交通事故で顔に傷等の被害|慰謝料の相場や注意点を解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士


交通事故で顔に傷や瘢痕などが残った場合、傷などの程度に応じて、後遺障害等級の認定を受けることができます。

後遺障害等級認定を受けることができれば、治療費などのほかに、

  • 後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償金)
  • 逸失利益(後遺障害のために本来得られたはずの収入を失ったことに対する賠償金)

を請求することができます。

ただ、顔に傷などが残った場合の逸失利益については、「顔に傷があるからといって、身体の動きが制限されるわけではなく、働くことに支障はない」として、逸失利益の額について争いになることが多いです。

十分な補償を得るためには、交通事故問題に詳しい弁護士に相談し、対応を依頼することをお勧めします。

今回の記事では、交通事故で顔に傷が残った場合の慰謝料額の相場、逸失利益に関する問題、ほかに請求できる損害賠償の内容、交通事故で顔に傷が残った場合に注意すべきポイントなどについて解説していきます。

加えて、この記事では、当事務所の取扱い事例で、顔に傷が残った方が後遺障害等級認定を受け、約1600万円の賠償金を得ることができたケースについてもご紹介しております。

興味のある方は、ぜひご一読ください。

交通事故で顔に傷が残った場合の慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の相場

交通事故で顔に傷が残った場合、その大きさや部位、程度によっては、後遺障害等級認定を受けることができます。

後遺障害等級認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに相場が決まっています。

そこで、まずは、顔に傷が残った場合の後遺障害等級についてご説明します。

 

顔の傷についての後遺障害等級

顔に傷が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級には、以下のものがあります。

7級12号
外貌に著しい醜状を残すもの
  • 頭部に手のひら大以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  • 顔面部では、鶏卵大以上の瘢痕又は10円玉大以上の組織陥没
  • 首では、手のひら大以上の瘢痕
9級16号
外貌に相当程度の醜状を残すもの
顔面部に長さ5cm以上の線状痕
12級14号
外貌に醜状を残すもの
  • 頭部では、鶏卵大以上の瘢痕、頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
  • 顔面部では、10円玉大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線状痕
  • 首では、鶏卵大以上の瘢痕

このように、顔に傷が残った場合、後遺障害7級、9級又は12級に認定される可能性があります。

ただし、後遺障害の対象となるには、人目につく程度以上の醜状であることが必要となります。

したがって、眉毛や頭髪等に隠れている部分に関しては、後遺障害となる「醜状」とは取り扱われません。

なお、2個以上の瘢痕又は線状痕が隣接していたり、複数の醜状痕が相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合には、それぞれの面積や長さを合算して等級の認定がなされます。

 

後遺障害慰謝料の算定基準

後遺障害慰謝料の算定基準には、

  • 弁護士が示談交渉の際に用いる弁護士基準(裁判所でも用いられているもの)
  • 任意保険の保険会社各社が内部で定める支払い基準である任意保険基準
  • 自賠責からの支払い額を算定する際に用いる自賠責基準

の3種類があります。

後遺障害慰謝料の額は、弁護士基準で算定したものが最も高額になり、次が任意保険基準、最も低いのが自賠責基準の算定額となっております。

弁護士基準の詳細は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(日弁連交通事故相談センター東京支部編)(通称「赤い本」)に掲載されています。

自賠責基準は、自動車損害賠償保障法施行令で定められています。

参考:自動車損害賠償保障法施行令 | e-Gov 法令検索

一方、任意保険基準の内容は公表されておらず、詳細が明らかになっていません。

そのため、以下の解説では、弁護士基準と自賠責基準の算定金額をご紹介していきます。

 

顔に傷が残った場合の後遺障害慰謝料

交通事故で顔に傷が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級(7級、9級又は12級)についての後遺障害慰謝料の相場は、次のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 弁護士基準
7級 419万円 1000万円
9級 249万円 690万円
12級 94万円 290万円

この表を見ても分かるとおり、自賠責基準と弁護士基準では、後遺障害慰謝料に2~3倍の違いがあります。(なお、任意保険基準の場合、自賠責保険よりも少し高額になる程度のことがほとんどです。)

