交通事故で歯が折れたら後遺障害に該当する?【弁護士解説】
交通事故で歯が折れた場合、後遺障害に該当する可能性があります。
具体的には3歯破損した場合には、14級2号に該当します。
さらに破損の歯が多い場合には、破損の歯数に応じて13級以上の等級に該当することもあります。
歯牙の障害
事故により、顔面を打ちつけ歯を欠損してしまうこともあります。歯牙の障害は、下表のとおりです。
10級4号 | 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
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11級4号 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
12級3号 | 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
13級5号 | 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
14級2号 | 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
喪失した歯と義歯の歯数が異なる場合には、喪失した歯を基準に考えます。
ここでいうところの「歯」は、永久歯のことで乳歯の喪失は基本的に後遺障害の対象とはなりません。
また、第三大臼歯(親知らずの歯)も対象とはなりませんし、事故前からすでに補綴している歯や重い虫歯(C4)に関しては、すでに喪失している歯として扱われ対象外とされることがあります。
「歯科補綴を加えたもの」とありますが、要は事故によって実際に喪失した歯の本数で考えます。完全に1歯を喪失した場合はもちろんですが、歯の大部分(4分の3以上)喪失した場合も対象に含まれることになります。
歯の後遺障害の申請にあたっては、専用の後遺障害診断書がありますので注意しなくてはいけません。
歯科用の後遺障害診断書については以下ページよりダウンロードいただけます。
その他の口の障害
咀嚼(そしゃく)及び言語の機能障害
咀嚼及び言語機能の障害は、事故により咀嚼をつかさどる筋肉が損傷したり、顎関節の障害が残った場合などに残存することがある障害です。
最も重い場合は、「咀嚼及び言語の機能を廃したもの」として、1級2号に該当します。
流動食以外を摂取できなくなった場合に、咀嚼の機能を廃したと評価され、また、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)の内、3種類以上の発音が不能の場合に、言語の機能を廃したと評価されます。
障害の残存の程度によって、下表のとおり等級が決まっています。
1級2号 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの |
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3級2号 | 咀嚼または言語の機能を廃したもの |
4級2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
6級2号 | 咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの |
9級6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
10級3号 | 咀嚼または言語の機能に障害を残すもの |
「咀嚼機能に著しい障害を残すもの」とは、粥食(おかゆ)又はこれに準ずる程度の食べ物や飲み物以外は摂取できない状態です。
また、「固形食物の中に咀嚼できないものがある」場合の例としては、たくあん、ピーナッツなどの一定の固さの食物の咀嚼が十分にできないものがある場合が挙げられます。
「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、2種が発音不能になった状態、又は、綴音機能に障害があり、言語のみでは意思を疎通させることができない状態です。
「咀嚼機能に障害を残すもの」とは、固形食物の中に咀嚼できないものがあること又は咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合です。
ここでの医学的に確認できる場合とは、不正咬合、咀嚼関与筋郡の異常、あご関節の傷害、開口障害、歯牙損傷など、咀嚼ができない、あるいは十分にできないことの原因が医学的に確認できることが必要となります。
「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音不能のものです。
味覚が減退、脱失
頭部外傷やあご周辺組織の損傷により、味覚を感じなくなったり、感じづらくなることがあります。
味覚の有無についての検査は、濾紙(ろし)ディスク法という検査によりますが、この検査で、甘味、塩味、酸味、苦味のすべてが認知できない場合には、味覚脱失として12級相当が認定されます。
これらの味質の内、一つの味が認知できない場合には、味覚減退として14級相当の認定がされます。
口の障害と歯の障害が両方ある場合
歯の障害が原因での言語障害、咀嚼障害がある場合
この場合には、歯の損傷による障害等級と言語障害、咀嚼障害のいずれか高い等級での認定を受けることになります。
具体例 歯が5本欠けて、それが原因で咀嚼機能に障害を残した場合
歯が5本欠けていることは、13級5号に該当します。
咀嚼機能に障害を残していることは、10級3号に該当します。
そのため、これらの障害のうち高い等級である10級での後遺障害認定がされます。
歯の障害が原因でない言語障害、咀嚼障害がある場合
この場合には、歯の障害と言語障害、咀嚼障害の併合認定となり、等級が繰り上がる場合があります。
具体例 歯が5本欠けて、歯の欠損に関係なく、咀嚼機能に障害を残した場合
歯が5本欠けていることは、13級5号に該当します。
咀嚼機能に障害を残していることは、10級3号に該当します。
そして、これらの障害のうち高い等級である10級が1つ繰り上がって、9級での後遺障害認定がされます。
なお、障害等級の併合による繰上げについては、以下の通りとなります。
14級の後遺障害が並存 | 14級のまま |
13級以上の等級の後遺障害が並存 | 等級が高い方の後遺障害を1級繰上げ |
8級以上の等級の後遺障害が並存 | 等級が高い方の後遺障害を2級繰上げ |
5級以上の等級の後遺障害が並存 | 等級が高い方の後遺障害を3級繰上げ |
また、複数の後遺障害が認められるときでも、重い方の等級でその他の後遺障害が評価されていると認められる場合には、等級の繰上げは行われません。くわしくは、お近くの弁護士にご相談ください。
醜状の後遺障害
歯が折れているような場合には、外貌醜状による後遺障害も生じている場合があります。
口の後遺障害の逸失利益
後遺障害に該当する場合には、障害が残存していることで労働能力を全部ないし一部喪失したと考えられるため、その分の賠償金を請求することができます。
この賠償を後遺障害逸失利益といいます。
もっとも、口のみに後遺書障害が残っている場合には、体や脳に支障が出ていないため、後遺障害逸失利益の賠償が制限されることがあります。
もちろん職業や障害の重さによっては、労働能力を喪失したといえるため、個別具体的な事案において、慎重に検討し相手方保険会社と交渉すべきです。