交通事故で顔に痣が残りました。後遺障害に該当しますか?
痣の大きさによって7級から12級に該当する可能性があります。
醜状障害の認定基準
顔面や頭部、体に痣などが残った場合の後遺障害は下表のとおりです。
過去には、女性と男性で差が設けられていましたが、男女平等にすべきという考えから、男女同じ基準になっています。
一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
後遺障害の対象となるには、人目につく程度以上の醜状であることが必要となります。
したがって、眉毛や頭髪等に隠れている部分に関しては醜状とは取り扱われません。
2個以上の瘢痕又は線状痕が隣接していたり、複数の醜状痕が相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合には、それぞれの面積や長さを合算して等級の認定がなされます。
後遺障害の申請をするタイミングは、傷が癒着してから約6ヶ月後、縫合している場合には抜糸をしてから約6ヶ月後です。
症状固定後も傷跡は徐々に収縮して傷が目立たなくなることもありますから、症状固定後は、速やかに後遺障害申請すべきでしょう。
外貌醜状について、後遺障害の申請がなされると、基本的には自賠責の調査事務所(後遺障害の認定をする機関)に被害者の方が直接行って傷の状況を確認します。
実際に調査員が傷痕について定規を当てるなどして、傷の大きさの測定を行います。
後遺障害の認定は、原則書面審査で行われますが、外貌醜状の場合は例外的に直接傷痕を確認して審査されます。
外貌醜状により後遺障害9級が認められた事例はこちらをご覧ください。
外貌醜状の後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、事故に遭い後遺障害が残存したことで働きづらくなり、収入が減ってしまうことに対する補償です。
外貌醜状の後遺障害については、醜状痕が残ったとしても、それ自体で体が動かしづらくなるわけでもなく、判断能力や記憶力が減退するわけでもありません。
したがって、外貌醜状の場合、後遺障害逸失利益の算定にあたって、労働能力喪失の程度や喪失期間が制限される場合があります。
現在の裁判実務では、被害者の醜状障害の程度、被害者の性別、年齢、職業を踏まえて、将来の就職、昇進、転職にどの程度影響が出るのか、また、生活上の不利益や対人関係の阻害の程度などを総合的に判断して、労働能力の喪失の程度を個別事案ごとに判断しています。
傾向としては、人前に出て勤務する営業職や接客業などは、労働能力の喪失が認められる傾向にあります。
営業職や接客業でなくても、将来において不利益を被る可能性や昇進、転職への悪影響などが考えられる場合には、具体的な事情を主張して後遺障害逸失利益を認めてもらえるよう主張すべきです。
後遺症の逸失利益の計算方法についてはこちらをご覧ください。
慰謝料の増額
前記したように、醜状障害によって労働能力の喪失が認められず、後遺障害逸失利益が否定される場合であっても、後遺障害慰謝料を増額する裁判例もあります。
直接的に労働能力は喪失は認定されないものの、傷痕が残っていることは事実であり、それが相当期間にわたり残存する見込みであるなら、後遺傷害慰謝料を増額すべきであると考えるのです。