用の表と、骨折や脱臼等の重傷用の表があります。
表の見方
- 1月 = 30日
- 入院のみの場合、入院した月数に対応する部分の金額が慰謝料の基準
- 通院のみの場合、通院した月数に対応する部分の金額が慰謝料の基準
- 入院と通院の両方があった場合、入院した月数と通院した月数とが交わる欄の金額が慰謝料の基準
具体例
骨折をして30日入院、150日通院した場合
30日入院、150日通院なので、入院1ヶ月の列と通院5ヶ月の行が交わる141万円が弁護士基準の入通院慰謝料となります。
後遺障害慰謝料の弁護士基準〜相場表
後遺障害慰謝料とは、後遺障害の等級が認定された場合、入通院慰謝料とは別に請求することができる慰謝料です。
交通事故において、後遺障害とは、治療を続けても完治することがなく、身体的あるいは精神的な不具合が将来にわたって残ってしまう状態をいいます。
後遺障害として認定されなければ、基本的に後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を受け取ることは難しいです。
後遺障害等級は、症状の内容に応じて、ランクが定められており、症状やそれを証明する医学的証拠によって審査されます。
弁護士基準の後遺障害慰謝料は、等級に応じて下表のように決まっています。
後遺障害等級 | 弁護士基準 |
---|---|
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
後遺障害慰謝料を請求するには、後遺障害等級に認定される必要があります。
後遺障害等級に認定されるには、自賠責保険に後遺障害申請をする必要があります。
後遺障害申請について、詳しくは以下をご覧ください。
死亡慰謝料の弁護士基準〜相場表
弁護士基準の死亡慰謝料は、被害者の立場に着目して金額が決まっています。
具体的には下表のとおりです。
立場 | 慰謝料額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他 | 2000万円 〜 2500万円 |
「一家の支柱」とは、亡くなった被害者が被害者の家族の家計を支えていた場合です。
「その他」とは、独身の男女、子供、幼児等です。
上記の慰謝料額は、近親者慰謝料(被害者の家族等が請求できる慰謝料)も含まれています。
被害者が亡くなった場合には、慰謝料の他に、葬儀費用、死亡逸失利益などを請求することができます。
死亡逸失利益は、高額になる傾向があり、計算方法も複雑であることから、弁護士に相談あるいは依頼して交渉を進めるようにしましょう。
死亡逸失利益について詳しくは以下をご覧ください。
慰謝料以外の損害項目
慰謝料は、交通事故の賠償項目の中の一つです。
慰謝料以外の主な賠償項目には以下のようなものがあります。
治療費 | 見出しケガの治療費や入院費用など |
---|---|
通院交通費 | 病院や整骨院に通院する際の費用 |
休業損害 | 仕事を休んで減収した場合の損害 |
入院雑費 | 入院した場合に要する雑費 |
付添費用 | 幼児などの通院付添や入院付添費用など |
逸失利益 | 後遺障害による将来の減収に対する賠償 |
車の修理費用 | 事故により破損した車の修理費用 |
弁護士基準がわかる慰謝料計算機|スマホで簡単!
