頚椎損傷とは|最新版
頚椎損傷(けいついそんしょう)とは、首の骨を骨折してしまうことです。
交通事故や労災事故などで、外部から首に強い力が加わることで頚椎を損傷してしまう危険性があります。
損傷が頚椎の中にある頸髄まで及んでいる場合には、手足や体に麻痺が残ってしまう可能性があります。
このページでは、頚椎損傷の概要、後遺障害、賠償金の額などについて解説していますので、参考にされてください。
頚椎損傷とは
頚椎損傷(けいついそんしょう)とは、首に外から力が加わることによって首の骨を骨折してしまうことをいいます。
頚椎は、7つの骨で構成されていて、背骨の一部で頭を支えている大事な骨です。
これらの骨を骨折することで、痛みなどの神経症状の後遺症や骨が変形する後遺症が残ってしまう可能性があります。
また、頚椎の中にある頸髄にまで傷が及んでしまうと体が麻痺する後遺症が残る可能性があります。
頚椎損傷と頸髄損傷の違い
頚髄損傷(けいずいそんしょう)とは、外力によって背骨である頚椎(首の骨)の中にある頚髄が損傷することで発症する傷病です。
頚椎を骨折すると頚椎損傷といい、頚椎の中にある頸髄にまで傷がついた場合には頸髄損傷というのです。
頸髄は、首の部分の脊髄(せきずい)です。
人が体を動かそうとするときには、脳の指示が脊髄から神経に伝わって動かすことができます。
脊髄に傷がついてしまうと、脳からの指示がうまく伝わらず、体が思うように動かすことができなくなります。
ですから、頸髄にまで傷が及んだ場合には、手や足、体に麻痺が起こり重度の後遺症が残ってしまう可能性があるのです。
頚椎損傷のレベルとは?
一般の方で、「頚椎損傷」のレベルと言われることもありますが、正確には「頸髄損傷」のレベルであるため、ここでは頸髄損傷のレベルについて説明します。
頸髄損傷のレベルとは、頸髄損傷の程度を表すもので、損傷した頸髄の部位によって表されています。
例えば、第3頸髄を損傷して完全麻痺となった場合には、C3完全というように表記します。
頚椎損傷したらどうなる?
頚椎損傷の症状
頚椎を損傷した場合の、主な症状は首の痛みです。
また、首の痛みによって、首が動かしづらくなります(可動域制限)。
ダメージが頸髄にまで達している場合には、手足のしびれや、手足の麻痺が起こることがあります。
頚椎損傷の日常生活への影響
頚椎骨折の程度が軽く首が不安定性が軽微な場合には、カラー固定(首を固定するために装着する器材で固定)して、安静にすることとなります。
首が固定され、しかも安静にして置かなければならないため、仕事や家事を休まなければならない可能性があります。
仕事や家事ができたとしても作業効率は格段に落ちてしますでしょう。
また、首の不安定性が強い場合には、手術で固定してリハビリが必要になる場合もあります。
こうした場合には、入院も必要となり、さらに日常生活に支障がでることとなります。
頚椎損傷は治る?
頚椎損傷した場合には、カラー固定や手術など適切な治療をして骨折部分がきれいにくっつけば、痛みなども残らず治る可能性があります。
しかし、頚椎損傷にとどまらず、頸髄損傷に至っている場合には、麻痺が残る可能性が高いです。
一度傷ついた脊髄を治す方法は、現在では確立されていません。
したがって、頸髄損傷した場合には、後遺症が残る可能性が高いといえます。
頚椎損傷の原因
頚椎損傷は、首に対して外部から強い力が加わることで発生します。
こうした状況は、交通事故や労災事故のなかでよくみられます。
例えば、バイクで事故を起こした際に転倒して首を強く打ち付ける交通事故に遭った場合や、現場作業中に高所から転落して首を地面に打ち付けた場合などが考えられます。
頚椎損傷の後遺障害認定の特徴と注意点
頚椎を損傷した場合の後遺障害としては、痛みなどが残る神経障害や、頚椎の骨が変形する変形障害、首が動かしづらくなる機能障害が考えられます。
頚椎損傷による神経障害
神経障害の後遺障害等級としては、14級9号と12級13号があります。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号の場合、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すれば認定されます。
具体的には、首の痛みが残っていることについて、医学的に証明できた場合に認定されます。
医学的に証明するには、レントゲン、CT、MRIなどの画像から、骨や骨の状態に異常があることを示さなければなりません。
14級9号の場合、「局部に神経症状を残すもの」に該当すれば認定されます。
12級13号では、痛みの存在を医学的に「証明」する必要がありますが、14級9号の場合には、痛みの存在を医学的に「説明」することができれば認定されます。
もっとも、14級9号も単に痛みが残っていればよいというわけではなく、簡単には認定されません。
医学的に説明できるかどうかは、総合考慮して判断されます。
例えば、事故の規模・態様、症状の一貫性・連続性、通院期間・頻度、治療の内容、神経学的検査の結果、画像所見の有無などを踏まえて判断されています。
変形障害
頚椎を損傷することで骨が変形してしまった場合には、以下の後遺障害に認定される可能性があります。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
変形障害の後遺障害の認定基準については、以下のページに詳しく記載していますので、こちらをご覧ください。
機能障害
頚椎損傷により骨や骨の状態に異常な部分が残ってしまい、首が動かしづらくなる場合があります。
こうした障害を機能障害(運動障害)といいます。
頚椎損傷による機能障害の後遺障害等級は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
脊椎の機能障害の認定基準は、以下のページに詳しく記載していますので、こちらをご覧ください。
頸髄損傷の後遺障害
頚椎損傷にとどまらず、頸髄を損傷した場合には、体に麻痺が残り重度の後遺障害が残ってしまう可能性があります。
頸髄損傷の場合に認定の可能性のある等級は、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号があります。
頸髄損傷の後遺障害について詳しく確認されたい場合には、以下のページをご覧ください。
頚椎損傷でしびれがあると後遺症が残る?
