交通事故被害者の遺族に年金は給付される?弁護士が解説
今回の交通事故のケースの場合、支給要件、支給対象に該当すれば遺族基礎年金が受け取れます。
遺族基礎年金が受け取れない場合は、死亡一時金が受け取れます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者または被保険者あった者が死亡したとき、その遺族の生活保障をするために支給される給付です。
支払われる遺族の範囲は、以下で述べる支給対象者に該当する者です。
支給要件
支給要件は、国民年金法37条に規定されています。
第37条 遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者又は子に支給する。ただし、第1号又は第2号に該当する場合にあっては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。
1 被保険者が、死亡したとき。
2 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であるものが、死亡したとき。
3 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)が、死亡したとき。
4 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。
支給対象者
死亡した者によって生計を維持されていた、以下の条件に当てはまる方が対象となります(国民年金法37条の2)。
「子」とは以下の①または②をいいます。
- ① 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
- ② 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
「子」については、被保険者の死亡当時に胎児だったとしても、胎児が生きて産まれてくることを条件に、支給対象者に含まれます。
また、上記の子のある配偶者や子については、「故人に生計を維持されていたこと」も要件となります。
年金額(令和2年4月以降)
遺族年金額78万1700円 + 子の加算
第1子および第2子の場合:各22万4900円
第3子以降の場合:各7万5000円
(注)子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は第2子以降について行い、子1人あたりの年金額は、上記による年金額を子供の数で除した金額です。
遺族基礎年金の損益相殺
損害の二重取りはできないという考え方から、遺族基礎年金の受給額と加害者側から回収する損害賠償金との間で調整が図られます。
これを損益相殺といいます。
ただし、遺族基礎年金の損益相殺ができる範囲は、死亡による逸失利益に限定されています(最判H11.10.22)。
死亡一時金
支給要件
死亡一時金は、下記の要件を満たす場合受け取ることができます(国民年金法52条の2)。
- 国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある
国民年金の第1号被保険者とは、以下のような場合に当てはまります。- ① 20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人
- ② 第2号被保険者(民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者)でない者
第3号被保険者(厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満で、年収が130万円未満の配偶者)でない者
- 老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま死亡した
支給対象者
死亡した人と生計を同じくしていた遺族に支給されます。
死亡一時金を受給できる遺族は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の中で優先順位の高い人です。
2位 子
3位 父母
4位 孫
5位 祖父母
6位 兄弟姉妹
遺族基礎年金が支給されるときは、死亡一時金は支給されません。
寡婦年金を受けられる場合は、死亡一時金か寡婦年金のどちらか一方を選択します。
支給される金額
死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
時効
死亡一時金を受け取る権利は、死亡日の翌日から2年で消滅します。
まとめ
交通事故被害者が年金受給者の場合、その配偶者あるいは子ども(18歳到達年度の末日を経過していない子、 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子)は、遺族年金を受給することができます。
また、条件を満たせば、死亡一時金を受給できる場合もあります。
交通事故により突然家族を亡くした場合、経済的にも困窮してしまう可能性があります。
適切な補償をしてもらうためには、弁護士のサポートを受けて保険会社と交渉をすることが大切です。
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