「保険会社から賠償の提示がされたけれど相場が全く分からない」、「後遺障害に認定されたけどどのくらいの補償になるのか知りたい」といった場合もあると思います。
もっとも、交通事故の賠償計算は、専門的な知識を必要としますので、簡単に金額を算出できるものではありません。
下記のページでは、必要事項を入力すれば弁護士基準での賠償額が算出できる自動計算機を載せています。
最終的に賠償額がどの程度になるかは、個別事情を踏まえる必要があるので、弁護士に相談されることをお勧めしますが、自動計算機で弁護士基準の目安を知っておくことも有用です。
弁護士基準の賠償額自動計算機は、以下のページです。
弁護士基準と他基準の慰謝料額を比較
以下では、弁護士基準と自賠責保険基準の慰謝料の額を比較して説明します。
任意保険基準は、現在、公表されておらず不明確なため、ここでは割愛しています。
入通院慰謝料の弁護士基準と自賠責基準の差
入通院慰謝料の弁護士基準と自賠責基準の差を具体例で説明します。
傷病名 頚椎捻挫(むちうち)
実通院日数 60日
通院期間 180日
上記の治療期間、治療日数を前提にすると、弁護士基準の方が自賠責保険基準よりも37万4000円高額になります。
弁護士基準 | 自賠責保険基準 |
---|---|
89万円 | 51万6000円 |
自賠責基準の入通院慰謝料額
- 自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算式
1日4300円 × 対象日数
※2020年3月31日以前の事故は4200円 - 対象日数
実入通院日数の2倍の日数と通院期間の日数の少ないほうが対象
【対象となる日数は120日】
実通院日数:60日 × 2 = 120日
通院期間:180日
※通院期間よりも、実通院日数の方が少ない
4,300円 × 120日 =51万6000円
なお、自賠責保険基準の場合、120万円の上限があるため、上記の例でも、すでに治療費で80万円使っている場合には、120万円から80万円を差し引いた40万円の限度でしか支払いを受けることができません。
弁護士基準の入通院慰謝料額
通院期間180日で、診断名が頚椎捻挫(むちうち)の場合、弁護士基準では89万円です。
上記の治療期間、治療日数を前提にすると、弁護士基準の方が自賠責保険基準よりも37万4000円高額になります。
後遺障害慰謝料の弁護士基準と自賠責基準の差
後遺障害等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
第1級 | 2800万円 | 1150万円 (1650万円) |
第2級 | 2370万円 | 998万円 (1203万円) |
第3級 | 1990万円 | 861万円 |
第4級 | 1670万円 | 737万円 |
第5級 | 1400万円 | 618万円 |
第6級 | 1180万円 | 512万円 |
第7級 | 1000万円 | 419万円 |
第8級 | 830万円 | 331万円 |
第9級 | 690万円 | 249万円 |
第10級 | 550万円 | 190万円 |
第11級 | 420万円 | 136万円 |
第12級 | 290万円 | 94万円 |
第13級 | 180万円 | 57万円 |
第14級 | 110万円 | 32万円 |
※自賠責保険基準の( )内の金額は介護を要する場合の金額です。
後遺障害等級が重くなればなるほど、その差額は大きくなっていきます。
死亡慰謝料の弁護士基準と自賠責基準の差
被害者が亡くなった場合には、死亡慰謝料を請求することができますが、弁護士基準と自賠責基準では大きな差があります。
以下の例で説明します。
被害者:男性(会社員)
家族関係:妻、子1人(被扶養者)
この例で比較すると、弁護士基準の方が自賠責保険基準よりも2.2倍高額であるといえます。
弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|
2800万円 | 1250万円 |
自賠責保険基準の場合(→の見出しを、小見出しに変更)
自賠責保険基準の死亡逸失利益では、本人の慰謝料と遺族の慰謝料で分けられています。
- 本人の慰謝料:400万円
- 遺族の慰謝料:遺族が一人の場合は550万円、二人の場合は650万円、3人以上の場合には750万円
- 被害者に被扶養者がいる場合:さらに200万円が追加して支払われる
夫本人の慰謝料:400万円
遺族の慰謝料:850万円(650万円 + 200万円)
合計:1250万円
弁護士基準の場合
弁護士基準の場合、被害者本人は「一家の支柱」と評価され慰謝料金額は2800万円となります。
慰謝料は弁護士基準で請求すべき!