弁護士基準での後遺症障害慰謝料を獲得するためには、弁護士に示談交渉を依頼する又は裁判を起こすことが必要になります。

なお、上の表の慰謝料額は、弁護士基準については絶対的なものではなく、事案によって増減することがあります。

後遺障害慰謝料についての詳しい解説、他の等級での後遺障害慰謝料の額、後遺障害慰謝料が増減するケースなどについては、以下のページもご参照ください。

 

入通院慰謝料の相場

交通事故で顔に傷を負うなどして入通院した場合、入通院慰謝料(傷害慰謝料)も請求することができます。

入通院慰謝料は、後遺障害が残った場合だけでなく、後遺障害が残らなかった場合でも請求できます。

つまり、顔の傷について後遺障害等級認定を受けることができなかった場合でも、入通院慰謝料は請求することができるのです。

入通院慰謝料も、どの算定基準を用いて算定するかによって金額が異なってきます。

まず、弁護士基準での算定額は、次のようになります。

  • 通院1か月の場合:重傷の場合28万円、軽傷の場合19万円
  • 通院2か月の場合:重傷の場合52万円、軽傷の場合36万円
  • 通院3か月の場合:重傷の場合73万円、軽傷の場合53万円
  • 入院1か月、通院1か月の場合:重傷の場合77万円、軽傷の場合52万円
  • 入院2か月、通院3か月の場合:重傷の場合154万円、軽傷の場合109万円
    *軽傷とは、他覚所見のないむちうち症や軽い打撲、挫創などのことをいう。重傷とは、軽傷以外の場合をいう。

一方、自賠責基準では、入通院慰謝料は、

日額4300円 × 対象日数

で計算します。

上の計算式の「対象日数」は、①実際に通院した日数を2倍にした日数と②通院期間の日数のいずれか少ない方とされます。

入通院慰謝料算定表、入通院慰謝料の算定方法の詳細などについては、以下のページをご参照ください。

 

 

顔の傷で認められるのは慰謝料だけではない

交通事故で顔に傷がついた場合に認められるのは、慰謝料だけではありません。

次のような費目も、損害賠償として請求することができます。

  • 逸失利益
  • 休業損害
  • 治療費など

それぞれの費目について説明します。

 

逸失利益

逸失利益は、交通事故でケガをして後遺障害が残った(又は死亡した)場合に、そのことがなければ得られたはずの収入のことをいいます。

後遺障害による逸失利益(後遺障害逸失利益)は、原則的には、認定された後遺障害等級に応じた労働能力喪失率を用いて、以下の計算式で計算します。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

顔に傷が残ったことによって認められる可能性がある後遺障害等級の労働能力喪失率は、以下のようになっています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
7級 56%
9級 35%
12級 14%

基礎収入は、会社員の場合、事故前年の年収となります。

労働能力喪失期間は、原則として、症状固定から64歳になるまでの期間になります。

ライプニッツ係数は、赤い本にある早見表などを見て求めます。

会社員以外の方の基礎収入、労働能力喪失期間などに関する説明、他の等級での労働能力喪失率、ライプニッツ係数の早見表などをご覧になりたい方は、以下のページをご覧ください。

 

顔の傷についての逸失利益は争いになりやすい

逸失利益は、一般的には、上でご紹介したように計算します。

ところが、顔に傷跡が残った場合については、上のように計算して請求すると、加害者側の保険会社から労働能力喪失率や労働能力喪失期間について争われるケースが多いです。

顔に傷跡が残るなどの外貌醜状の後遺障害では、それ自体で体が動かしづらくなるわけでもなく、判断能力や記憶力が減退するわけでもありません。

また、傷は、後遺障害に認定された後も薄くなっていく可能性があります。

そうしたことがあり、保険会社は、外貌醜状の場合、逸失利益の算定にあたって、労働能力喪失の程度や喪失期間が制限される、と主張してくるのです。

現在の裁判実務でも、外貌醜状が残ったケースについては、被害者の醜状障害の程度、被害者の性別、年齢、職業を踏まえて、将来の就職、昇進、転職にどの程度影響が出るのか、また、生活上の不利益や対人関係の阻害の程度などを総合的に判断して、労働能力の喪失の程度を個別事案ごとに判断しています。