頚椎損傷により、首の神経を圧迫するようなことがあれば、手などにしびれが出ることがあります。
治療によって改善すれば問題はないですが、改善しない場合には、後遺障害に認定される可能性があります。
こうした場合には、神経障害の等級である12級13号、あるいは、14級9号に認定される可能性があります。
頚椎損傷の慰謝料などの賠償金
頚椎損傷による主な賠償項目としては、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などがあります。
これらの賠償の算定方法は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)がありますが、以下では、最も高額で適切な弁護士基準を前提に解説します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、ケガの治療のために、入院や通院をしたことに対する慰謝料です。
入院した期間、通院した期間によって金額が算定されます。
例えば、通院のみの場合には下表の金額になります。
※頚椎を骨折している前提の金額です。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
3ヶ月 | 73万円 |
4ヶ月 | 90万円 |
5ヶ月 | 105万円 |
6ヶ月 | 116万円 |
7ヶ月 | 124万円 |
8ヶ月 | 132万円 |
9ヶ月 | 139万円 |
10ヶ月 | 145万円 |
入院した場合など詳しく入通院慰謝料を算定されたい場合には、以下のページの賠償金計算シミュレーターをご活用ください。
頚椎損傷の後遺障害慰謝料
頚椎損傷により後遺障害等級に認定された場合には、その等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。
具体的な金額は下表のとおりです。
等級 | 後遺障害慰謝料額 |
---|---|
6級5号 | 1180万円 |
8級相当、8級2号 | 830万円 |
11級7号 | 420万円 |
12級13号 | 290万円 |
14級9号 | 110万円 |
逸失利益
逸失利益は、頚椎損傷による後遺障害によって働きづらくなり収入が減ってしまうことに対する補償です。
逸失利益は以下の計算方法で算出します。
逸失利益の概算を計算されたい場合には、以下のページの交通事故賠償金シミュレーターをご活用ください。
また、逸失利益の詳しい考え方については、以下のページをご覧ください。
逸失利益とは?弁護士がわかりやすく解説【計算機付】
頚椎損傷で死亡したら賠償金はどうなる?
頚椎損傷にとどまらず、頸髄損傷に至った場合には、亡くなってしまう可能性があります。
こうした場合には、以下の賠償金を請求できる可能性があります。
※ケースによって請求できない項目もあります。
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 傷害慰謝料
- 治療費、入院費
- 付添看護費用
- 付添人交通費
- 葬儀費用など
以下のページでは、死亡慰謝料や計算が複雑な死亡逸失利益の概算を卦算できるシミュレーターがありますので、ぜひご活用ください。
頚椎損傷で適切な賠償金を得る4つのポイント
MRI検査を早めに受ける
頚椎を損傷した場合には、首の骨だけでなく、椎間板(骨と骨の間にあるクッションの役割をする組織)や、頸髄にも損傷が及んでいる可能性があります。
したがって、医師と相談の上で、事故後、速やかにMRI検査をして首の状態を確認されることをおすすめします。
適切な治療を受ける
交通事故や労災事故で頚椎損傷した場合には、医師の指示に従って、適切に治療を受けましょう。
骨折した骨のくっつき具合などを踏まえて、必要に応じてリハビリを行うことが大切です。
きちんと定期的に通院することで、入通院慰謝料も適切な金額を受け取ることができるようになります。
後遺障害を適切に認定してもらう
後遺障害に認定された場合には、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができるため、認定されなかったときと比べて賠償金に数百万円から数千万円の差がでることがあります。
実際の症状に応じて適切な後遺障害の認定を受けることは適切な賠償金を受け取るためにとても大切なことです。
適切な賠償金の金額を算定する
交通事故の賠償金の算定には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)がありますが、最も高額な弁護士基準が適切な基準です。
相手保険会社は、自賠責保険基準や任意保険基準で算定して賠償の提示をしてくるため、その提示を鵜呑みにしてはいけません。
専門の弁護士に内容をみてもらって、弁護士基準とどの程度の差額があるか確認してもらいましょう。
まとめ
頚椎損傷は、首の骨が骨折してしまうことで、神経障害、変形障害、機能障害の後遺障害を残してしまうことがあります。
頚椎損傷にとどまらず、頸髄も損傷した場合には重篤な後遺症が残ってしまうかもしれません。
頚椎損傷や頸髄損傷で後遺障害に認定された場合には、逸失利益の計算などが必要となり賠償額の算定も複雑で高額になります。
こうした賠償の計算や保険会社との交渉に少しでも不安がある場合には、専門の弁護士に相談して、賠償の見通しなどについて相談することをおすすめします。
弊所では、交通事故事件を日常的に取り扱う弁護士が相談から事件処理まで対応しています。
ご相談については、面談での相談はもちろんのこと、オンライン相談(LINE、ZOOM、フェイスタイムなど)もお受けしており、全国対応していますので、お気軽にお問い合わせください。