弁護士基準は、過去の裁判例を踏まえて、適切な慰謝料額となるよう作られた基準であり、妥当で適切な基準で、3つの基準の中で最も高い基準です。
自賠責基準は、法律で定められた最低限の基準であり、任意保険基準は任意保険会社の都合を踏まえた基準なので、適切な慰謝料額とはいえません。
このように、弁護士基準が、3つの基準の中でも最も適切かつ高い基準であることから、弁護士基準で慰謝料額を請求すべきなのです。
弁護士に依頼して弁護士基準での慰謝料を得たケース
むちうちで後遺障害14級を獲得し弁護士基準で解決したケース
損害項目 | 賠償額 |
---|---|
入通院慰謝料 | 89万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 |
逸失利益 | 120万円 |
※1000円以下は切り捨てています
この事例は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益について、示談交渉で弁護士基準による解決ができた事例です。
治療中の段階から弁護士のサポートを開始し、後遺障害申請、示談交渉を弁護士にて対応した結果、上記のような結果を得ることができました。
過失割合が10%あり、最終的な受取金額は約275万円になりました。
弁護士が交渉することで550万円以上増額できた事例
損害項目 | 保険会社提示額 | 弁護士交渉の結果 |
---|---|---|
入通院慰謝料 | 約110万円 | 約135万円 |
後遺障害慰謝料 | 93万円 | 290万円 |
逸失利益 | 約150万円 ※過失相殺40%有り |
約720万円 ※過失相殺40%有り |
※1000円以下は切り捨てています
この事例は、左手の可動域制限により12級の後遺障害が認定された事例です。
依頼者の方は、保険会社からの提示の妥当性を確認するために当事務所に相談に来られました。
弁護士において、内容を確認したところ、明らかに不十分な内容であったため、依頼を受け交渉したところ、合計で550万円以上増額することができました。
交通事故慰謝料を弁護士基準で受け取る流れ
慰謝料を受け取るまでの大まかな流れは以下のフロー図のとおりです。
慰謝料を弁護士基準で獲得するには、示談交渉の段階で弁護士に依頼することが大切です。
被害者が自分で弁護士基準の慰謝料を提示しても、保険会社から「弁護士が入ってないから弁護士基準での解決はできません」と言われてしまうでしょう。
交通事故慰謝料を弁護士基準にするには?
①弁護士に相談・依頼する
被害者が自分で交渉しても、弁護士基準で解決することは難しいです。
したがって、弁護士に相談して依頼することを検討すべきでしょう。
弁護士に依頼するにあたっては、その弁護士が交通事故に詳しい弁護士か見極めることが大切です。
相談をされる際に、色々質問してみて、濁さずにきちんと答えてくれるか確認しましょう。
②適切な通院・治療を続ける
入通院慰謝料は、入通院していない場合には請求することはできません。
事故により体に違和感や痛みがある場合には、必ず病院を受診しましょう。
受診後、医師の指示に従って通院し、治療を継続することが大切です。
③弁護士に示談交渉に入ってもらう
示談交渉を弁護士に依頼した場合には、連絡窓口は全て弁護士となります。
示談交渉では、裁判になった場合、どのような判決が出るかを考えながら交渉することが大切です。
裁判になった場合に有利な判決が出る見込みが高い場合には、裁判をする可能性があることを保険会社に伝えて交渉すると円滑に交渉が進むこともあります。
また、弁護士基準は、裁判になった場合に裁判所が使用する基準(裁判基準)と同じであるため、裁判をすれば、弁護士基準での解決が期待できます。
交通事故慰謝料の弁護士選びのポイント
弁護士の取扱分野は幅広く、すべての分野をマスターしている弁護士はいないでしょう。
以下は、交通事故を依頼する弁護士を選ぶ際のポイントについて説明します。
【交通事故の弁護士を選ぶ際の基準】