傾向としては、人前に出て勤務する営業職や接客業などは、労働能力の喪失が認められる傾向にあります。

一方、こうした職種でない場合には、顔に傷が残っても労働能力に影響はない、として、労働能力の喪失が認められにくい場合もあります。

しかし、営業職や接客業でなくても、将来において不利益を被る可能性や昇進、転職への悪影響などが考えられますので、逸失利益は積極的に請求すべきです。

もし、労働能力喪失について争いになった場合には、

  • 仕事に影響が出ている状況
  • 将来の就職、昇進、転職への影響
  • 生活上で生じている不利益や対人関係で支障が出ている状況
  • 性別、年齢などを背景とした影響

などについて具体的な事情を主張して逸失利益を認めてもらえるよう主張していきましょう。

 

逸失利益が認められない場合は慰謝料の増額を主張する

逸失利益が十分に認められない場合でも、後遺障害慰謝料を増額させることができる可能性があります。

直接的に労働能力が喪失したことは認定されないものの、傷痕が残っていることは事実であり、それが相当期間にわたり残存する見込みであるなら、後遺傷害慰謝料を増額すべきである、と考え得るのです。

実際に、そのような判断を下した裁判例もあります。

顔に傷が残ったことによる逸失利益が十分に認められない可能性がある場合でも、諦めず、慰謝料の増額を請求していきましょう。

 

休業損害

休業損害は、交通事故によるケガの治療・療養のために仕事を休まざるを得なくなったことによる減収のことを指します。

交通事故で顔にケガをした場合も、治療や手術、リハビリのために仕事を休むことが必要になって収入が減少した場合は、休業損害を請求することができます。

有給休暇を使用した場合は、実際には減収が生じていなくても、休業損害を請求することができます。

休業損害は、「日額 × 休業日数」で計算します。

「日額」は、各算定基準によって、以下のように異なります。

  • 自賠責基準 1日6100円(ただし、実際の収入が1日6100円を超えることを証明できれば、1日1万9000円を上限に実際の損害が認められることがある)
  • 任意保険基準 事故前直近3か月の給与の総額を「90日」で割る
  • 弁護士基準の場合 事故前直近3か月の給与の総額を「稼働日数」で割る

上記の基準に従って休業損害を算定すると、多くの場合、弁護士基準による算定額がもっとも高額になります。

ただし、実際の収入が1日6100円未満の場合は自賠責基準での算定額が最も有利になります。

なお、休業損害は、治療をしてもそれ以上症状の改善が見込めなくなった(症状固定した)時点までのものが対象となります。

症状固定後に生じる減収は、逸失利益に含められます。

休業損害に関する詳しい説明は、以下のページをご覧ください。

 

治療費など

交通事故で負った顔の傷の治療に要した治療費(診療費、検査費用、手術代、薬品代など)は、加害者に損害賠償として請求することができます。

ほかにも、入院雑費、通院交通費などの積極損害(交通事故にあったことによって必要となった出費)を損害賠償として請求することができます。

積極損害については、以下のページもご参照ください。

 

交通事故の自動計算機で賠償金を簡単に計算!

当事務所では、後遺障害慰謝料、入通院慰謝料、休業損害、逸失利益の相場を手軽にご覧いただける交通事故賠償金計算シミュレーターをご用意しております。

このシミュレーターに、事故時のご年齢、性別、年収、入通院期間、休業日数、後遺障害等級、過失割合などをご入力いただくと、慰謝料等の相場を自動で計算することができます。

計算結果はその場ですぐにご覧いただくことができ、当事務所から別途ご連絡することはございません。

ご利用に際して、お名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報をご入力いただく必要もございません。

ご関心がおありの方は、以下のリンクから、どうぞお気軽にご利用ください。

ただし、顔の傷に関する後遺障害慰謝料、逸失利益については、相場より増額・減額されることが多くなっております。そのため、以下のシミュレーターでの計算結果は、ご参考程度のものとお考え下さい。

 

 

