「第三者行為による傷病届」とは何ですか?
第三者行為による傷病届とは、第三者である「他人」の行為によって被害者が受傷したことを健康保険組合などの保険者に届け出る書類です。
交通事故の治療で健康保険を利用する場合に、この書類を保険者に提出しておく必要があります。
ただし、症状固定後の治療の場合には、必ずしもこの書類を提出する必要はありません。
なお、交通事故以外でも、他人の行為によって怪我をして、その治療のために健康保険を利用する場合にはこの書類を提出する必要があります。
第三者行為による傷病届
第三者行為による傷病届とは、第三者である「他人」の行為によって被害者が受傷したとき、保険者が加害者の情報を把握し、後日、加害者に対して、立て替えた治療費を請求しやすくするための書類です。
そのため、交通事故によって、怪我をした被害者が健康保険を使って治療を受けるためには、「第三者行為による傷病届」を保険者へ提出する必要があります。
第三者行為による傷病届を提出するとどうなるか
一括対応
多くの場合には病院と保険会社が直接やり取りをして、保険会社が直接病院に治療費の支払いを行います。
このような保険会社の対応のことを一括対応といいます。
イメージとしては、次のとおりになります。
第三者行為による傷病届の提出
被害者の過失割合が大きいと見込まれる場合には、保険会社は一括対応に応じてくれないことがあります。
そのような場合には、被害者は自身で病院の窓口で治療費を建て替えるということになります。
第三者行為による傷病届を提出して健康保険を利用すると、その支払の負担を1割〜3割にまで減らすことができます。
イメージとしては、次のとおりになります。
交通事故の治療費は、基本的に加害者が過失割合に応じた負担をしなければなりません(図2④)。
健康保険を使用した場合、治療を受けた病院は、保険者に治療費のうち、患者の負担部分以外の費用を請求し、保険者はこの費用を支払います(図3④⑤)。
しかし、この費用は本来であれば加害者が負担すべきものです。
そこで、健康保険組合は、加害者に対して、立て替えた治療費の請求を行います(図3⑥)。
保険者も加害者の住所や氏名、連絡先や事故態様が把握できないと請求を行うことができません。
そのため、交通事故にあった被害者が健康保険を利用する際に、必要な情報を届け出ることとなっており、それが「第三者行為による傷病届」ということになります。
第三者行為による傷病届を出して健康保険を使用するメリット・デメリット
第三者行為による傷病届を出して健康保険を使用するメリット
健康保険を使用することで、治療費を1〜3割に抑えることができます。
したがって、被害者が治療費を立て替えなければならないケース(保険会社が対応しないケース)では、病院窓口での支払いを軽減することができます。
また、過失割合がある場合に、被害者の最終的な負担金額を小さくできます。
例えば、治療費が30万円、過失割合が20%、健康保険の負担割合が3割の場合、健康保険を使用するかどうかで、負担額は下表のとおりかわります。
治療費の金額 | 被害者負担 | 過失割合 | 被害者の最終負担額 | |
---|---|---|---|---|
健康保険使用なし | 30万円 | 30万円 | 20% | 6万円 |
健康保険使用あり | 30万円 | 9万円 | 20% | 1万8000円 |
さらに、自賠責保険の傷害部分(治療費、慰謝料、休業損害など)の上限額は120万円なので、治療費を抑えることで、慰謝料や休業損害の枠を残しておくことができます。
第三者行為による傷病届を出して健康保険を使用するデメリット
健康保険を利用する場合には、健康保険が適用される範囲の治療しか行うことができません。
したがって、健康保険対象外となっている最先端の治療などについては受けることができなくなる可能性があります。
第三者行為による傷病届の届け出に必要な書類
交通事故には過失割合の大小によって、被害者加害者の区別がありますが、この書類上では怪我をした被保険者が「被害者」となります。
1.交通事故、自損事故、第三者(他人)の行為による傷病届
2.負傷原因報告書
2は労災事故ではないことを確認するための書類です。事故の日時、場所、負傷原因などを記入します。労災事故の場合には、健康保険ではなく、労災保険の適用となるため、通勤途中の交通事故でないかどうかをチェックしておく必要があります。
3.交通事故発生状況報告書
道路幅員や進行方向、加害者の進路など交通事故の状況を記入します。
4.念書
保険者が損害賠償請求権を取得することを明らかにする書類です。示談内容について保険者へ伝えることを約束する書類です。
5.損害賠償金納付確約書・念書
加害者が記入する書類です。加害者に記入をお願いしなければなりませんので、保険会社を通じてやりとりを行う必要があります。弁護士にご依頼いただければ、こうした保険会社とのやりとりも被害者にかわって、行います。
6.同意書
保険者は、加害者に対して損害賠償請求する際、被害者の個人情報を扱うため、被害者が個人情報を扱われることについて同意する書類です。これは、保険会社に治療費を負担してもらう場合にも必要になります。
7.交通事故証明書
交通事故証明書に物件事故と記載されている場合、「人身事故証明書入手不能理由書」を添付します。自動車安全運転センターで取得します。
以上の書類を保険者である健康保険組合へ提出します。
交通事故のケースによっては、健康保険や国民健康保険を使用した方が被害者の方にとって良い場合もあります。