道路管理者の義務とは?道路凍結で事故が起きた場合管理者に責任はある?
路面凍結の責任を全く問えないことはありませんが、裁判例では積雪等の自然凍結による事故の場合、道路管理者に責任がないとする傾向にあります。
道路管理者とは
道路は、国道、県道、市町村道、高速道路などの違いによって、その管理者が異なります。
国道の場合 | 国土交通省または都道府県、政令指定都市 |
県道の場合 | 都道府県、政令指定都市 |
市町村道の場合 | 市町村、高速道路の場合高速道路会社 |
道路管理者の責任
道路状況が原因で事故が起こった場合、道路管理者の責任を追求するためには、道路管理の過失が必要となります。
この道路管理の過失とは、道路が本来有してなければならない安全性が確保されていないことをいいます。
安全性の確保の判断は、対象道路の重要性、構造、地理的条件、事故時の気象、事故車運転手の道路の利用方法などから判断をしていきます。
また、裁判所は道路が凍結していることだけでは、道路管理の過失があるとは考えておらず、凍結していることについて過失があることも要求しているようです。
路面凍結で道路管理者の責任を認めた裁判例
この裁判例では、鳥取県と岡山県の県境近くの国道における路面凍結によるスリップ事故について、以下の事情をもとに、鳥取県の道路管理者責任を認めました。
- 「道路はスリップ事故が生じやすく、県には危険防止措置をとる義務があった」
- 「岡山県は凍結防止剤を3回散布し道路の実地確認もした」が、「鳥取側では凍結防止剤を前日に散布してから、道路状況の確認も行わずに放置していた」
- 「天気予報では路面が凍結する恐れがあり、鳥取県は道路状況を確認し、追加の凍結防止剤を散布する必要性があった」
この裁判例では、以下の事情をもとに、道路の維持管理が不十分であったとして、道路管理者の責任を肯定しました。
- 道路には、融雪装置が設置されており、その装置の放水に起因して道路が凍結していたこと
- 装置の放水の実施時期・方法などについては道路管理者の委託業者が行っており、道路管理者がそれについて容易に把握できたこと
- 装置の放水による凍結防止の措置を全く講じていなかったこと
また、高速道路は、国の重要幹線道路であり、通行車両も多く、しかも高速で通行するのであるから、通行車両の安全については、高度のものが要求され、それに見合った対応がなされたとはいえないとして、道路管理者の責任を認めた裁判例も存在します(大阪高判S50.10.23)。
この他にも以下の事案で道路管理者を肯定する裁判例が存在します。
路面凍結で道路管理者の責任を否定した裁判例
この裁判例は、現場での凍結防止剤の散布が遅れ、道路の入路閉鎖をしなかったことを事故の原因としつつ、以下の事情を示して道路管理者の責任を否定しました。
- 「事故の前に多数の自動車がスリップ事故を起こすことなく現場付近を走行していること」
- 「全線凍結注意などの表示、速度規制なども実施していた」
- 「乗用車が速度規制を見落としていること」
- 「凍結防止剤の散布は現場付近より凍結の恐れの高い場所から順次行っていたこと」から「事故はドライバーの過失が原因である可能性が否定出来ない」
この裁判例は、大型貨物自動車がスリップしてガードレールや道路脇の小屋に衝突した事案について、以下の理由で道路管理者の責任を否定しました。
- 融雪のために道路に散水していた事情はあるものの、散水は合理的であり、道路の排水能力も十分であったこと
- 事故現場付近では、重点的に凍結防止剤を散布し、スリップしやすいとの注意喚起をする電光表示板があったなど種々の対策を講じていたこと
- ロードヒーティングは施工されていなかったものの、ロードヒーティングを設置するほどの危険性が道路にあったとは認められないこと
- 運転は事故当時の状況に応じ、運転者として要求される運転態度でなかったこと