顔の傷に対する慰謝料・賠償金の事例

当事務所の取扱い事例にも、顔の傷に対する慰謝料・賠償金の請求をサポートした事例があります。

得られた賠償金の内訳は、以下のとおりです。

傷害慰謝料 90万円
逸失利益 1150万円(労働能力喪失率29%)
後遺障害慰謝料 690万円(弁護士基準)
過失相殺 15%(△約300万円)
合計額 1645万円

(*損害費目の内訳の中で、雑費や看護料などの一部の費目は省略しています。)

以下では、こちらの事例について簡単にご紹介します。(なお、事件の特定ができないように、事件の内容を編集しております。)

 

事案の概要

この事例では、被害者(女性)は、横断歩道のない道路を横断しようとした際に自動車に右側から衝突され、緊急搬送されました。

この事故で、被害者は、頭蓋底骨折、右脛骨遠位端骨折、前額部挫創の重傷を負い、3週間ほどの入院が必要となりました。

退院後も、被害者は治療やリハビリを継続しましたが、前額部に挫創痕が、右下腿内側には痛みがそれぞれ残ってしまいました。

治療の目途がついたころ、加害者側の保険会社から示談案が提示されたのを機に、被害者のご両親が当事務所に相談に来られました。

 

弁護士の対応

お話を聞いた弁護士は、まずは右足の痛みと前額部の傷跡について後遺障害等級認定を受けるべきであると考え、ご両親に説明した上で、後遺障害診断書などを準備し、申請を行いました。

その結果、外貌醜状(前額部の傷跡)については9級16号に、右下腿内側の疼痛については14級9号に認定されました。

この結果を受けて、弁護士は、加害者側の保険会社と示談交渉を行いました。

すると、加害者側の保険会社は、逸失利益について争ってきました。

被害者がまだ若いこと、傷自体も薄くなっていることなどを理由に、労働能力喪失率は14%にとどまると主張してきたのです。(後遺障害等級9級の場合、原則的には労働能力喪失率は35%です。)

しかし、被害者は女性で、前額部という人目に付きやすい箇所に傷を負っていましたし、将来的に薄くなる可能性があるとしても現に傷跡が残っていました。

こうした事情などを考えると、保険会社が出してきた案は、到底納得することはできないものでした。

弁護士は、こうしたことを主張して粘り強く交渉し、最終的に、労働能力喪失率を29%として合意することができました。

このケースについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

 

 

交通事故で顔に傷が残った場合の注意点

交通事故で顔に傷が残った場合の注意点

事故後すぐ病院を受診する

交通事故で顔に傷がついた、顔を打ったなどということがあった場合は、小さなケガだと思われる場合でも、事故後数日以内には病院を受診し、診察をしてもらいましょう。

「たいした傷ではないから」と受診をせずにいると、その後傷跡が残ってしまった場合に、「傷の原因が事故であること」を立証することが難しくなります。

そうなると、「事故後病院を受診するまでの間に他の原因でケガをしたのではないか」と因果関係を争われ、示談交渉が難航したり、受け取れる賠償金が減額されたりしてしまいます。

 

治療費打切りの打診をされてもあきらめない

交通事故によるケガの治療が長引いてくると、加害者側の保険会社から、「そろそろ治療費の支払いを打ち切りたい」と打診されることがあります。

しかし、治療の終了は、保険会社が決めることではありません。

こうした打診を受けたからといって治療を止めてしまうと、傷が十分に治らなくなったり、後遺障害等級認定を受ける際に支障が生じたりしてしまいます。

治療費打ち切りを打診された場合は、主治医と治療を続けるかどうか相談する、弁護士に保険会社との交渉を依頼するなどの対応をとっていきましょう。

 

後遺障害等級認定を受ける

顔に傷が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることを検討しましょう。

後遺障害12級14号の認定基準(顔面部では、10円玉大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線状痕。)以上の傷跡などが残っている場合には、後遺障害等級認定を受けることができる可能性があります。

後遺障害等級認定を受けることによって、後遺障害慰謝料、逸失利益についても補償を受けることができるようになります。

申請は、加害者側の保険会社に任せてしまうのではなく、被害者自ら資料などを用意して行う被害者請求をすることをお勧めします。

その方が、被害者に有利な資料を揃え、より有利な等級認定を得られる可能性が高くなるからです。

被害者請求については、以下のページをご覧ください。

 