- 交通事故案件を重点的に取り扱っている
- 交通事故に関する解説ページを執筆しているか
- 解決実績
- 被害者の主張に耳を傾けてくれるか
- 見通しをきちんと伝えてくれる
- 事故直後から解決までサポートしてくれる
弁護士による示談交渉のメリット
弁護士が示談交渉を依頼した場合には以下のようなメリットがあります。
保険会社とのやりとりが不要になる
事故に遭って以降、被害者は、治療のことや休業損害のことで保険会社の担当者とやりとりをされています。
保険会社と連絡が通じるのは、原則朝9時〜午後5時までの保険会社が多く、日中に仕事や育児・家事をされている場合には、保険会社とのやりとりを負担に感じられている被害者も多いでしょう。
この点、示談交渉を弁護士に依頼した場合には、それ以降、連絡窓口は全て弁護士となります。
保険会社から被害者への連絡は全てシャットダウンされ、保険会社からの連絡は全て弁護士が対応することになります。
したがって、被害者は、弁護士から示談交渉の経過の報告を受ければよくなり、保険会社対応の負担をなくすことができます。
このように、弁護士に示談交渉を依頼した場合には、保険会社とのやり取りによる負担を軽減することができます。
なお、示談交渉前からでも弁護士に依頼することは可能です。
適正な後遺障害が認定されているか確認できる
弁護士が示談交渉で依頼を受けた場合、事故全体の記録を確認して弁護士基準で賠償額を計算します。
そうした過程の中で、適切な後遺障害の認定を受けることができているかも確認します。
事案によっては、カルテなどの医療記録を取り寄せて精査し、後遺障害の適切性を判断することもあります。
万一、後遺障害の認定に漏れがあったり、不十分な点があれば、自賠責保険に異議申し立てをするなどして適切な後遺障害認定の獲得に向けて対応することになります。
後遺障害の異議申し立てについては、以下を確認されてください。
適切な過失割合で合意できる
過失割合の交渉はとても大切です。
過失割合が10%違うだけで、賠償額が数十万円、数百万円変わることもあります。
保険会社は、あくまで加害者側の保険会社なので、加害者側の言い分に基づいて、加害者に有利な過失割合を主張してくるため、保険会社の提示する過失割合が妥当な割合であるとは限りません。
しかし、過失割合の判断は、高度な専門知識を必要とするため、それが妥当な過失割合なのかどうかを被害者が判断することは困難です。
過失割合が争いになった場合、弁護士は、刑事記録やドライブレコーダーなどの資料を取り寄せ事故状況の検証を行います。
事案によっては、事故の解析業者に事故状況の解析を依頼するなどして、妥当な過失割合を算定しますので、弁護士に依頼することで妥当な過失割合で合意することが期待できます。
交通事故慰謝料の弁護士基準のQ&A
弁護士に依頼するデメリットはありますか?
慰謝料の計算にあたっては、弁護士基準による算出がもっとも高い金額になるため、原則的にデメリットはありません。
ただし、弁護士に依頼した場合には、弁護士費用がかかります。
仮に、示談交渉を依頼して20万円増額できても弁護士費用が25万円かかってしまうと、結局、被害者の手元に残るお金は弁護士が交渉する前と比べて少なくなってしまいます。
したがって、弁護士に示談交渉を依頼するにあたっては、増額の見込みと、弁護士費用の金額を十分に確認しましょう。
もっとも、弁護士費用特約に加入している場合には、弁護士費用特約で弁護士費用を賄うことができるため、費用倒れの心配はありません。
弁護士費用特約は、契約者だけでなく、契約者の同居している家族なども使用することができるので、事故に遭った場合には、家族が加入していないか確認しましょう。
ただし、法律事務所によっては、弁護士費用特約で全ての弁護士費用を賄うことができない場合もありますので、依頼前に弁護士に確認するようにしましょう。
弁護士費用特約について詳しくは以下をご覧ください。
自賠責基準が弁護士基準の方が高額になることはある?
