交通事故の損害賠償、葬儀関係費用には仏壇代や墓石代は含まれる?
葬儀関係費用には仏壇・仏具の購入代金や墓石の建立、墓地の購入費用が含まれます。
葬儀関係費用を請求する際、支出を証明する領収書が必要となります。
裁判基準(弁護士基準)では原則150万円までとされ、この金額よりも下回る場合には実費が損害として賠償されます。
葬儀関係費用は損害賠償の対象となるのか
過去に、人は必ず死亡するのだから葬儀関係費用は損害とならないという考え方もありました。
しかし、現在葬儀関係費用は交通事故の賠償すべき損害として認められています。
葬儀関係費用を請求できる人
葬儀関係費用を請求できるのは、実際に葬儀関係費を支出した人です。
葬儀関係費を支出した人は、相続人に限りません。
葬儀関係費用の範囲
葬儀関係費用
葬儀関係費用に含まれるものは、葬儀代金そのものだけではなく、火葬料、埋葬料、祭壇代、読経代、法名代、お布施等謝礼、花代、通信費、葬儀広告代などです。
49日までの法要代も葬儀費用として認められています。
葬儀関係費用は、社会通念上認められる限度において賠償請求が認められます。
仏壇や墓碑代について
仏壇や墓碑は亡くなった被害者のためだけではなく残された遺族も使うものです。
しかし、判例では、葬儀関係費用と区別する理由はないとして社会通念上認められる限度において賠償請求が認められています(最判S44.2.28)。
また、仏壇購入費用や墓碑建立費を葬儀関係費用とは別途の費用として損害賠償請求を認めた事例もあります(横浜地判H26.4.25ほか)。
香典返しについて
香典は損益相殺の対象になりません。
しかし、香典返しについては損害として認められていません。
遺体運搬費用について
遺体運搬費用は、葬儀関係費用とは別途費用として請求が認められています(東京地判H26.12.18他)
さらに、事故により頭部が潰れた被害者について、遺体処置の費用を認めた事例もあります(京都地判H28.11.29)。
葬儀関係費用の基準
自賠基準での葬儀関係費用
自賠基準では、葬儀関係費用は上限100万円まで認められています。
裁判基準(弁護士基準)での葬儀関係費用
葬儀関係費用は、被害者の職業や社会的地位、年齢、家族構成によって変動することがあり、公平を図ることから観点から150万円という基準が設定されています。
150万円という基準があっても、実際にかかった費用は領収書等の資料を用いて証明します。
また裁判例では150万円を超えた葬儀関係費用を認めた事例や実際の支出が150万円を超えても150万円までの請求しか認めなかった事例、実際の支出額が150万円以下だった場合支出額を請求として認めた事例があります。
判例 150万円を超える葬儀関係費用を認めた裁判例
- ① 被害者が21歳、支出額が合計251万6660円である事案で、通常では想定し得えない年齢で突然死亡したことを考慮して、200万円の葬儀関係費用を認めました。
【埼玉地川越支部判H27.12.18】
- ② 単身赴任中の被害者の葬儀が単身赴任先で執り行われ、同費用として67万0998円を要し、同葬儀に被害者の勤務先関係者が参列することができなかったことから被害者の地元でも再度葬儀が執り行われ、同費用として113万9755円を要し、仏壇及び仏具代として89万3160円を要した事案で、200万円の葬儀関係費用を認めました。
【大阪地判H28.10.26】
- ③ 被害者の葬儀関係費用として388万6842円を支出したほか、それに伴う飲食代としても113万8430円を支出している事案で、被害者が長年にわたって園芸店を営み、その顧客をはじめとして多くの人々に慕われていたため、参列者が300人を超える規模の大きな葬儀が執り行われたことなどを考慮して、250万円の葬儀費用を認めました。
【横浜地判R1.9.26】
そのほかにも以下のような事例があります。
- 170万円を認めた事例(神戸地判H28.10.27)
- 200万円を認めた事例(さいたま地判H26.8.8)
- 葬儀費用として200万円、墓代及び埋葬料として150万円を認めた事例(横浜地判H26.11.6)
- 250万円を認めた事例(さいたま地判H24.1.31)
葬儀費用について、ご質問がありましたら、お気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。