後遺障害等級認定のポイント①~後遺障害診断書を準備する

後遺障害等級認定の際には、主治医に記載してもらった後遺障害診断書が重要になります。

顔に傷跡が残った場合には、後遺障害診断書の「醜状障害」について記載する欄に、傷跡の大きさなどを記載してもらう必要があります。

後遺障害診断書を作成してもらう際には、あらかじめ医師と記載内容について相談し、十分な内容の診断書ができるように働きかけることが必要な場合もあります。

医師とどのように話したらよいかについては、ケースバイケースですので、交通事故にくわしい弁護士に相談してみましょう。

 

後遺障害等級認定のポイント②~面接審査がある

原則的には後遺障害等級認定の審査は書面のみで行われるのですが、醜状障害については、面接審査が実施されることがあります。

面接審査は、審査機関(自賠責調査事務所)で行われます。

審査では、傷跡に実際に定規を当てて大きさを測定するなどの調査が行われますので、心づもりをしておく必要があります。

 

保険会社の提案額が適正か弁護士に見てもらう

示談交渉では、まず、加害者側の保険会社から示談案が提示されることが多いです。

交通事故での示談交渉の経験がない方は、「保険会社は同種の事案をたくさん扱っているのだから、この示談案も相場に従ったものなのだろう」と思ってしまいがちです。

しかし、上でもご説明したとおり、保険会社は、弁護士基準よりも算定額が低くなる任意保険基準に沿って保険金額を算定し、示談案を作成しています。

そのため、示談案で示されている金額は、被害者に最も有利な弁護士基準によって算定した額の半額以下となっていることも、実際にあります。

保険会社から提案された示談金額は、そのまま鵜呑みにしてしまわず、一度弁護士に見てもらい、適正な額になっているかを確認してもらいましょう。

 

交通事故に強い弁護士に相談する

交通事故で顔などに傷を負った場合は、なるべく早く弁護士に相談し、示談交渉を依頼することをお勧めします。

弁護士に依頼をすることには、次のようなメリットがあります。

  • 損害賠償額の相場についてアドバイスしてもらえる
  • 被害者に最も有利な弁護士基準で算定した賠償額を基本に交渉できるため、賠償金が増額する可能性が高い
  • 後遺障害等級認定申請もサポートしてもらえる
  • 後遺障害慰謝料、逸失利益について、資料を揃えて適切な主張をしてくれる
  • 過失割合についても適切なものになるよう交渉してもらえる
  • 保険会社とのやり取りを任せることができる
  • わからないこと、不安なことがあるとき、気軽に相談できる

交通事故に強い弁護士に相談、依頼するメリット、交通事故に強い弁護士を選ぶ際のポイントについては、以下のページで詳しく解説しています。

 

 

交通事故で顔面に後遺症がある方のよくあるQ&A

交通事故で顔がぐちゃぐちゃになったらいくら請求できる?

交通事故で顔に「ぐちゃぐちゃになった」というほど大きな傷・変形が残ったという場合、「外貌に著しい醜状を残すもの」として、後遺障害7級12号に認定されると考えられます。

後遺障害7級12号に認定された場合に請求できる金額としては、まず、後遺障害慰謝料1000万円(弁護士基準)があります。

この慰謝料は、傷の程度や位置、被害者の性別や年齢、逸失利益がどれだけ認められたかなどの事情により増額されることがあります。

また、顔がぐちゃぐちゃになったことによって口が上手く動かせなくなり、食べ物を上手く噛めない、話がしにくいなどの後遺症が残った場合には、以下のそしゃく又は言語の機能に関する後遺障害も認定される可能性があります。(カッコ内は、弁護士基準の場合の後遺障害慰謝料の額です。)

  • 1級2号「そしゃく及び言語機能を廃したもの」(後遺障害慰謝料2800万円)
  • 3級2号「そしゃく又は言語の機能を廃したもの」(後遺障害慰謝料1990万円)
  • 4級2号「そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの」(後遺障害慰謝料1670万円)
  • 6級2号「そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの」(後遺障害慰謝料1180万円)
  • 9級6号「そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの」(後遺障害慰謝料690万円)
  • 10級3号「そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの」(後遺障害慰謝料550万円)

外貌醜状による後遺障害とそしゃく又は言語に関する後遺障害の両方が認定された場合、併合が行われ、一番重い等級の繰り上げが行われます。

併合に関する詳細は、以下のページをご覧ください。

損害賠償の費目としては、慰謝料のほかにも、

  • 逸失利益
  • 入通院慰謝料
  • 休業損害
  • 治療費、入院雑費、通院交通費などの積極損害

を請求することができます。

これらの金額は、ケースによってさまざまです。

 

交通事故で顔が変形したらいくら請求できる?

