飲酒運転の事故で保険金は支払われる?弁護士が解説

執筆者:弁護士 北御門晋作 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

飲酒運転で事故を起こしても、通常被害者には保険金が支払われます。

しかし、加害者自身の死亡・ケガや自動車などの損害に対しては、通常保険金は支払われません。

交通事故のとき、保険金が支払われるか否かは被害者はもちろん、加害者にも重大な影響を及ぼします。

この記事では、飲酒運転の事故において保険金が支払われるケース・支払われないケースについて、交通事故に注力する弁護士が解説しています。

交通事故の保険金でお困りの方はぜひ参考になさってください。

対人・対物賠償責任保険での飲酒運転の扱い

加害者・被害者への補償の画像

被害者への補償

加害車両の運転手が飲酒していた場合でも被害者への保険金の支払いはあります。

被害者にとっては、加害車両の運転者が飲酒運転をしていても、損害が発生していることには変わりありません。

そのような場合に、相手方の保険会社が保険金を支払わないと、被害者は泣き寝入りとなってしまいかねません。

被害者の泣き寝入りを防ぐために、被害者救済の観点から、加害車両の運転者が飲酒運転によって起こした事故の損害へ対して、対人・対物賠償責任保険から保険金は支払われます。

 

加害者への補償

飲酒運転をしていた加害者への補償はありません。

加害車両の運転者については、保険会社からの補償がなかったとしても、飲酒運転をしてしまったがための自業自得といえます。

そのため、加害車両の運転者の死傷による損害へは人身傷害保険からの保険金支払いや、加害車両の車両保険の保険金支払いはありません。

 

 

事故の発生原因による免責

事故の写真

故意免責

保険契約者、被保険者などが故意に起こした事故の損害に対しては、任意自動車保険の支払いはありません。これを故意免責といいます。

人身傷害保険や無保険車傷害保険では故意と重過失も免責とされます。

故意が免責となることは、自賠責保険・共済とも共通しています。

しかし、自賠責保険・共済での故意は「明白な故意(害意、わざと)」(自賠法14条)とされているのに対して、任意自動車保険の対人賠償責任保険の「故意」は、未必の故意は免責にならないなどに限定されています。

 

異常免責

  • 「戦争や外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、その他これに類似の事変、暴動」
  • 「地震もしくは噴火、またはこれらによる津波」
  • 「核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性、その他有害な特性またはこれら特性に起因する事故」
  • 「これら以外の放射能の照射または放射能の汚染による事故」

による損害は免責となります。

またこれらの事由に随伴して発生した事故、秩序の混乱によって発生した事故も免責となります。

自損事故傷害保険や搭乗者傷害保険では、上記に加え、台風、洪水、高波等の自然災害も免責となります。

 

競技、曲芸、試験

自動車を使用した曲芸やレース、試験などの事故による損害も対人賠償責任保険の支払いの対象外です。

 

積載危険物

契約対象となる自動車に業務として危険物を積載したことに発生した損害も免責となります。

 

保険契約上の義務違反による免責

保険契約時の告知・通告義務違反、保険契約後の被保険自動車の用途車種・登録番号の変更などの通知しない義務違反、事故発生時の義務違反(事故時通知義務、損害の拡大防止義務、書類提出の義務など)があった場合は、免責とされています。

なお、重大な義務違反は任意自動車保険の解除事由となります。

 

 

保険契約の合意による免責

運転者限定特約や年齢条件特約を付帯したときで、事故車の運転手や年齢に条件違反があった場合は免責となります。

 

運転者限定特約

運転者限定特約とは、被保険自動車を運転する人を限定する特約です。

運転者限定特約には、本人・配偶者限定特約、本人限定特約などがあります。

 

年齢条件特約

年齢条件特約とは、被保険自動車を運転する人の年齢に条件をつける特約です。

この特約は、被保険自動車を運転する人のうちで一番若い人を基準に設定されます。

 

 

対人・対物賠償責任保険での被害者関との関係に基づく免責

記名被保険者、被保険車両の運転者とその父母・配偶者・子、記名被保険者の父母・配偶者・子、記名被保険者の業務に従事している使用人の死傷、物への損害は記名被保険者の契約している対人・対物賠償責任保険から支払われません。

 

 

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