それは、被害者の過失割合が大きい場合です。
弁護士基準の場合、被害者の過失割合は、賠償額から減額されます。
しかし、自賠責保険基準の場合には、被害者に70%以上の過失割合が無い限りは、過失相殺はされません。
したがって、被害者に過失割合が一定程度ある場合には、自賠責保険基準のほうが賠償額高くなることがあるのです。
以下、具体的な数値を示して説明します。
被害者に過失割合が40%ある場合で以下の条件を前提にして計算します。
具体例 被害者に過失割合が40%ある場合
事故日:2020年11月1日
傷病名:頚椎捻挫(むちうち)
過失割合:40%
通院期間:180日
通院日数:70日
治療費:60万円
(治療費60万円 + 入通院慰謝料89万円) × (100% – 40%) = 89万4000円
弁護士基準の場合、89万4000円が賠償額となります。
入通院慰謝料の金額は、以下の計算式のとおり、60万2000円となります。
140日 × 4300円 = 60万2000円
治療費60万円 + 入通院慰謝料60万2000円 = 120万2000円
自賠責保険の傷害部分の限度額は120万円なので、120万円まで減額されます。
自賠責保険基準の場合、120万円が賠償額となり、弁護士基準よりも高額になります。
このように、被害者に過失割合が一定程度ある場合には、過失相殺がされない自賠責保険の基準で計算した方が有利になる場合があります。
ただし、自賠責保険基準には限度額があり、傷害部分(治療費、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費など)は120万円、後遺障害部分は各等級に応じた限度額があります。
こうした限度額まで踏まえると、結局、弁護士基準法が有利になることもありますので、いずれの請求方法が最も有利になるかは弁護士に相談されてください。
なお、自賠責保険基準では以下の割合で過失相殺されます。
被害者の過失割合 | 減額割合 | |
---|---|---|
後遺障害又は死亡 | 傷害部分 | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
「傷害部分」には、治療費、休業損害、入通院慰謝料、通院交通費などが含まれています。
弁護士基準の慰謝料額よりも慰謝料が高額になることはある?
以下のような事由がある場合には、弁護士基準で算出された慰謝料金額から、増額される可能性があります。
なお、以下の事由以外でも、個別事案の事情によって増額事由となる場合もあります。
【慰謝料増額事由】
- 生死が危ぶまれる状態が継続した場合
- 麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被った場合
- 手術を繰り返した場合
- 幼児を持つ母親であったり、仕事等の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短 縮したと認められる場合
自分で裁判をして弁護士基準で解決できる?
弁護士基準は、裁判をした場合の基準と同じです。
したがって、被害者本人が裁判をすれば、裁判基準での賠償額を得ることができる可能性はあります。
しかし、被害者本人で裁判をすることは大変な労力がかかります。
裁判は平日に行われるため、平日の日中に出頭が必要になりますし、自らの主張を法的な観点から整理して証拠をもって主張立証していかなければなりません。
また、裁判になった場合には、保険会社側には弁護士がついて、事故についてゼロから再検討されることになります。
そうすると、示談交渉段階で保険会社が認めていたことも、一転して争われ、最終的には、示談交渉の段階の保険会社の提示よりも低額の賠償額となる可能性もあります。
こうしたコストとリスクを考えると、被害者本人で裁判をすることは、なかなか難しく、弁護士に依頼することを検討された方がよいと考えられます。
慰謝料以外の損害項目も弁護士基準はある?
例えば、休業損害については、任意保険会社は、1日単価を算出する際、3ヶ月分の給料を90日で割りますが、弁護士基準だと稼働日数(実際に働いた日数)で割って算出します。
したがって、弁護士基準のほうが1日単価が高くなるのです。
また、入院雑費は、自賠責保険基準だと1日1100円ですが、弁護士基準だと1500円です。
このように、弁護士基準は、慰謝料以外の損害項目でも用いられる基準です。
まとめ
弁護士基準と裁判基準は同じ内容でもっとも高い賠償水準です。
保険会社は、最も低い水準の自賠責保険基準で賠償の提示をしてくる可能性もあるので注意が必要です。
弁護士基準の慰謝料を獲得するには弁護士に依頼しなければ難しいです。
弁護士に依頼することのデメリットは、ほぼありませんが、弁護士費用はかかります。
ただし、弁護士費用特約に加入されている場合には、ほとんどのケースで自己負担なく弁護士に依頼することができます(法律事務所により異なる場合もあるので、念の為、依頼時に弁護士に確認しましょう。)。
慰謝料の交渉でお困りの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。
当事務所では、交通事故案件を日常的に取り扱っている人身障害部の弁護士が最初の相談から事件処理まで対応しますので、安心してご相談ください。
また、電話相談、オンライン相談(LINE、Meet、Zoom、FaceTime)も可能であり、全国対応していますので、お住いの場所にかかわらずお気軽にお問い合わください。