交通事故で顔が変形した場合、傷の状態にもよりますが、変形部分が10円玉以上の大きさであれば、「10円玉大以上の組織陥没」となり、後遺障害7級12号に認定される可能性があります。

後遺障害7級の後遺障害慰謝料(弁護士基準)は1000万円ですが、傷の程度や位置、被害者の性別・年齢、逸失利益の有無・金額などの事情により増額されることもあります。

顔が変形したことによって物を嚙みにくくなった、話をしにくくなったという場合には、前項の場合と同様に、そしゃく・言語機能に関する後遺障害が認定される可能性もあります。

2つ以上の後遺障害が認定された場合は、併合により一番重い等級が繰り上げられる場合があります。

他にも、逸失利益、入通院慰謝料、休業損害、治療費、入院雑費などを請求することができますが、これらの費目の金額は、ケースによって様々です。

 

交通事故で顔面の神経が麻痺したらいくら請求できる?

交通事故で顔面の神経が麻痺した場合、神経症状として、後遺障害12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)や14級9号(局部に神経症状を残すもの)に該当する可能性があります。

また、顔面の神経が麻痺したことによって口元がゆがむなどしてしまった場合には、「外貌に醜状を残すもの」として、後遺障害12級14号に認定される可能性もあります。

後遺障害12級の障害が2つ認められた場合には、併合が行われ、後遺障害併合11級に繰り上げられます。

これらの等級での後遺障害慰謝料は、後遺障害(併合)11級の場合は420万円、後遺障害12級の場合には290万円、14級の場合には110万円となっています(弁護士基準の場合)。

この慰謝料の金額は、傷の程度や位置、被害者の性別・年齢、逸失利益の有無・金額などの事情により増額されることがあります。

他にも、逸失利益、入通院慰謝料、休業損害、治療費、入院雑費などを請求することができますが、これらの費目の金額は、ケースによって様々です。

 

交通事故による顔の傷が小さい場合はどうなる?

交通事故による顔の傷は、後遺障害等級12級の認定基準である「10円玉大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線状痕」よりも小さいと、後遺障害と認定されません。

この場合、後遺障害慰謝料や逸失利益は、原則として受け取ることができません。

しかし、顔に傷跡が残ったことを理由として、傷害慰謝料(入通院慰謝料)を増額できる可能性はあります。

顔の傷が小さく後遺障害認定を受けられない場合の対応については、以下のページもご参照ください。

 

 

まとめ

今回は、交通事故で顔に傷が残った場合の慰謝料や逸失利益、事故後の対応のポイントなどについて解説しました。

交通事故で顔に傷が残った場合、後遺障害等級認定を受け、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があります。

ただ、顔に傷については、逸失利益で争いになることが多くなっています。

顔の傷のために社会生活に差し障りが出ていること、将来の就職、転職に支障が生じる可能性があることを十分に主張するためには、交通事故にくわしい弁護士に対応を依頼することが大切になります。

また、後遺障害等級認定を受けることができず、代わりに入通院慰謝料(傷害慰謝料)の増額を求める場合も、弁護士に顔に傷が残ったことによる精神的苦痛について十分に主張してもらうことが重要です。

交通事故で顔に傷が残ってしまった場合には、早いうちに交通事故にくわしい弁護士に相談し、対応を依頼するようにしましょう。

当事務所でも、交通事故対応を集中的に担当する交通事故チームを設け、交通事故で顔に傷を負った方からのご相談に対応しております。

電話・オンラインによる全国からのご相談も可能です。

お困りの方はぜひ一度、お気軽に当事務所までご相談ください。

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